番外編◆第3話 ハッピーエンド?
ハァ、ハァ……誰だよゴリラはおとなしい動物だって言ってた奴! とっても危険じゃまいか。
しかし、これからどうしたものか……
とりあえず川でも下ってみるか? 海に出れば人里もあるんじゃなかろうか。
うぉっ! はえ~! ワニはぇええ! 思わず成型炸薬弾ブチ込んじまったよ。
あれだな、川辺を歩くのは危険だな。レーダー点けとくか。
うむむ、全部旗が白いな……モンスターと違って人間に敵愾心がないからか?
近づいたら赤くなる。このレーダーあんま役に立たなくね?
しかし、所々に無数の白い旗が立ってるな。これは昆虫かな?
うぉっ! ハチヤァアア! ヒィイイ! いてっ、やめっ、
『モデルチェンジ・ハナビ!』
おっ、この蚊取り線香、蚊以外にも利くのか? 蜂が逃げていく。助かったゼ……
白い旗の塊には近寄らないようにしないとな。
とりあえずポーションで傷を癒すオレ。
ちなみに成型炸薬弾の消費量は10でした。効果の割には思ったほど多くは無いな。アレかな? 意外と構造は簡単だからだろうか。
そうこうしているうちに夜になっていく。
しかし、フォルテが、
「兄ちゃん、コレ持ってけよ。トラブルに巻き込まれやすいんだから」
って持たせてくれた冒険者セットのおかげで、こんなジャングルでもどうにか暮らしていけてる。
なんとか向こうの世界と連絡がとれないものだろうか……
そういや自由の女神ってグレード選択だったよな。つ~ことはモデルチェンジで……
『条件を満たしていませんので選択できません』
ってメッセージが出やがる。
なんだよ条件? 教えてくれよ? 不親切にも程があるだろぉ!?
はぁ……まあ、あの女神に期待するのが間違いってモノか。
オレは手に持っている銃をじっくり見やる。
今はこれが唯一、あの世界へと戻れる希望か。
レベル上げたら自由の女神を選択できるようになるかもな。その時にシュマお嬢様達の所へ戻れるよう希望するしかないか。
オレは銃を構える。
しかし、最初の方はこの世界に戻りたいと願っていたものだが、たった数年でしっかり向こうに根付いちまったな。
まあ、戻ってきた場所が日本ならまだどう思っていたか分からないが。
あんま元の世界に戻ってきた気もしないしなあ……ジャングルだしナァ……
それにしても問題は、どうやったらレベルが上がるのかだ。
むやみやたらに動物を撃ち殺す訳にもいくまいし。
モンスターと違って害獣じゃない。そうそう駆除する訳にはいかない。
それに、モンスター以外で経験値が溜まるかどうかも微妙である。
とりあえず、赤い旗立ってる奴らを重点的にやっていくかぁ、などと思っていたのでバチが当たったのか、数ヶ月後、オレの周りには赤い旗だらけになっているのであった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
それは数ヶ月ほどジャングルを彷徨っていた時のことだった。
つ~か、ジャングル、どうなってんだよ? 川の流れに沿って下ってるはずなのに一向に海に辿り着かない。
なんかぐるっと同じとこ回ってね? これ海に繋がってるよね? 繋がってないのぉ? しょっちゅう分岐しているし。
で、栄光の旗を起動しレーダーを付けて移動していたのだが、そのレーダーに黒い旗が映った。
黒ってなんだろってその場所に行くと、なんとっ、文明の利器が! 動物を狩るための罠が仕掛けられていたのだった。
なるほど、黒は罠がある場所を示していたのか。
よしっ、ここで待ってれば誰か人が来るに違いあるめえ。
と、喜び勇んで待っていたのだが。
確かに人は来たよ? しかし、出会い頭に弓矢が飛んできましたが。
レーダー、真っ赤ですよ? えっ、オレ敵認定されてるの? なじぇえ?
一生懸命無害アピールをしましたが伝わっていない模様。
そんでなんか縄でグルグル巻きにされたかと思ったら集落らしき場所へ連れてかれる。
ただその集落、なんかボロボロで一部崩壊していたりする。
そしてあちこちに人骨らしきものが転がっていて……えっ、何! 人食い人種がなにかなのぉ!?
広場にある一本の柱に括り付けられるオレ。そのまま原住民のお方達はジャングルに戻っていく。
どういうことなんだ?
しかしこれはチャンスでは?
とりあえずチャッカマンで縄を焼き切るか。
むむ……なかなか……この縄、つ~か蔦、水分を多分に含んでいるようでなかなか焼き切れない。
と、どこからともなく獣の遠吠えが。
するとだ、出てきましたよ、タイガー。十匹近い群れで。
これはあれか、この集落、この虎さん達にやられたのか。
さっきの人達は逃げ延びた人達で……もしかしてオレ、生贄にされてる?
ちょっ、これは不味い! このぐらいなら異世界で戦闘を繰り返したオレの敵ではない。
しかし、今のオレは身動きできない縄グルグルマン。
反撃する間もなく食われちまうッス。
オレは大声で助けを求める。
くそっ、せめて意味が伝われば……縄さえ解いて貰えればこの集落の奪還も出来るのに。
ゆっくりとオレに近づいてくるタイガーさん。
その瞬間! 黒い塊が一匹のタイガーを吹っ飛ばした。
そこに居たのは……ゴリラ! あの時のゴリラじゃねえか!
おめえ……
うぉっ、サル、お前も来てくれたのか!?
サルがオレの縄をガジガジ齧っている。
ありがてぇ! お前らはオレの心の友だよ! もう人間なんてどうでもええ!
サルッ、もっと横だ、そうだ、そこだ!
オレを拘束していた縄が緩む。
よくやった! 後はオレに任せろ!
オレはハンドガンに変えて拘束されている縄を撃ち抜く。
オレの目の前ではゴリラが多数のタイガーに食いつかれている。
ゴリラッ! そいつらを振りほどくんだ! そうすればオレがっ!
えっ、自分に構わず逃げろだって……おめぇ……
ゴリラの目が、自分はもうダメだ、お前だけは逃げてくれって語っている。あんたはぁ漢やぁ……ゴリラじゃなければ惚れていたゼ。
『赤外線スコープ・ON!』
しかし! お前を置いていけるはずがねぇ! 大丈夫だ、そんな傷、オレのポーションがある!
ゴリラに食いついているタイガーの眉間を狙う。
いけるはずだ。今のオレは異世界についたばかりのオレではない。たとえ針の穴を通すことになろうとも、やってみせる!
『装填・ホローポイント!』
オレの銃弾が一匹のタイガーの頭を吹っ飛ばす。
それからは蹂躙戦だ。弱ったゴリラを放置し集団でオレの方へ向かってくるタイガー達。
だが、それくらいは経験済みだ。
軽くかわしながら次々を仕留めていく。
そのうち逃げ出そうとする奴もいるが、人肉の味をしめた奴らを逃がすわけにはいかない。
奴らの動きなど、異世界のモンスターに比べれば赤子も同然。
全てのタイガーを仕留めるのに5分も要らなかった。
「ゴリラッ!」
オレは倒れているゴリラに駆け寄る。
すまねえ、オレの為に。何? オレの為に死ねるなら本望だって? おめぇ……
大丈夫だ、オレにはまだこれがある。
オレはエリクサーが入っていた瓶につめていたポーションをゴリラの口に突っ込む。
みるみるうちに塞がっているゴリラの傷。
ゴリラはそれを不思議そうに見つめている。
「ウホッ、ウホッ!」
ゴリラがオレを抱きしめてくる。
「ウキッ、ウキッ!」
サルが手を差し出してくる。
仕方ないなあ、オレはバナナを大量に出して手渡す。
「ウキキキーー!」
サルはバナナを食いながら嬉しそうに飛び跳ねている。
ほんとシュマお嬢様に似て……いやいやいや。
ゴリラもバナナを食いながらオレから手を離さない。
いい奴だなゴリラ……オレもうゴリラ(オス)でもイイカモ……
と、その時! オレの体から光の柱が立ち昇った。
◇◆◇◆◇◆◇◆
ふう、あのままあそこにいたらどうなってたことか。ゴリラにプロポーズしてたかも?
シュマお嬢様が抱きついて来た瞬間、ほんとに、ほんと~に、とても愛しく思えてしまって……思わずプロポーズしてしまった。
『装填・劣化ウラン弾!』
シュマお嬢様がモンスターの眉間を2体まとめて貫く。
射線まで計算しておられる。
「どうセイジ、私、セイジが居なくなってからずっと頑張ってましたのよ!」
「うん、凄いよ、とっても凄い、ゴリラ」
おっと、ゴリラの事を考えてたからついシュマお嬢様とゴリラを言い間違って―――その瞬間、まるで空気が凍ったような感触がした。
シュマお嬢様が時間が止まったかのように硬直しておられる。
「あんちゃん……いくらなんでもそれは無いんじゃね? 確かに最近のお嬢様、ゴリラみたいな活躍だったけどさぁ」
「おいおい、それは思っていても言っちゃダメだろ」
フォルテとラルズさんのお言葉を聞いて、サッと青くなるシュマお嬢様のお顔。
「さすが勇者様、言いえて妙ってやつですねっ! 私も何かに似てるなぁとは思ってたんですよっ」
「ちょっ、ちょっと姉さん! いくらなんでもそれはゴリラに失礼・じゃなかった、シュマ様に失礼だよ」
さらに追い討ちをかけるライラックとドスナラ。
お嬢様がプルプル震えて……あっ、泣き出した。
ちっ、違うんですよお嬢様! 別にお嬢様がゴリラに見えた訳ではなくてですね―――オレはひたすら弁解するのであった。
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