番外編◆第4話 シュマ様がやって来た。

「ごぶさた、しております」

『お嬢様、そこは「はじめまして」です』

「あう、あう、は、はじしめて、です」


 微妙に違います。


「あ、あんた……さんざん人に心配掛けておきながら……」

「よ、嫁だと……!?」

「嘘だぁ、あのモテない、にいちゃんに嫁さんなんて」


 オレは今、シュマお嬢様を連れて『実家』に戻ってきている。

 そう自由の女神砲をつかって元の世界に戻ってきたのだ。

 えっ、自由の女神砲使って大丈夫なのかって?

 大丈夫。事前にやって欲しい事を紙に書いて飾っといたから。

 勿論、本人の登場はご勘弁くださいと書くことも忘れない。


 尚、女神さんからの返信があり「それ全然自由じゃないじゃない」と書かれていたが、華麗にスルーした。


 代わりに自由の女神砲の発動条件をプリーズって書いとくと、なんでも、A級ダンジョン以上を踏破すれば使用可能になるそうな。

 なのでA級ダンジョンを一つクリアしてみたところ、


 セレクトC:神器の特殊能力を解放する


 ってメニューが増えてた。

 これハンドガン以外にもなんか解放できる能力があんのかな?

 まあ、とりあえずハンドガンの能力解放を選択したところ、自由の女神:召喚回数1と表示された。

 やっぱり召喚なんかアレ。


 尚、レプリカであるオレのハンドガンにも同様の表示がされたので、1回の攻略で2回使えることになるらしい。

 もっとも、消費ポイントが1000とか。ちょいと消費がでかすぎやせんですかねえ。

 それでもお嬢様がご両親に挨拶がしたいっていうんで、なんとか1000ポイントまで溜めた。

 行くだけでなくて戻ることも考えとかないとダメだしな。


 あと、指定は細かく、場所、時間、持ち物、など詳細に紙に書き込んでおく。

 なんせ自由の女神砲、超取り扱い注意の危険物だからな。

 他にも色々出来そうな気もするが、それがどういった結果に繋がるか恐ろしくて試せない。


「それじゃなんか? 人攫いに会って、外国に連れてかれて、このお嬢さんに助けられたと」


 とりあえずそういうことにした。大体あってるしな。


「ほえ~、でもなんていうか、いくらなんでも、にいちゃんには不釣合いなんじゃね?」


 失礼だな妹よ。あと人様を指差しちゃダメだぞ。


「ああ、まあ、警察の方には失踪届けを取り下げておくか」

「ほぉ……うちの息子がこんなかわいいお嫁さんを見つけてくるなんて」

「ああ、まあ、とりあえず、めでたい……のか?」


 ご両親はまるで狐につままれたような顔をしている。


『ねえ、セイジ。私なんか間違った?』

『お嬢様、オレ、通訳』

『ダメよ。国際結婚てのはね、ちゃんと相手の文化に合わせないと成功しないの。言葉なんてその第一歩よ!』

『うす』


 シュマお嬢様は握りこぶしを胸に掲げて決意の表情でござる。


「わたし、言葉、覚えます。どうか、よろくし、です」

「いやいやほんと、こちらこそよろしくお願いします」

「誠志にはもったいない、良くできた子じゃないか」


 ゆっくりとだが、お嬢様はオレの両親と会話を弾ませている。

 かあちゃん、あんまオレの駄目だったとこ並べないで下さい。

 長くなりそうなので、とりあえず自分の部屋に向かったのだが、


「………………」

「いっや~、帰ってくるなんて思ってなかったから~」


 オレの荷物はぁ!?

 辺り一面、アイドルのポスターやら、ぬいぐるみやら、妹に部屋を乗っ取られていた。


「なんで? お前、自分の部屋あるじゃん?」

「こっちの方が広そうだったから」


 おんなじだろ!? いやまて、


「………………」


 元、妹の部屋は物置と化していた。妹が趣味で集めたグッズの。


「おま、いくらなんでも薄情すぎね?」

「ち、ちがうんだよにいちゃん。ほ、ほら、にいちゃんが失踪して、そのままにしとくとほら、面影がちらついて寂しくてさ」


 ほんとうか? ほんとうなのか? おい、ちょっとこっち向けや。


「そ、そんなことより、にいちゃんと嫁さんの寝るとこ確保しなくちゃな。ほら、ちゃっちゃと片付けようぜ」


 お前、そんなこと言いながら、この物置状態の部屋を片付けさせようとしているな?

 いっそのこと焼夷弾で全部燃やすぞ、おら。

 まあどっちにしろ……これ片付けないと寝床がねえな……


◇◆◇◆◇◆◇◆


「へぇ、ほぉ、あの子がねえ……」

「はい、セイジ、とても、かっこいい」


 ちょいちょいと父親が手招きしている。

 オレは父親に部屋の外に連れ出され、


「おい、お前、……どうやってだまくらかした?」


 なんてことを言ってくる。


「なんでだよ?」

「いやな、どう聞いてもな、お前じゃねえだろ、彼女が言ってる人物」


 どんなこと言ってるのでしょうか?

 なんでも、ピンチの時には必ず訪れるヒーローのような語り草らしい。

 いや、オレだって頑張ったのよ?

 水鉄砲とかバナナとか駆使して。


「どんな頑張りやねん」


 おっしゃる事は最もですが。


「まあまあとおちゃん、女の子には『あばたもえくぼ』っていう時代もあるのよ」


 妹がしたり顔でウンウンと頷いている。

 お前らひどくね? ほんとに頑張ったのよ?


「お前、捨てられないように……頑張れよ?」

「そうだよにいちゃん、どう考えても、猫に小判どころの騒ぎじゃないんだから」


 いやまあ確かに……シュマお嬢様、一国の王子様クラスに求愛されるほどの見た目。

 なにより性格もとってもよろしくて、守ってあげたくなるキャラナンバーワンである。

 あれ? 良く考えたらオレと釣り合いとれてないっての、当たってんじゃ……


「どうしよう、どうやったら捨てられないかな?」


 オレは妹に救いの目を向ける。


「仕方のないにいちゃんだね。よし! うちにまかせときなさい!」


 その後、一騒動起こるのはまた後日のお話である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

めがたま。 ぬこぬっくぬこ @nukonukkunuko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ