番外編◆第2話 対ゴリラ戦

 ――グゥゥー


 オレのお腹の音がなる。さんざんゴリラさんと追いかけっこした所為か眩暈までする。

 昨日から水しか口にしてねえです。

 しかもその水、濁ってた所為か……お腹壊しました。


 地面にグッタリと横たわりながら辺りを見回す。


 ああ、あの草食えねえかなあ。

 ああ、なんかキノコ生えてんなあ。すげ~カラフルなんだが食っても大丈夫かなあ……

 ああ、お空においしそうな鳥が飛んでんなあ……このハンドガンの投擲で仕留め……まあ、無理か。逆に鳥に襲われそうだ。


 朦朧とした意識の中、ずるずるとキノコの元に這い寄る。


 ――ゴクッ


 食えるか? 食ってみるか? ええい、ママよ。おっ、意外といけ……


「うげげっげぇええ! おぼぉぼぼぉーー!」


 やばい! なんか舌がピリピリしてきた。これアカンやつや!

 オレは最後の体力を振り絞って地面をのた打ち回る。

 ああ、シュマお嬢様……先立つ不孝をお許しください。

 お空に泣き顔のシュマお嬢様が浮かぶ。


 いやっ、まだだ! まだ死ねん! オレはお嬢様にサヨナラの一言も伝えてはいない! このままでは死んでも死に切れない!


 そうだ! バナナだ! バナナに変えたとき黒い粒が……あれってきっとバナナの種に違いない! その種を植えれば……

 よしっ、オレはここでバナナ農園を育てるぞ!

 色々テンパッテおります。はい。


『モデルチェンジ・バナナ!』


 よしっ、コレを植え……って、ん、幻覚か? なんか普通のバナナのように見える。

 そういやキノコ食って幻覚とかよくある話だよな。

 もう幻覚でもいいや、これ食おう。種ならきっと栄養満点じゃね?


 オレはバナナの皮をむいて口に頬張る。おおっ、うんめえぇええ!

 幻覚万歳! 味覚すら変わってるや! さすがキノコ!

 えっ、ゴリラさんも要る? どうぞどうぞ。全然足りない? そりゃそうでしょう。ほらじゃんじゃん出しまっせ。


 ――えっ、ゴリラ!


 オレはガバリと上半身を起こす。

 お隣ではゴリラさんが器用にバナナの皮を剥いてござる。


「ウホッ、ウホッ!」


 バナナを食って随分ゴキゲンそうだ。

 えっ、まだ要る? 仕方ないなあ。


「ウキッ、ウキキ!」


 さるぅ……お前……昨日のサルが空の弁当箱を差し出してくる。

 えっ、お前もバナナが居る? いい度胸してんなお前。

 しゃ~ない。ほら。


「ウキキキーー!」


 サルはバナナを食いながら嬉しそうに飛び跳ねている。

 なんかシュマお嬢様に似て……いやいやいや。


 つってなんでバナナ!?


 これ幻覚じゃないのぉ!

 ウドンにしてみる。おおおぅ、うどんやぁぁあ。うんめえやぁぁあ。

 えっ、ゴリラさんも要る? ゴリラにうどん食べさしても大丈夫なのだろうか?


◇◆◇◆◇◆◇◆


 ポーションを飲んで体力を取り戻したオレは、ひたすらハンドガンを見やる。

 なんだろなコレ? ハンドガンの一部が光ってたので、そこに触れると半透明なウィンドウが現れた。

 そこには数字が表示され、たま~に、ピコッと増えている。


 通常弾を一発撃ってみる。数字が1減った。

 ホローポイントで2、劣化ウラン弾で4減るな。

 焼夷弾と成型炸薬弾は……うん、止めておこう、山火事になったら堪らないしな。


 不殺弾は、うおっ! すげ~減った! 20ぐらい減ったッスよ!

 あれか、不殺弾。モロ魔法みたいな効果だから減る量が多いのか?

 色々試してみた結果、以下の様な状況に。


●ハンドガン

 通常弾    :1

 ホローポイント:2

 劣化ウラン弾 :4

 焼夷弾    :未確認

 不殺弾    :20

 成型炸薬弾  :未確認


 赤外線スコープ/望遠スコープ:3分で1

 手加減/カラー選択     :消費無し


●ミズデッポウ(各1減る時間)

 通常水  :5分

 ポーション:30秒

 お湯   :3分

 化粧水  :5分

 聖水   :10秒


 聖水超減るな。まあ、こっちの世界で使うことはないだろうが。

 ポーションは……仕方ないか。それなりの効果があるものだしな。


●ハナビ

 蚊取り線香 :1

 線香花火  :1

 チャッカマン:3分で1

 花火手榴弾 :10


 手榴弾消費でかいな。もしかして無駄な花火機能持たせているから……いや、花火機能は無駄じゃない! 無駄じゃないのだが……手榴弾にその機能持たせてもなあ……


●バナナ

 バナナ  :1

 チョコバー:2

 素ウドン :5


 食料品は比較的リーズナブルな設定となってございます。


 最後、栄光の旗は3分ぐらいで1減ってる。

 一体なんなんだろなこのシステム。

 増やすのはどういった条件なのだろうか。

 時間……にしてはあまりにも不定期だ。

 全然増えなかったり、急に数十増えたり。願わくば、せめてこの密林から脱出できるまでは増え続けて欲しいものだ。


「ウホッ、ウホッ!」


 どうしましたゴリラさん? えっ、危ないから離れるなって?

 すっかりゴリラさんに気に入られてしまったようです。

 そんなゴリラさんオレの体の匂いを嗅いでくる。あっ、匂いますか? もう数日風呂に入ってないからなあ……


 オレはミズデッポウにして木にくくりつけ久しぶりのシャワーを浴びる。


「ウホッ、ウホッ!」


 ゴリラさんも水浴びしたい? どうぞどうぞ。えっ、さるもする? 仕方ない。

 3人? で揃ってシャワーを浴びる。うん、生き返るようだ。

 しかしアレだな。ゴリラって意外とおとなしいんだな。

 そういや前に、動物園の檻に誤って落ちた人間の子供を、ゴリラのメスが救出したって聞いたことあるな。


 ん、どうしたサル。急に距離なんかとって?

 ん、なんかゴリラさんが素っ裸のオレの体を凝視して……えっと……ゴリラさん、オスですよね?

 あっ、そういやその時に一緒に聞いた話で、ゴリラの集団は1匹のオスに複数のメスのハーレムだとかで、あぶれたオス同士で……


「ウホッ、ウホッ!」

「ひぃぃいいいい!」

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