番外編◆第1話 光の柱
なるほど、こういう仕組みになってた訳か……
『装填・ホローポイント!』
お嬢様が次々とモンスターの眉間を撃ち抜いていく。
すげ~な……あれ、オレより銃を使いこなしてんじゃね?
そしてそのお嬢様に撃ち抜かれたモンスター、倒れた後、体から魔石が飛び出したかと思ったら光の珠となってオレの銃に吸い込まれていく。
すると、銃の上に出ている半透明なウィンドウの数字が増えていく。
ほんとお嬢様には、足を向けて寝られないな。
SSS級ダンジョン攻略の祝勝パレードが終わって王宮に戻ってきた時、オレの栄光の旗によるレーダーに一際大きく黄金の旗が表示されている場所があった。
何かなって思ってその場所へ行くと、王宮の広場のど真ん中に黄金の旗が立っているじゃありませんか。
で、それに触れた瞬間、
『Congratulation!』
と虹色のタイトルが踊る輝くウインドウが現れ、
『あなたはこの世界において多大なる貢献を成し遂げました! その功績を称え以下の素晴らしいグレードを授けます。選択してください』
というメッセージが。
スペシャルグレードA:自由の女神
スペシャルグレードB:自由の女神
……どんだけ出てきたいんだあの女神。
仕方ない、オレはとりあえずスペシャルなグレードAを選択する。
えっ、選んで大丈夫なのかって? なあに、別にそれがあるからといって使わなければ何も問題はない。
電子レンジだって使ってないボタンなんて、いくらでもあるだろ?
しかし、オレはまだまだ女神さんを理解していなかったようだ。
「パッパカパー! パッパッパッ! パッパラー!」
突然ラッパを吹きながら上空から現れる女神さん。強制発動かよっ!
「素晴らしい! オゥグレイトゥ! そんなあなたに、一つだけ願い事を叶えてあげましょう!」
「は?」
「何がいいですか? 全知全能? 魅力最大化? あ、元の世界に戻りたいとかもオッケーデスよ?」
えっ、元の世界に戻れるの?
「はいはい! 元の世界ですね! それでは張り切って戻りましょ~!」
「えっ、ちょっ、ちょっーー!」
オレが立っている地面からから光の柱が立ち昇る。
そして徐々に体が消え始める。
「まって、待てってばっ!」
「ふむ、そうですね、それだけだと不満ですか? 仕方ありません! 戻る際に何かチートを授けましょう」
そういうことを言いたいんじゃねぇえええ!
「何がいいですか? タイムアップ10秒前! 9・8とんで3・2」
「だから、なんでとぶんだよ!」
慌ててオレは「コレ、この銃を!」と思わず伝える。
「銃ねえ、それ持って帰っても、魔法の無い世界だとただの鉄の塊なんだけど……」
少し考えていた女神さんは、突然いいアイデアが浮かんだ、みたいないい顔をする。
オレは激しく嫌な予感がした。
「なんか失礼な事考えてないっすか?」
「はいはい! それではコレ、その銃のレプリカです! シーユーアゲイン!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
オレは今、鬱蒼と生い茂る木々に囲まれている。
お隣では木から垂れ下がった大蛇さんがチロチロと頬を舐めてくる。
遠くからは聞いたことの無いような動物の泣き声がチラチラと。
どこだよぉおおお、ここぉおおおお!
明らかに日本ではない。只それだけは分かる。
見渡す限りの緑ミドリMIDORI。葉っぱの一枚が背丈ほどのもあるや。
これアレだろ、アマゾンとかアフリカとかにある、MITSURIN、そうジャングルだ。
なんの嫌がらせなのぉおお!
魔王なお方といい女神といい、なんであいつらはこうも訳の分からんとこに飛ばすんだ?
お約束なのか? ほんとカンベンして下さい。
ハアハァ……ハァァアアア……腹減ったな……バナナでも食うか。
オレは手元にある銃をバナナに変える。
ん、なんだこれ? 黒い粒? おかしいな?
『換装・ウドン!』
器シカでねえ……中身がねぇえぞ?
『モデルチェンジ・ハンドガン!』
オレはハンドガンに戻して引き金を引く。
だが、カチンという音しかしない。たまぁ出ません。
そういやあの女神、魔法の無い世界だとただの鉄の塊とか言ってたな……
えっ、マジで!? コレ使えないのぉ! ちょっと待って、つ~ことは水も食料も無いってこと!? リアル遭難じゃん!
待て、慌てるな、確かリュックに……おお、あった。シュマお嬢様がお昼食べれなかった時にと言って弁当持たせてくれたんだよな。
うん、お嬢様にはほんと感謝しなくてはな。
最近は料理の腕もメキメキと上達されて、ねこまんまだったのがすっかり綺麗な盛り付けでござる。
味だって申し分ない。うん、うんめええ。
お嬢様大丈夫かな? オレが光の柱になって消えようとした時、必死な顔でこっちに向かって来ていた。
はぁ、オレ、もうお嬢様と会えないのかな? なんだか胸がチクリと痛む。
無茶な事してなければいいけど。
――スカッ
あれ、箸が空を切ったぞ? あれ、今ここにあった弁当は? あれぇ?
考え事をしながら二口目を口にしようとしたところ、なぜか膝の上にあったはずの弁当が無くなっている。
「ウキッ、ウキキキッ」
「おのれぇええ、さぁるぅうう!」
木の上で一匹のサルがシュマお嬢様の弁当を貪ってござる。
オレは木の上のサルに向かってハンドガンの引き金を何度も引く。しかし、やはりたまぁ出ません。
そ、そうだ、手榴弾ならどうだ!? あれなら初期値で爆薬だ! …………ピンしか出ねえ。
弁当を食い終わったサルはこっちに向かって舌を出す。
オレは異世界で言葉の通じない体験をした所為か、言葉が通じなくとも行動で大体の意味を理解する事が出来るようになっている。
うん、あいつ絶対おちょくってんな。
「さるめぇええ!」
オレはひたすら精神力? を込めて引き金を引く。
サルはそんなオレを見て、何が面白いのかキャッキャと手を叩く。
――ゴツンッ
おっ、当たったな。えっ、何ガって?
思わず投げちまったよハンドガン。
おお、手元にハンドガンが戻ってきたぞ。この機能は残ってんのカ。
フハハハ、サルめっ、我がハンドガンの威力を思い知るがいい!
オレはひたすらハンドガンをサルに投げつける。
えっ、使い方間違ってねって? いやいや、意外といけますよコレ。
重さといい、形といい、ハンドガン、投擲に向いてんじゃね?
――ゴツンッ
ん? なんか地面の方で何かに当たる音が。
おおぉ……でけえ……
そこには、オレの背丈の1.5倍はあろうとかいうゴリラが。
――ガサ、ガサガサガサッ、ガサッ!
「ウスッ! すんませ~ん!」
異世界から戻ってきた一日目はゴリラさんとの追いかけっこで終了するのであった。
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