第22話 これが無理ゲーってやつですか

 冒険者さん達の思いもよらなかった期待を背負ってダンジョンに入っていくオレ達。

 姉さん、どうしますか? 様子見って言ってられる雰囲気じゃなくなったんですが。


「はぁ、仕方ないですわ。全力を尽くすとしましょう」

「全力を尽くして駄目そうなら逃げ帰るだけじゃわい」


 さすが冒険者、割り切っていらっしゃる。

 あの二人も、これくらい割り切っていてくれればいいんだがなあ。

 生き生きとした目で前方を見つめる若旦那。

 その隣では、そんな若旦那をまぶしそうに見上げるアルーシャさん。

 大丈夫かなあ……


 実力に応じて幾つかのパーティが戻っていく。

 そして、いよいよ最後のパーティともお別れとなる。


「若旦那、俺達が手伝えるのはここまでだ。あんた達ならこの先どんな試練があろうとも潜り抜けられる、そんな気がするんだ」

「ぼうず、しっかり若旦那を守るんだぞ」

「分かった、ありがとう! 君たちの犠牲は決して無駄にはしない」


 死んでない、死んでないッスから。

 オレ達は、冒険者さん達の暖かい見送りに送られながら階段を降りる。

 いよいよ最深部へ向けた戦いが始まる。

 ここまでは、すべて冒険者さん達が戦ってくれていた。


「セイジ、ゴーレムだ」

「ウスッ!」


『装填・劣化ウラン弾!』


 オレの弾丸がゴーレムのコアを突き抜ける。

 それを合図に、モンスターどもの猛攻が始まる。


『ウインドハリケーン!』


 若旦那のカマイタチがモンスターを切り裂く。

 姉さんの弓が、ヒュッケルさんの斧が、バルドック兄貴の剣が、モンスターを切り裂いていく。


「セイジは、ゴーレムやトカゲ野郎を優先しろ!」

「ウスッ」


 オレはとにかく弾をばら撒く。

 それだけでも牽制になるしな。

 ゴーレムやリザードマンは真っ先に殲滅だ。


 そしてそのうち、オレのハンドガンが輝きだす。

 おっ、レベルアップか! 久しぶりだな! 敵倒してたからルート開放か? ミサイルランチャーとかでねえかなあ。


「よしっ、とりえず敵が掃けたぞ、このまま突っ切る!」

「ウスッ!」


 オレ達はダンジョンを駆け抜ける。

 広い場所には敵が多量に現れる。幾つかの小道からワラワラと沸いてくるのだ。

 通路に入れば暫くは落ち着く、レベルアップはその時だな。また間違ってとんでもないの選んでもまずいし。


 しかし、今回のレベルアップはルート開放ではなかった。

 敵の出現も落ち着いたので、レベルアップと唱えたら出てきたのは能力追加のパネルだった。


 ―――ゴツン!


「セイジ、急にデカイ音を立てるな! 敵が寄って来たらどうするんだ!」

「うすっ、すいません!」


 で、何の能力が追加されたかというと……


 弾選択:焼夷弾


 であった。

 えっ、焼夷弾? 焼夷弾ってあれだよな、空爆とかで使われた奴。ナパームも焼夷弾の一つだったか?

 いやいやいや、ハンドガンで焼夷弾ってなんだよ?

 いや、ミサイルランチャー欲しいと願ったけどさ。


『装填・焼夷弾!』


 オレは一発、壁に向かって撃ってみる。

 弾が壁に当たった瞬間そこ一面が燃え始める。


 ―――ゴツン!


「なにやってんだ! セイジ!」

「うすっ、すいません!」

「すぐに移動するぞ!」

「ウスッ!」


 これ銃弾、つ~より魔法じゃね?

 いや確かに、当たった瞬間何かが弾けてたけどさ。

 その何か以上に燃え広がったような気もする。


 まあ、威力が高い分には文句はないか。

 今回、能力値上昇がなかったのもその所為かもしれない。

 しかしこいつは使えるのでは無いか?

 これで天敵スライムさえも倒せる! はずだ。


「ビックスライムだ!」

「よしっ、オレに任せろ!」


 うん、普通に突き抜けました。背後の壁が燃えております。


「セイジ、その魔法禁止な」

「……うす」


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ちっ、これが幾多の冒険者を退けていた理由か!」

「コアですら回復してやがる!」


 いよいよ最下層のラスボスとご対面した訳だが、最初に出てきたゴーレム、オレの劣化ウラン弾でコアを破壊して、あれ? 楽勝じゃねって思った瞬間、奥のドラゴンが回復魔法を掛けてきやがった。

 その回復魔法を受けたゴーレムさん、意気揚々と復活するじゃぁありませんか。


「先に奥のドラゴンをやらないと無理か?」


 オレは奥のドラゴンに向けて劣化ウラン弾を連発する。しかし、


「今度はゴーレムが回復魔法……だと!?」


 右側のゴーレムがドラゴンに回復魔法を掛けてる模様。


「どうやら3対同時に仕留めない限り、これは終わりそうに無いな……」


 なんたる無理ゲーですか。

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