第57話 対オーガ集団戦

「えっ……なにこれ……」

「モンスターがダンジョンの外まで……!?」


 案の定、寄ってきましたよモンスターさん達。


『フルオート・ON』


 オレはダンジョンの入り口に向かってハンドガンを乱射する。


「逃げるぞ!」

「え……う、うん」


 殲滅戦は苦手でも撤退戦には有利だなフルオート。

 モンスター共は銃弾の雨に驚いてダンジョンの入り口に逃げ込む。


「オレ、モンスター、惹きつける、体質」


 撤退しながら、その服はモンスターを惹き付けないようにする対策だと説明して返してもらう。


「そっ、そんな体質、聞いた事無いよ!」


 まあ、魔界に行って帰ってこられる人間なんて滅多に居ないだろうからなあ。


「前からも来たよっ!」


 森の方からもモンスター達が現れた模様。


「数が多すぎる! ダンジョンに逃げ込みましょう。大丈夫よ! 向こうのくらいなら私がなんとかしてあげる!」


『エンチャント・火炎!』


 森の方が多そうなので一旦ダンジョンに戻ることにする。

 ライラックがダンジョンの入り口に居る敵を次々に打ち倒す。言うだけのことはある。

 しかし、その剣が途中でポッキリ剣が折れてしまった。


「くっ、ドスナラ!」

「はいっ!」


 どうやら魔法剣士にとって剣は消耗品に近い代物らしい。

 そりゃお金も掛かるわ。


「わ、私は祖先がエルフだからねっ、魔法剣士が向いてんのよっ!」


 入り口の雑魚を倒してダンジョンに逃げ込む。

 森のモンスター共はダンジョンには入って来れない模様だ。


「僕達のような平民は魔法学校に行く余裕なんてないからね」


 弟さんがぶっちゃける。ほら、ちび姉ちゃん、すねちゃいましたよ?

 まあ、それでも剣を消耗品にしてたら結構かからね? と聞いたら、


「それしか手がなかったんだから仕方ないじゃない!」


 私が普通の女戦士になれると思うって? 力こぶしを出して聞いてくる。

 うん、小学生に戦士は無理かな? あたたた。


「魔法剣士ならギリギリなんとかなると思ったのよ」


 稼ぎの大半は剣に消えていく模様。

 毎日がその日暮らしらしい。

 剣かあ……神器で剣とかでるかな? でも、錆びた剣とかでてもなあ。

 いやまてよ、エンチャントするなら丈夫なだけでも、とりえはあったりしないかな?


「姉さんまた来たよ」

「分かったわっ!」


 しかし、敵が来たらすぐ突っ込んでいくなぁ。

 弱い敵ならそれでもいいだろうが、格上には厳しいのではないだろうか。

 魔力配分も出来てないようだし。とりあえずバナナ作っとくか。


「はぁっ、はぁっ、」


 どうにか集団を片付け肩で息をするお姉様。ちびっこの癖になかなかやるじゃないか。

 オレはバナナを差し出す。

 ナニコレみたいな目を向けてくる。


「食え」

「お腹すいてないわよ?」

「いいから、食え」


 えっ、これ魔力が回復しているっ!? って驚いている。


「おいしそうだな……」


 弟さんにもバナナを出してあげる。

 ふごっ、ふごっって鼻息を荒くしながら夢中で食べてござる。


「ちょっ、ちょっと、これってものすごく高いんじゃ……」


 費用はかかってございません。

 あえていうならオレの人件費?

 あっ、もう一本いりますか?


「要らないわよっ、クソッ、これだから貴族はっ」

「姉さん……」


 なにか癇に障ったご様子。

 多分、金にモノをいわせて、いい装備、いい道具を用意していると勘違いしているんだろうな。

 この上、神器とかいったら碌な事になりそうにないなあ。


「もうそろそろ外のモンスターも居なくなっただろうから、戻ろ・」


 その時、ライラックが何かにぶつかった様に通路を転がる。


「姉さんっ!」

「敵だ!」


 通路の向こうにボロボロのローブを着たモンスターが腕を差し出している。

 魔法かっ!?


『装填・ホローポイント!』


 そいつの額を撃ち抜く。

 くそっ、今まで索敵はフォルテに任せっきりだったから油断した!


「大丈夫か!」

「ぐっ、問題、ないわっ!」


 ライラックはよろめきながらも立ち上がる。


「ね、姉さん」


 弟さんが通路の先を震えながら指差す。

 また、モンスターか!?


「オーガのソルジャーとメイジ……なんでっ、あいつらは最下層のモンスターじゃない!」


 そこには、先ほどと同じローブを纏ったモンスターと筋骨隆々の鬼風のモンスターがこちらに向かって来ていた。


『フルオート・ON!』


 ちっ、通常弾じゃ前の奴の皮膚を貫通できないか。

 オレは逃げ出すために弾幕を張ろうとしたが、筋肉オーガが盾となって突き進んでくる。


『装填・劣化ウラン弾! 3点バースト!』


 オレは貫通弾に切り替え筋肉オーガに向かってぶっ放す。

 さすがに貫通とまではいかないが、奴らの足が止まる。


「今のうち!」

「あっ、あんた、その魔法……オーガにダメージ!?」

「ダメだ! 後ろからもっ!」


 後ろを振り返ると数対のオーガがテレポートしてきている。

 くそっ、先にメイジをやらなけりゃきりがないな。


「後ろは頼む!」

「む、無理だよ。オーガの攻撃なんて受け止められない……」

「わ、私達、攻略といってもほとんど荷物持ちだったし……」


 まずいな。前後に挟まれたらオレの銃じゃ対処のしようがない。


『装填・焼夷弾!』


 前後に炎の壁を張る。が、それを飛び越えてきた!


「うわっ、うわあわああ」


 弟さんが腰を抜かしている。

 ちび姉も、がむしゃらに剣を振り回すだけだ。


『装填・劣化ウラン弾! 3点バースト!』


 それでも牽制にはなる、オレは後ろから頭をぶち抜く。

 だがオーガ、生命力だけはお強いようで。

 仕方ない、


『装填・劣化ウラン弾! フルオート!』


 頭が蜂の巣になってゆっくりと倒れこむオーガ。

 オレはバナナを口に銜える。

 そしてさらにメイジ向かってぶっ放す。しかしながら筋肉オーガが前に立ち塞がる。

 くっ、狭い通路が足かせになってやがる。

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