第58話

『装填・焼夷弾!』


 オーガの体が燃え上がる。

 そして体勢が崩れた瞬間、射線に入ったメイジにも御見舞いする。


「すごい……オーガを押している……」

「使いえないどころか、すごい魔法だよ……」


『装填・劣化ウラン弾! フルオート!』


 オレはとにかく、前方のメイジのいる方向に向かって連射しながら、後方から炎を飛び越えてきたオーガを相手する。

 げぷっ、まずいな……もうバナナ入らないでござる。

 急いで食ってんので良く噛んで食べられない。よってバナナ、お腹が膨らむのよ。

 とはいえ、精神力? の回復無しに劣化ウラン弾をフルオートで撃ってると、いつ気絶するか分かったもんじゃない。


『装填・劣化ウラン弾! 3点バースト!』


 仕方ないので3点バーストに切り替える。こっちでも油断したらコロッといくから要注意だ。

 徐々に数を減らしていくオーガ。

 しかし、奥からさらに数体のオーガが追加で現れた。きりがないぞっ!


「おい、あそこで誰か戦っているぞ!」


 そこへ出口の方から声が聞こえる。

 誰か来てくれたのか!?

 後方のオーガが氷の槍を受けて倒れていく。

 助かった、ありがてえ。

 と、油断したときだった。


 一体のオーガがオレとライラックの間に現れた。

 メイジが瞬間移動させたようだ。


「ひっ!」

「ライラック!」


 オーガがその太い腕でライラックを弾き飛ばす。

 その小さな体、軽々と通路を飛んでいく。

 なんとか剣でガードしていたようだが……飛ばされた先が、前方の炎の向こう、オーガの集団の足元に転がっていく。

 オーガがそのライラックに向かって腕を振り上げる。絶望的な表情を見せるライラック。


 させるかっ!


『赤外線スコープ・ON』


 狙うは、その腕の付け根だ!


『装填・劣化ウラン弾! フルオート!』


 オレの銃弾がオーガの肩に穴を開けていく。

 振り下ろしたオーガの腕は、ライラックに当たる前に引き千切れて明後日の方へ。

 なんとかライラックの危機を脱することができたが、オレの背後はがら空きだ。


 ライラックを吹き飛ばしたオーガの腕がオレの背中にぶち当たる。

 当たる瞬間、自分から前に出たが……その衝撃は半端じゃない。鳴ったら駄目な音がしてございます。

 オレもまた前方の炎を飛び越えてオーガランドへ一直線。


『装填・ホローポイント!』


 激痛の中、地面を転がりながらオーガメイジを必死で狙う。

 メイジさえ居なければライラックでも時間を稼げるはずだ!

 その意図を読んだのかライラックがオレの前に立ち、剣でオーガソルジャーを牽制する。

 しかしだ、ぽっきりいっちゃいました。ライラックさんの剣。


 メイジはなんとか殲滅できたが、目の前には3体のオーガソルジャー。


「こっちのオーガは片付けた! いま少しだけ持ち堪えろ」


 救出に来てくれた冒険者さんの声がする。

 いま少しって……せめて剣があれば……

 女神さん、後生です! ダンジョン攻略の報酬、前借りさせてくださいっ!


 そう願った瞬間、一本の剣が目の前に現れる。


「ライラック!」


 オレはそれを、すかさずライラックに手渡す。


「ありがたいっ!」『エンチャント・凍結!』「えっ!?」


 ライラックがエンチャントした剣が青白く輝きだす。

 ソレに触れたオーガさん、なんと、全身が凍り始めた。


「ちょっ、ちょっとなにこれ……!?」


 ありがとう女神さん! あんたはぁ凄いおかたやぁ。

 オレは始めて女神さんに感謝の祈りをささげる。

 その剣を持ったライラック、残りの2体もなんなく倒しきることができるのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 さて、どうしたものか……

 オレは目の前に浮かんでいる半透明なウィンドウを見やる。

 そこにはでかでかと数字が表示され、だんだん数が減っている。


 なんの数字だろなこれ……

 オレはその数字に触れてみる。とだ、


『この数字が0になる前に、未踏ダンジョンのクリアをお勧めします』


 ってメッセージが出た。

 0になったらどうなるんだよ?

 オレはさらにそのメッセージに触れる。


『勇者の所持する神器を除いて、世界中の全ての神器が失われます』


 そう続きが現れた。

 そうか、ほっといてもオレにデメリットはないな。バレなければだが……

 これバレたらどうなるんだろなぁ……まあ、まず狩られるよな?


 確かこの世界には、神様と交信する神託とやらがあるとか聞いたな。ああ、確実にバレそうだなあ……


「セセセ、セイジ、こここ、これぇっなに!」


 ライラックが剣を突き出してくる、危ないからこっち向けんな!

 それまだ凍結のエンチャントかかってるだろ! 凍ったらどうすんだよ!


「帰ったら、話す」

「ううう、うん」

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