第61話 その装備は呪われています。
「はぁはぁ、勇者様……もっと」
なんか変な扉を開きかけてやガル。
シュマお嬢様が、吹っ飛ばされたお兄さんに袖の下を握らせている。
えっ、周りの人にも行ってこいって? うす、了解しました!
「いやまあ、別にしゃべったりはしねえけどよ。へへっ、ありがとな」
なんとか口封じに成功したようです。
「ライラック、その神剣、使用を禁止いたします」
「そんなっ!」
「セイジが許可した時のみといたします」
妥当な判断でござる。
暴力の手段さえ奪ってしまえば、小学生が何か言ってら、ぐらいにしか思われないだろう。
「ドスナラ、ライラックが変な真似しそうなら取り押さえなさい」
「え~、あっ、はい!」
不満を口にしそうになって、シュマお嬢様の眼光に怯えて慌てて返事をする弟さん。
「それでは宿屋の確保に向かいましょう。その後、持ち物を確認してダンジョンに向かいます」
「うすっ」
◇◆◇◆◇◆◇◆
『モデルチェンジ・ミズデッポウ!』『装填・ポーション!』
オレの水鉄砲がアンデットどもに向かって火? を吹く。
最初はなんだコレって感じで見つめてる奴らも、その攻撃がどんなに恐ろしいのか知った頃には方々逃げ回ってござる。
だが、ここで問題が一つ発生した。
精神力? が超尽きる。
ポーション出しっぱは10分ももたねえ。
あと地味に、ポーションが掛かってから消滅まで結構時間が掛かっている。
あれ? これクリアできるのだろうか?
「セイジのそれって小効果のポーションでしたっけ?」
「うす」
「小じゃなあ、威力も弱いか」
やはり小では厳しいっすか?
「まあ、ゆっくり進むか。みたところ、そんなに広いダンジョンでもなさそうだしな」
「うすっ」
まあ、オレのポーション水に頼らなくても、ライラックの神聖を乗せた魔法剣でやれるし。
シュマお嬢様の魔法もある。
ライラックが弟さんの盾にも神聖のエンチャントしているから、タンク役も申し分ない。
と、光始めましたオレの水鉄砲。
ようやくレベルアップか。オレはその内容を見てみる。
機能追加:水流切替(強)
弾選択:聖水
どうした女神! 最近空気読みすぎだろ!?
『装填・聖水!』
掛かったモンスターが一瞬で蒸発していく。
これはっ……
『モデルチェンジ・ハンドガン!』『装填・聖水弾!』
オレはハンドガンに戻し、聖水の水弾をセットする。
案の定、弾丸を受けたアンデットが次々と倒れ伏していくではありませんか!
ハンドガンの状態なら精神力? も結構もつはず。こりゃいけるぜ!
「ほう、それがれべるあっぷ? ってやつか。いきなり威力が上がったな」
「これなら容易く攻略できそうですわね」
しかしながら、そうは問屋が卸してくれなかった。
上の方の階層は骨やら霊やらで、聖水掛ければイチコロだったのだが。
下の方にいくと、バンパイヤやら狼男やらが現れて、少々聖水掛かっても死にゃしない。
『装填・聖水弾!』
「ここからが正念場ですわっ!」『ホーリーストーム!』
主にオレとシュマお嬢様が遠方から削り、近寄ってきたのをライラックがバッサリいく戦法に切り替える。
「今日はここで一泊するか」
「うすっ」
モンスター戦が一息ついたオレ達は、モンスター避けの呪布をあたりに張り巡らす。
これを張っておけばモンスターから見えないそうな。まあ、見えないだけなので近くまでこられるとまずいんだけどね。
「いや~勇者様、ほんとこれ凄いですよ!」
ライラックが剣をオレに突きつけてそう言う。だからなんでお前は、こっちに突きつけるんだ、危ないだろ?
「凄いです……私ごときのエンチャントで聖剣がごとき切れ味! ああっ、この刀身! すてきっ! 抱いてっ! ハァハァ……ぬれるっ……」
目がイッちゃっております。
抜き身の刀身を抱いて舐めております。血が出てるぞ、やめろって。
「ああっ、いい!」
これはアカン。
『手加減・ON!』『装填・不殺弾!』
「げぼぉぁああ!」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「目が覚めたか」
「はい……」
とりあえずポーションを飲ましてやる。
なんだかまずい性癖に走っているなぁ。剣への情熱は収まったようだが、今度はオレの方を向いて熱っぽい瞳を向けてくる。
弟さんに前からこんなだったのと聞いてみたら、
「姉さんはなんでも、のめり込み易くて……それでも、ここまでは酷くはなかったけどなあ」
その剣、没収した方がいいのではないだろうか。
もしかして、不完全なんで呪いとか掛かってるんじゃ?
「この剣は決して離さない! 離すというならこの首、切り落として持って行くがいい!」
うん、絶対掛かってるな。
あれだ、呪われて装備が解除できない状態?
まあ、このダンジョンクリアすれば正式にオレのものとなるだろうし、それまでほっとくかぁ。
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