第24話 ええ、見てますよ
あんのクソ女神! 絶対どっかで見てるだろ!
半透明に浮き上がったウインドウに描かれたものは、
『LevelUp! BonusStage!』
と虹色のタイトルの後に、
『ダンジョン攻略おめでとうございます! あなたに以下のアイテムを授けます。選択してください』
というメッセージが。
セレクトA:ロケットランチャー
セレクトB:エリクサー×2
地味に試してんじゃねぇええ!
オレは迷わずエリクサーを選択する。
オレの手元に2つの瓶が現れる。オレはその一つを若旦那の口へ突っ込む。
すると、みるみるうちに若旦那の傷が塞がり、
「うっ、こ、ここは……」
そう言って起き上がる若旦那。
皆が信じられないって顔で見てくる。
「エリクサー、ダンジョン攻略の、報酬」
「えっ、エリクサーだって!?」
若旦那がガバッと立ち上がる。
「そんな、とんでもないものを僕に……?」
「まだ一個ある」
そう言って、もう一つのエリクサーを若旦那に差し出す。
「一個って、二個あったの?」
オレは空になった瓶を差し出す。
「なにも全部飲まさなくても良かったのに、うわっ・」
ふむ?
若旦那にアルーシャさんが抱きついて泣き出す。
どうやらアルーシャさんの硬直時間が過ぎた模様。
若旦那が言うには、エリクサーの一滴でもあれば全身の傷が回復するとか。
ふむ、×2って出てたから、一本全部、飲まさないと駄目かと思ったよ。
まあ、ほとんど死に掛けてたんだから、ケチって死んじゃったら目も当てられないし。
「エリクサーか、こいつはとんでもない物を手に入れたな……国が動くんじゃねえか?」
そんなに凄い物なの?
「一本丸々使えば死人すら蘇らせるって言うしな。一滴でも不治の病を治せるんだぜ? 天井知らずの金額にならあ」
「魔術師が魔法を併用して用いれば若返りの薬にもなるとか、こりゃあ荒れそうですわね」
「とりあえず、他にもないか捜してみようぜ?」
ラスボスの間を漁ってみると、あるわあるわ金銀財宝ざっくざく。
「うはは、笑いがとまらねえぜ!」
「どうします? 全部は持ち出せませんわよ?」
皆さん、ニヤニヤ笑いが止まりません。
「暫くすると新たなラスボスが発生するかもしれない。持てるだけ持っていこう」
若旦那はその選別眼で高そうなものを選んでいく。
「これだけあれば、孤児達、もう大丈夫か」
そう呟いたオレを、皆があっけにとられた顔で見てくる。
「ははっ、セイジはあれだな。いや、ほんとお前には敵わねえや」
「ふふっ、私も欲の皮が突っぱねるとこでしたわ」
「金を持って身を持ち崩した奴はごまんと居る。わしらはそうならぬよう気をつけねばな」
皆、宝石類の様な高そうなものから実用性の高いものへ切り替えていく。
「おっ、この盾、魔法が掛かってねえか? こいつはよさそうだ」
「あら、この弓……とても良い、なんだかとてもしっくりきますわ」
「斧はねえのかよ、仕方ないのぉ。鎧でも持って帰るか」
「あっ、若旦那、この宝玉、良さそうですよ。若旦那にぴったりです」
ワイワイ言いながらお宝を選別している。
先ほどの欲にくらんだ瞳は、今はもうない。
「セイジ、ありがとう。全部君のおかげだ、君に出会えて、本当に良かったよ」
若旦那が皆を眩しそうに見つめながらそう言ってくる。
「なあ皆、エリクサーなんだが、僕はセイジに託そうと思っている。彼なら間違った使い方はしないだろう」
いやいやいや、国が関わってくるような大事になるんでしょ? 勘弁してくださいよ!
「リーダー、若旦那、これ、若旦那のもの」
オレは必死で若旦那に押し付けようとする。
「正直に言おう、僕では扱いきれない」
正直すぎるよ!
「姉さん、オレからの、プレゼント」
「あんたは、か弱い乙女に押し付ける気?」
「あにきぃー」
「あきらめろ」
そんなぁあーー。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「お父様、これどうぞ」
「なんだねコレは?」
「エリクサー」
お父様が卒倒されました。
金銀財宝を担いだオレ達はダンジョンを逆戻りする。
道中出会った冒険者達は奇声を上げながらダンジョンを出て行く。
そしてダンジョンを出たら、
―――ウワァアアア!
もの凄い人々の盛り上がりよう。
中には号泣している人も。
「若旦那! あんたならやってくれると思ったぜ!」
「まったく、てえしたもんだ。あのおぼっちゃんがこんなに成長するなんてな」
「今日は無礼講だ! 町中の酒樽を空にしよう! 費用は全て僕が持つ!」
―――ウオォオオオオ!
さっきより更に盛り上がっていく人たち。
皆が肩を組んで歌いだす。ここでも歌を知らないオレは疎外感。なので、
「キッス、キッス! キッスッ!」
って煽ってみることに。
そしたらまたしても「キッス、キッス」の大ウェーブ。
若旦那とアルーシャさんは真っ赤な顔で見つめあい、情熱的な接吻をするのであった。
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