第46話 対アイアンゴーレム戦

「おいおいおい、ラスボスのご登場だぜ……まさかこんな一階層の入ったばかりのとこでな……」


 えっ、ラスボスまで来たのぉ? どんだけ魔界臭させてんだろうか。


「セイジ、ちゃんと帰ったら風呂入れよ」


 風呂に入ってとれるものなんでしょうか?

 まあしかし所詮はゴーレム、オレの貫通弾の餌食となってもらうか。


『装填・劣化ウラン弾!』


 ―――カキンッ!


 ……あれ? 弾かれたぞ?

 もう一発撃ってみる。やはり当たった後どっかに向かって飛んでいってる。跳弾ってやつか?


「おいセイジ、ゴーレムは得意なんじゃなかったのか?」


『装填・ホローポイント!』


 ―――ガツンッ!


 少々へこんだ後、ポトリと弾がおちる。

 硬すぎだろ!

 そこにいたゴーレムはゴーレムでも、アイアンゴーレムという鉄の塊であった。


「あいつのコアは体の中心だ。よくある攻略法は業火であぶって柔らかくなったところを打撃武器で衝撃を与えて壊すのだが」


 先ほどの件で少々火の魔法を使いすぎたので、これ以上使うと一酸化中毒などになりかねない。

 尚且つ、オレ達のパーティで打撃武器はない。

 唯一シュマお嬢様のハンマー系の魔法なら?


「無視して帰ってもいいんだが、せっかく出てきてくれたラスボス。一応倒せばダンジョンクリアだが……どうする?」


 えっ、こんな最初のフロアでもラスボス倒せばダンジョンクリアになるっすか?


「財宝箱は貰えないがな、ラスボスの魔石を持って帰ればクリアと認められる」


 えっ、オレ前にスケルトンドラゴン倒したんですが……あれクリアになったの?


「いや、あそこのボスはあれだけじゃないからな。アンデッドウィザードってのが居てな、そいつらを倒さないと無限にスケルトンドラゴンを召喚してくる」


 なるほど、骨ドラゴンはそいつらの只の攻撃手段だったと。そういや魔石も落とさなかったしな。


「やるだけやってみましょう。いざというときの為に出口付近で戦いましょ」

「うすっ」


 オレ達はダンジョンの出口側の通路を背にして戦う。


『モデルチェンジ・バナナ!』


「フォルテ、いっぱい、剥く」


 今回オレは戦力にならなさそうなので、フォルテと一緒にバナナの皮まきに参加する予定だ。

 せっせせっせとバナナを剥く。フォルテが兄ちゃんもったいないぜと言ってるが命には替えられない。


「何やってんだお前ら?」


 ラルズさんがそんなオレ達を不思議そうに見つめてくる。

 あっ、そこ危ないッスよ? ほらいわんこっちゃない。


「なんだこりゃ?」


 バナナの皮で滑って驚いているラルズさん。


「よしっ! それじゃいきますわよ!」


 シュマお嬢様が張り切って魔法を唱えようとする。

 大きな一撃を見舞う予定だ。

 と、ゴーレムがこちらに向かって突進してこようとする。

 だがしかし、案の定、バナナに足をとられて後ろに倒れこんだ。


 ―――パキンッ


 ん? 今なんか割れたような音が。

 大きな音を立てて足を振り上げた状態で背中から倒れ込むゴーレム。

 その瞬間、なにかガラスの様なものが割れる音が一緒にした。


「ねえ、あいつ動かないんですけどぉ?」


 そして起き上がってこようとしないゴーレムさん。

 そのうち体がぐずぐすに崩れだす。


「「「「………………」」」」


 オレ達はそれを無言で見送るしかなかった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「号外! 号外だぁああ! なんと、英雄のドリームチームを抜く最速攻略者が現れた!」


 ラスボスの魔石を持ってギルドに帰るとえらい騒ぎになった。

 受付の兄ちゃんが何度も何度も魔石と申請時間を見比べる。そして真っ青になったかと思うと引っ込んで出てこない。

 あの~、報酬くれないんでしょうか?

 と思ってたら奥から怖そうなお方がいっぱい。


 あっ、もしかしてこれ不正になるんすか? えっ、違う? 最速ホルダー? なんすかそれ?


 なんでもこの王都ではダンジョンの攻略スピードを図っていた模様。

 その昔、英雄達が集まって、どれだけ早く攻略できるか競っていたらしい。

 で、オレ達、初級とはいえ、その英雄さん達を圧倒するほどのスピードでの攻略だったようなのだ。

 そりゃな、全然歩いてないし。


「英雄だ! 新たな英雄の誕生だぁ!」


 そうしてなんかうちのお嬢様が英雄となったご様子。

 なにも未踏ダンジョン攻略だけが英雄への道ではなかったみたいです。


「……ねえ、私、何もやってないんだけど?」


 まあいいんじゃないっすかね? 運も実力のうちっすよ?

 しかしあれだな、すげーなバナナ。まさか……戦闘にこんなに役立つとは思いもよらなかった。

 姫様の刺客に続いてアイアンゴーレムまで。しかも一撃ッスよ? バナナ最強なんではないだろうか?


 そしてそんなバナナ、光ってござる。どうやらレベルアップした模様。

 オレは与えられた部屋に戻りレベルアップと唱える。出現した半透明に浮き上がったウインドウには、


『LevelUp! BonusStage!』


 と虹色のタイトルの後に、


『ダンジョン攻略おめでとうございます! あなたに以下のアイテムを授けます。選択してください。プッ』


 最後のプッはなんだよ? 分からないこともないが。

 そしてその内容だが、


 セレクトA:折れた短剣


 セレクトB:ペンダント(魔力アップ小)


 さすが初級ダンジョンだけあって貰えるものも微妙である。

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