第76話

「大丈夫セイジ?」

「ううっ、ひどいッス」


 お嬢様や王子様、後半、夢中になって手榴弾を投げまわっていました。魔法を使わずに。

 で、そのとばっちりは全部オレに向く訳で。

 うっ、ひどい、汚されてしまったでアリマス!


「ま、まあ、ちょっとばかり調子に乗っちゃったかも?」

「ぼ、ボクチンは悪くないジョ。セイジがそんな便利な物、出すのが悪いんだじょ」


 お嬢様と王子様は少々反省されているご様子。

 それに引き換え……


「これが魔法使いの感触か……素晴らしいな!」

「もう一度……魔法使い目指してみようか?」

「ああ、最後はこの手榴弾で爆散されてみたいっ!」


 前衛の方達は魔法使いの気分が味わえたようで、随分はしゃぎまわっておいでだ。

 最後のライラックは除いてな。お前はいったい、どこへ向かっているんだ?


「しかしあれだな、こんな兵器とか開発できたら魔法使い要らなくなるかもな」

「さすがにそれはどうだか知らないが、魔法使いマンセーはなくなるな」

「ボクチンの国で試作してみるかジョ?」


 それと王子様、言葉遣い戻ってますよ?


「おっと、なかなか抜けないねコレ」


 まあ、まだ直しだして日も浅いですしね。


 さて、攻めてくるモンスターはいなくなったが、まだ城には幾らか残っている模様。

 早くしないと旗も復帰するようで、早急な攻略が求められる。


「あの門、壊せるかな?」


 えっ、またオレっすか?

 成型炸薬弾、ごっそりと精神力? 減るんすよぉ。


「仕方ないわね。セイジにはコア破壊をお願いしなくちゃならないですし」


 シュマお嬢様と王子様が魔法を唱える。


『『エクスプロージョン!』』


 轟音と共に門のあった辺りが弾け飛ぶ。

 なんかすげ~魔法じゃね? なんで最初からそれしないのよ?


「ふう、これで僕達の魔力はカラッポだね」

「そうね、それと、これ使うと暫く魔法使えないのよね~」

「「なんでセイジ、頼むね」」


 息ぴったりだなお前ら。

 オレは泣く泣く手榴弾を量産するのであった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「居たぞ!」


『エンチャント・斬撃!』


 場内戦に入った後はひたすら敵の間を駆け抜ける。

 ライラックとレミカ様が縦横無尽に走りながら敵を殲滅していく。

 洞窟と違って広く動きやすいようだ。

 むしろ騎士位を持つレミカ様にとっては本職の場である。


『フルオート・ON!』


 オレは後方から迫ってくるモンスターに向けて、威嚇用に通常弾をばら撒く。


「間もなく城の中心部だと思われる。気を引き締めろ!」


 玉座らしき場所への扉を開くオレ達。

 その玉座には……王冠をかぶった王様らしき人物が座っていた。


「まさかっ、魔王!?」

「いや、あれは……人形?」


 ゆっくりと立ち上がるその人物は……目も鼻もなくノッペラボウな姿をしていた。

 どうやら精巧に作られたゴーレムのようだ。

 と、屈んだ姿勢を見せると、


「来るぞっ!」


 一瞬後、大きな音と共にタンクさんとドスナラが出口の向こうへ転がっていく。

 一瞬にして間合いを詰められた!?


「ドスナラッ!?」


 王様ゴーレムの姿がぶれる。


「させるかっ!」


 そこへオレの前にレミカ様が出てきて王様ゴーレムの剣を受け止める。

 動きの止まった奴に、背後からモルスさんが斬りつける。


「チッ、私の神器ではダメージになりませんか。フォルテ、短剣を借ります!」

「えっ、あっ、いつのまに!?」


 レミカ様と王様ゴーレムは、目で追えないほどのスピードで殺陣を演じている。

 そこへ間を縫って、フォルテから奪った短剣で王様ゴーレムの足を切りつけるモルスさん。さすがは姫様の懐刀。

 と、急に機動力を失う王様ゴーレム。


「一分です!」

「了解しました!」


 レミカ様の猛攻が王様ゴーレムを襲う。しかしながら大層硬いようで表面しか傷ついていない。

 王様ゴーレムはモルスさんの短剣を危険視したようで、なかなか次の腐食を与えさせてくれない。


『装填・劣化ウラン弾!』


 オレはそんな二人を援護すべく、劣化ウラン弾を王様ゴーレムに叩き込む。


「くっ、届かなかったか!?」


 しかしながらやはり硬い、コアまで届きません。まだまだ動く王様ゴーレム。


「セイジ、足を狙うんだ!」

「ウスッ!」


『3点バースト・ON!』


 オレは王様ゴーレムの足を狙う。オレが狙いやすいように動いてくれるモルスさん。

 ほんとこの人優秀だな。なんであんな姫様の侍女なんてやってんだろ?

 オレの劣化ウラン弾を受けて片足がぽっきりと折れる。


「今だセイジッ!」


『装填・成型炸薬弾!』


 片膝を突き、動きが止まる王様ゴーレム。

 レミカ様とモルスさんがその王様ゴーレムから離れた瞬間、オレは成型炸薬弾を撃ち放つ!

 それは見事、王様ゴーレムの上半身にぶち当たり粉々に粉砕する。

 と、なんか上からパラパラと砂の様なものが?


「シュマお嬢様……キャッスルゴーレムはやられるとどうなるので?」


 モルスさんが恐る恐るそう聞いてくる。


「そんなの決まってますわ! 砂に戻るのよっ!」


 決まってね~よ! なんで先に言わないのよっ!

 えっ、まずくね? こんなお城の中心部、埋もれるの決定じゃない?


「安心なさい、ちゃんと対策は練っていますよ」


 さすがお嬢様!

 ビシッと地面を指差す。


「ここ掘れワンワン!」


「「「………………」」」


「あっ、本当なんですよ! コアがある下には宝物庫があって、そこだけは崩れないのよ!」


 それにしても、言い方ってものがあるのではないでしょうか?

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