第77話 最後の選択
「………………」
宝物庫に避難したオレは、ひたすら中空を見やる。
そこには、
『LevelUp! BonusStage!』
と虹色のタイトルの後に、
『ダンジョン攻略おめでとうございます! スペシャルなグレードを選択できます! 選択してください』
と出ている。
だが問題はその後だ。
スペシャルグレードA:自由の女神
スペシャルグレードB:栄光の旗
ネタしかねえ……
反動か? 反動なのか? ここ最近、実用性にとんだレベルアップばかりだったのでその反動でこうなったのか?
つ~か自由の女神ってなんだよ? 女神がソフトクリームでも出してくれるのか?
それとも目からビームで薙ぎ払いとか? ……いやまてよ。
もしかして自由の女神って……召喚魔法……いやいやいや、さすがにないよな。まさかそんなバカな事は、さすがのあの女神でもしないだろう。うん、……これだけは決して選ぶまい。
となると、後は栄光の旗だが、旗ってなんだよ? どう使うんだよその旗。
アレかな? 銃の先からポンと旗が出て。おもちゃかよ!
まったく使えない旗か、地雷確定のような自由の女神か……ほんと性格悪いよな。
それでも旗の方が地雷よりましだな。
オレは栄光の旗を選択しようとする。
まてよ……栄光のフラッグって……シナリオクリア? 「こんぐらちゅれいしょん!」とか言って、突然元の世界に戻されたりしないよな?
ええい、ままよ!
と、銃が消え、オレの目の前に丸いウィンドウが表示された。
そしてそこにポンポンポンと旗が立っていく。
これは……!? もしかして、レーダー!?
遠くに赤い旗が幾つか、近くに青い旗が幾つか表示されている。
赤い旗は……敵か、すると青いのが味方で……
オレはぐるっと周りを見回す。
人物が視界に入った瞬間ウインドウから旗が消え、その人の頭の上に青い旗が立つ。
便利だなこれ。コレがあれば不意打ちがなくなる。
しかもだ、誰が敵で誰が味方がすぐに分かる! さすが栄光!
……出来れば知りたくなかった。
二つほど赤い旗が立ってござる。
一つはモルスさん。
うん、これは良く分かる。
そしてもう一つは……スカウトさんの頭の上に立っている。
あの人敵だったのか~。人が良さそうなのになぁ。
今スカウトの人に反乱を起こされたら、オレ達、ダンジョンから脱出できなくなるのではないだろうか?
「神器は、ありやせんで?」
そのスカウトの人が王子様に問いかける。
「そうだね、これだけの難易度のダンジョン、きっととんでもない神器があると思うんだけど……」
王子様は財宝の中をごそごそと調べている。
ん、神器? ああ……もしかして神器、オレのコレが代わりになってるんじゃ?
今までもそうだったし。
こりゃやべぇええ! オレもしかして神器独り占め!? バレたら只じゃすまねえ!
というか、オレ悪くないよね?
ちょっと女神様! ちゃんと皆にも神器くださいよ!
と、急に全員の目の前にポンと親指サイズの小瓶が浮かび上がる。
「なんだこりゃ?」
その小瓶の中には小さな炎が揺らめいている。
「これはっ……!?」
ライラックが声を上げる。
「アレですよねシュマお嬢様!」
「そうです! これはアレです」
二人で手を取り合って喜んでいる。
アレじゃ分かんねえッスよ?
「これはですね、原初の炎といいまして……誰でも一度だけ、火炎系最高位の魔法『アブソリュートフレア』を放つ事が出来るマジックアイテム」
「アブソリュートフレア……それは、地上に存在するすべての物を焼き尽くす。山一つをマグマと変えることが出来るとか……」
アブね~な! なんてもん寄越すんだよ!?
あれか、自由の女神、選ばなかった腹いせか?
つ~かお嬢様とライラックが読んだ本ってどんなの?
ふむふむ『女神様と逝く異世界道中記』だって? 逝くの字それであってるのか?
何々、とらっくというモンスターにやられた異世界の勇者が、女神に導かれ、生まれ変わって世界を冒険する内容だと。
……ちなみに作者名は? ほう、アイム・ゴッド……だと。私は神ですか?
あんの女神、本とか出版してやがったのか……
後で見とくかぁ。ちなみにソレ売れたの?
えっ、まったく売れてない? 一部のマニア層にだけ?
まあ、そりゃそうか。そんな話されてもこっちの世界じゃ売れないだろう。
「これが神器ですかい」
あっ、スカウトさんの頭の旗が赤から白に変わってら。
白ということは中立か?
神器とったからどうでもよくなったのだろうか?
「しかし一回だけですか……いや、ここにいる人数分あれば……」
と思ったら赤になったり白になったり点滅を繰り返している。
「お嬢様、コレ、誰でも使える?」
「いいえ、これはただのシンボルですわ。実際は各々の体に付与されていると思ってください」
こういった攻撃魔法系の神器は、物自体はシンボルのようなもんなんだと。
実際はダンジョン攻略者自身の体に魔法が付与されているらしい。
別にこの小瓶は売っても、人にあげても問題ない。ただその攻撃魔法を授かったという記念らしい。
発動条件は普通の魔法と同じ。魔力を練り上げ呪文を唱えるんだって。
ちなみに魔法を使うと瓶の中の炎は消えるらしい。
「おいおい、魔力を練り上げてって、そんなの魔術師にしか使えな・いや、なんだ! 頭の中に魔力の練り上げ方が浮かび上がって……」
「ちょっと待て! こんなとこで使うなよ! せっかくの財宝がパアになるだろ!」
「お、おおう」
おっ、スカウトさんの旗が白に落ち着いたな。あの人、神器が目当てだったのか。
「えっ、普通の魔法の呪文を教えて欲しい? いいですわよ」
タンクさん達がシュマお嬢様に魔法の呪文を聞いている。
そうか、魔力の練り上げ方が分かったって事は、他の魔法も使えるって事なのか!?
つ~ことは……オレも魔法が使えるんじゃ!?
オレもその輪に入っていく。
『ファイアー!』
ボッとオレの手からライター並みの炎が現れる。
おおおっ、これが魔法か! 随分小さいが……きっとこれから大きくなるに違いない!
……タンクさんの手からは火炎放射が発せられているが。
「魔石を使ってそれだけ? ……セイジはやっぱり魔法の適正はないようですね」
そんなぁあ……
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