第3話 初めての…選択

 それはオレが、一匹のウサ公を仕留め、町へ戻ろうとしていた時だった。

 なにやら門の方で言い争う声が聞こえる。


「落ち着けバルドック! 俺達はここを守らなきゃならねえ。それに言っちゃ悪いが……あいつらは孤児だ」

「しかし! 町の住民には代わりはないだろう!」

「孤児は……住民として扱われない」


 孤児達がどうかしたのか?

 オレはウサ公を担いで門の中に入っていく。


「セイジ……そうか、お前なら。頼むセイジ、孤児達を助けに行ってくれ!」


 門番の人がオレにそう言ってくる。どういうことだ?


「無茶言うなバルドック! 聞かなくていいぞ」

「孤児達の集団が森に入ったきり帰って来ない」


 なんだって!?


「兄ちゃん! みんなが! 皆が帰って来ないんだよ!」


 孤児の一人がオレにしがみ付いてくる。

 なんで森になんて行ったんだ!?


「だって最近、兄ちゃんがウサギとって来ないから……前みたいに森で採取するしかなくて」


 聞けば、孤児達は常日頃、危険を冒して森で薬草やキノコなどを採取しながら、日銭を稼いでいたらしい。

 大人数で行けばオオカミなどのモンスターも襲って来ないとか。

 孤児である自分達が生きていくには、それくらいの危険を冒すのは当然だと。


「それはいい、場所は、どこだ!」

「やめるんだセイジ。いくらお前が腕のいい魔法使いであろうとも、森のウルフには敵わない」


 オレは手に持った銃を見つめる。

 あと何発撃てる? どうやって奴らに当てる?


「オレ戦う術、ある。そして、戦う理由、ある」


 オレは孤児達と話をした。孤児達に解体を頼んだ。そして孤児達と笑いあった。それはもう、友人といって差し支えない。

 友人を見捨てるほどオレは落ちぶれちゃあいない!


「そんな甘い考えだと、いつか痛い目をみるぞ」


 そんなことは分かってる。ほんと、こっちの世界じゃまったく甘味がありゃしない。

 食べる物は甘くない、生きる事も甘くない。

 でもね、オレは門番さんや宿屋のお姉さんに助けられた。

 今度はオレが誰かを助ける番だ!


「セイジ、孤児達もバカじゃねえ、きっと木の上に退避しているはずだ。オレがウルフをひきつける、その間にお前が仕留めてくれ」

「了解!」

「あ~、つったく! 分かった、行ってきやがれ! ここは俺一人で守ってみせらあ!」


 オレと門番のバルドックさんは森へ駆け出す。

 オレは走りながら、ひたすら頭の中でシミュレートする。

 確か昔に誰かに聞いた気がする。飛び道具を当てるのには、当たった姿を想像するのが一番だと。

 ウルフを見つける、銃を構える、奴が動く前に当てる……ウルフを見つける、銃を……


 ――バンッ!


「やるなセイジ!」


 そうずっと考えていた所為か、ウルフに出会ったと同時、一匹仕留めることができた。


「向こうだ! あそこにいるぞ!」


 一本の木を無数のウルフ達が取り囲んでいる。

 オレはそれを見たと同時、銃を乱射する。固まっているうちに、とにかく弾をばら撒くんだ。

 これがマシンガンだったら良かったんだが。


 ただ、それが良かったのか、銃の乱射の音に驚いたウルフ達は一斉に森の奥へ駆け出していく。

 孤児たちはそれを見て、木から降りてこちらに走ってくる。


「おい、お前らウルフなんて担いでくるなよ」

「だって勿体無いだろ?」


 その際に、まともに銃を食らって動かなくなっているウルフを引き摺ってくる。

 転んでも、ただじゃおきない奴らだ。


「兄ちゃん、このウルフ食えるかな?」

「お前ら……自分達がピンチだったての知ってるか?」

「それはさっきまでの話だろ? 今はこっちの方が大事だぜ」


 ほんと呆れた奴らだな。

 門番さんもヤレヤレと首を振っている。

 ただ、そんな孤児達も、町に着いて仲間と会うと急に抱き合って泣き出した。


 どうやらヤセ我慢していた模様。

 外で居る間は常に冷静に判断出来るようでなければならない。それが生き残る術である。

 孤児達は、いつも危険な森で活動をしているので、そのおかげで今まで冷静でいれたのだろう。


「お前達、森出かける、言え、オレ、一緒、行く」

「兄ちゃん!」


 どうせウサギ狩りも途中の平原だ。

 それに、森にもいっぱい居るかもしれないしな。

 ただまあ、それにはオレも銃の腕をあげないとな。

 明日からもう少し真剣に取り組まないとダメだな。

 そう決意しているとこに門番さんが話しかけてくる。


「ん、セイジ、お前の持ってるソレ、なんか光ってるぞ?」


 そう言われて、ふと右手の銃を見る。

 オレの持ってる銃がなんか光っていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 なんだこりゃ?

 オレは宿屋に戻って、ひたすら銃を確かめている。

 なんで光ってんだ?

 なんか、へんなとこ押したっけな?


「なんだこれ、レベルアップでも・」


 レベルアップと言ったとたん、


「パッパカパー! パッパッパッ! パッパラー!」

「うるせーぞゴラァ! 今何時だと思ってんだ!」

「うす! すいませ~ん!」


 真夜中にファンファーレが鳴り響く。

 そして目の前に半透明なウィンドウが開いた。

 えっ、レベルアップ? えっ、オレの銃、レベルアップしたのぉ!?


 パネルにはでかでかと『LevelUp!』の文字が。

 そしてその下に『以下のグレードを選択できます』って書かれている。


 グレードA:マシンガン


 おおっ、分かってるじゃないかあの女神! そうだよ、これが欲しかったんだよ!

 これがあれば、あのウルフだって目じゃないぜ!


 グレードB:ミズデッポウ


 はっ? ミズデッポウ? えっ、水鉄砲のこと? えっ、マジで!?

 ……もしかしてあの女神、選択肢、考えるのめんどくさいからって、適当なのにしているんじゃないだろな?

 いやまてよ、実は隠された能力があるとか?

 ほら、放水銃とかウォーターカッターとか、水圧を利用したすげー武器かもれない。


 ……うん、ないない、オレは騙されないぞ。

 よし、


『グレードB:ミズデッポウが選択されました』


 えっ!?

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