第7話
「すごいっ! セイジすごいよっ!」
「うぉおお! おめえやるじゃねえかあ!」
「見直したぜぼうず!」
3人がオレに飛びついてくる。
「つかえないなんて言って悪かったわ。あなたは最高よ!」
そう言ってオレの頬にブチューと口付けしてくるアイラ姉さん。
ありがとうございますっ!
「いやほんと、グリズリーを一人でやっちまうなんてさすが魔法使い!」
そう言ってオレのもう片方の頬にブチューとしてくるバルドック兄貴。
やめてください、やめろっ、いやーー! おひげ痛いッスーー!
「がっはっは、おめえさん、冒険者に向いてんじゃねえか」
そう言ってバンバン背中を叩いてくるヒュッケルさん。
その度に背骨がミシッっていってるような気がする。マジ痛んで勘弁してください。
さんざん3人に揉みくちゃにされるオレ。このグリズリー戦で一番ダメージを受けているのではないだろうか?
「うっ、つ……」
ふとバルドック兄貴が顔をしかめる。
そうして鎧を外し服をはだける。
どうやら熊にいい一撃を貰っていたようで、わき腹から血が滲んでいる。
「よしっ、さっさとポーションで回復してそいつ持って帰るか」
「おお、そうだな」
ヒュッケルさんも足をむき出しにする。
うわっ、ざっくりいってるじゃん。
二人とも瓶を取り出してその中の水を傷口に振り掛けていた。
あれがポーションか。
「ポーション、傷口、掛けるもの?」
「ん、ああ、セイジはポーション知らないのか。別に飲んでもいいぞ、そっちの方がポーションを無駄にせずに済む」
ただ、傷口に直接掛けると治りが早いんだとか。その代わり、傷口以外にこぼれた分は無駄になるので、急がない時は飲んだほうがいいとのこと。
おお、みるみるうちに傷が治っていく。早送りのビデオテープみたいだな。
ある程度傷が治った二人は残りのポーションをグイッと飲み干し、熊さんを二人で担ぎ出す。
「それ、持って帰る?」
「ああ、これだけ大物なら素材だけでもそこそこの金になるぜ」
「運び代ぐらいは分けてくれや」
なるほど、モンスターを狩って売るってやつだな。
ただまあ、穴だらけなんでおせじにも状態はいいとはいえないが。
「なあに、穴が空いてるっていっても使いようは幾らでもあらあ」
そういえば劣化ウラン弾だが、そのままにしておいてもいいのだろうか。確か放射線とか出てるんじゃ?
回収しようと辺りを見回して見たが弾が落ちていません。
そういえば、オレが撃った後の弾って見た事ないな。
弾自体、魔法のようなもので出来てるから、暫くすると消えているのかもしれない。
と、血の匂いに釣られたのか、オオカミが森のあちこちからこっちを見ている。
「セイジ、見てなさい。さっきは私が役にたちませんでしたけど、こっからは私の出番ですわ」
そう言って矢をつがえるアイラ姉さん。
ひとつ短く呼吸をしたかと思ったら、次々と弓を引き絞っていく。
その全てがオオカミに突き刺さっていく。
相手が動いていようとお構いなしだ。
まるで流れ作業がごときお手並みである。
オレも援護する為に何発かぶっ放すが、まったく当たりません。
なんでそんな簡単に当てられるのですか?
アイラ姉さんはドヤ顔でオレに言ってくる。
「セイジは魔法使いとしては一級品でも、狩人としては三流もいいとこね。いい、相手の足をみなさい、次に目をみるの。そうすればどう動くかがある程度分かりますわ」
分かんねーよ! そんな経験則に基づく説明をされても困ります。
アイラ姉さんは困った子ねって目をして色々説明をしてくれる。
うん、弓と銃は扱いが大分違うが同じ飛び道具、勉強にはなる。
最初は5発に1発ぐらいだったのが、町に帰り着く頃には3発に1発は当たるようになってきた。
つ~か、オオカミ多すぎだろ、道中ひっきりなしに襲って来たぞ。
「魔物の肉ってのは獣にとってご馳走でもあるからね。獣を誘き寄せるのに魔物の血を使う狩の仕方もありますのよ」
もう、この熊おいていこーぜ。
ただ、その甲斐あってか、道中で銃がまたしても光り始めた。
今度は経験値が溜まったんだろう、今度こそ失敗しないようにしないとな。
宿屋に帰って、じっくりと選択する事にしよう。
「ほんとうに構わないのか?」
「オレ一人、無理だった。皆、力」
いつもの引取り所に着いて換金が済んだあと、結局4等分に報酬を分ける事にした。
バルドック兄貴は、オレが一人で倒したようなもんだから全部もってけって言ったんだけど、倒しても持って帰れなきゃただのゴミでしかない。
そのゴミをお金に換えれたのは、ひとえにバルドック兄貴とヒュッケルさんのおかげであり、アイラ姉さんのおかげで道中のオオカミも撃退できた。
しかも、オレに射撃のレクチャーまでしてもらって。なのにオレだけウハウハする訳にはいかない。
「セイジ、あんたはほんといい男ね!」
またしてもブチュー頂けました。ニヤニヤ。
「あいつそのうち、女で身を滅ぼすんじゃねえのか?」
「それもまたありじゃろうて」
◇◆◇◆◇◆◇◆
さてと、今回は失敗しないようにしないとな。
宿屋に帰り着いたオレは銃を机の上に置く。
そうして『レベルアップ』と唱える。
「パッパカパー! パッパッパッ! パッパラー!」
「ウルセーつってんのが分かんねーのかゴラァ!」
「うす! すいませーん!」
お隣の人に謝りながら銃の上に現れたウィンドウを見やる。
さあ、今回はどうなっているか。
タイトルの文面はミズデッポウの時と同じ『以下のグレードを選択できます』ってやつだ。
やはり経験値によるレベルアップのようだ。
そしてその選択肢だが、
グレードA:ハナビ
…………うん、まあ、そういうのもアリかな。ミズデッポウよりましかな? もはや、ネタルートは定番なのかな?
そしてもう一つは、
グレードB:ライフル
おおっ、これだよ、これが欲しかったんだよ!
長射程で反撃を食らわない位置からのワンポイント!
こいつがあれば、熊だろうが、オオカミだろうが、敵を寄せ付けず殲滅が出来る!
よしっ、
『グレードA:ハナビが選択されました』
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