第39話
オレはバナナの皮を剥く。
うんめえぇええ、懐かしのお味やぁ! えっ、若旦那もいる? どうぞどうぞ。おっ、これ何本でも出せるのか。
って、なんでやねん!
オレは思わずバナナの皮を地面に叩きつける。
なんでバナナなんだよ!? 確かに弾倉にバナナ型弾倉というものがあると聞いたことはあるが、本物はねえだろう!
あんの女神、漫画の読みすぎじゃねえのか! ハアハァ……ハァァアアア。
どうやら画面の下の方に、見えないくらいの小さな字で3つ目の選択肢があった模様。
なんちゅ~とこにネタルートを隠しとんじゃ!
つ~ことはあれか、トゥーハンドガンもレールガンもネタじゃなかったと? どうしてもネタルート入れたかったから、分かりにくいとこに、こそっと乗せたと?
なんでオレはそんなの引くんだよ!
自分で自分に当たるオレ。もっとよく見てから触れればよかった……どうしよう、バナナでアサシンを追い返せるかな? まあ無理か。
次のレベルアップいつかなあ……またスケルトンドラゴン倒しに行くかなあ……
「セイジっ! これはすごい食べ物じゃないか!」
なにやら若旦那が興奮されている模様。
「味もさることながら、食べると魔力が回復している!」
「えっ!?」
えっ、このバナナ、魔力回復のおまけがついてるの? えっ、つ~ことはオレ、永久機関を手に入れたってこと?
銃を撃つ、精神力? が減る、バナナを食う、精神力? が回復。という。
こりゃええ、これでいくらでも特殊弾がぶっ放せるじゃぁあ、ありませんか~!
などと、そんな都合のいい話はありませんでした。
バナナ、胃袋もういっぱいでござる。
ポーションと同じで、腹に入るだけしか食べられないッス。当たり前か。
「確かに腹に入るだけ、という制限はあるが、魔力が回復できるっていうのは魔術師にとって喉から手が出るほど欲しいだろう」
「これ売る、儲かる?」
「そりゃもうな」
そっか~、バナナ売ればいいのカ~。
あっ、でもこのバナナ、オレが離れたら消えないかな?
消えないな。そういや水鉄砲の水やポーションも消えてないしな。
つって待てや、バナナ長持ちしね~だろ? 売れね~ジャン!
腐って腹壊したってクレーム来たら堪らん。
「これ、長持ち、しない……」
「あ~、そういう欠点があるのか~」
「長持ちしないってどれくらいですの?」
しょんぼりするオレにハルシアお嬢様が問いかけてくる。
確か、常温で2、3日だったか。
オレがそう伝えると、
「十分じゃありません? 売ることは難しいかもしれませんが、落ち込む程じゃないでしょう。ダンジョン攻略にはとても役に立ちます」
確かに。精神力? が尽きてもバナナ食えば戻る。
一応バナナ出すのにも精神力? が必要だろうが、それ以上に回復しているっぽい。
しかもバナナ、よく噛んで食べれば結構腹に詰め込められる。
味も申し分ない。自分で使う分にはいうことないな。
よし、ちょっくらこのダンジョン、攻略して帰りますか!
「バカ言ってんじゃないよ」
ですよね~。
さすがに、何も準備していない状況は無理があります。
しかもこのダンジョン、広さはこの国一とか。
「それじゃ、れべるあっぷ? とやらも済んだようだし、そろそろ出るか」
「うす」
しかしながら、せっかく付き合ってもらったにもかかわらず成果は無いも同然。
なにせバナナじゃ、アサシンさん追い返せないし。
本来の目的は達成できぬまま。とはいえ、また一からレベル上げるとなると1日、2日の問題じゃないしなあ。
と、悩みながら戻っている道中、ダンジョンの中でテーブルを広げて寛いでいるお方を発見するのだった。
それを見た瞬間、ハルシアお嬢様が若旦那を庇うように後ろに下げる。
オレもフォルテの前にでる。
「おやおや、いきなり臨戦態勢ですか?」
そこに居たのは、あの王太子の妹君、オレの命を狙っている当のお姫様だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「このダンジョンには王宮からの隠し通路がありましてね、こうやって、いつでも近道出来るようになってますのよ」
「……出来れば聞きたくなかったね、そんな話」
ハルシアお嬢様が真っ青な顔でそう答える。
隠し通路があるなんて、そんなこと簡単に話していいものなんだろうか?
ああ、話しても問題ないと踏んだんだろうな。ここから帰さなければ問題ないもんなぁ。
「さて、そこの小さな英雄さん。追い払ってくれるのでしょ? よく見せてもらいましょうか」
そう言ってクスクス笑うお姫様。ほんと性格が歪んでるよ。
お姫様の前にいる女性が武器を構える。
見た目はツインダガーだが、やけに長くて曲がってるな。
「まさかセイジの話が本当だったとはね……ハルシア! セイジとフォルテを連れて逃げるんだ」
『レイドシールド!』
若旦那の前に無数の半透明な盾が出現する。
「さすが英雄! みごとな数の盾ですわね。ふふっ、盾が意味無いとよく分かりましたね」
盾が意味無い?
「あのダガーは神器だ。どんな盾であろうとも一撃で切り裂く。だが、盾一枚で一撃は防げる」
なるほど、盾の数だけ攻撃をかわせるという事ですね!
さすがは若旦那!
姫様もパチパチと手を叩いている。
「だから、今のうちに逃げるんだ!」
「ですが甘いですわね」
次の瞬間、オレ達の間を何かが通り過ぎたかと思ったら、若旦那の盾がすべて砕け散った。
姫様の前にいた女性が消えている……
一瞬にして若旦那の盾をすべて潰し、オレ達の後ろを取られた……
マジか、そんな人間が……
オレは、恐る恐る後ろを振り返る。
あれ? 居ないぞ。上か! 居ないな? あれぇ?
あっ、なんか奥の方に壁にめり込んでいるお方が……
ああ、バナナの皮で滑ったカ~。
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