第39話 宅急便事業

 ダンジョン第2階層制覇。

 もうここにはモンスターは湧かない。

 マップスキル持ちに確認してもらったから、間違いない。

 リスポーン地点はマップスキルで確認できる。

 第3階層の分譲は既に始まっている。

 今日はモデルルームにお邪魔した。


 ああ、ダンジョンの壁に窪みを作ったが、そこにモニターをはめ込んで風景の映像を流している。

 風景が見れなくても寂しくないな。

 ただ作り物感があるので、そこのところどうなのだろう。

 見る角度によって映像が変わるような仕組みにしたら、もっと良いはずだ。


 第3階層の住居は人気がない。

 香川かがわさんもそれは分かっていたらしい。


「キノコ農園の分譲よりは稼げます」

「うんうん、そうかもね。付加価値を作ろうか。ダンジョンのゴミ収拾機能を弄って埃なんかを吸収させる。掃除要らずだ。ダニアレルギーとも無縁になるかもね」

「それは良いですね。ご足労掛けますが」

「オプションでそういうのを設定しよう。月額いくらで取るんだ」

「永遠に儲かりますね。キノコ農園も月額にしたらよろしいのでは」

大船おおふねさんは自分の物だと愛着が湧いて大事に使う。たとえ畑と言えどもなと言ったよ」

「あの男らしいですね。水道もダンジョン機能で出来ますよね。市価の半値が実現できそうです」

「水道は美味しいね。リフォームスキルの手間が掛かるけど」

「ガスもダンジョンから湧くようにできたら良いのですが」

「できるかも。トラップに毒ガスがある。あれの毒を抜いたら、燃えないかな」

「色々と実験してみましょうか」



 水道ガスは行けた。

 驚くことに電気もだ。

 感電トラップまで、ダンジョンにはあるらしい。

 インフラの代金が丸ごと懐に入るじゃないか。


「道路をダンジョン化してますよね。それにこれらの機能を付けれますか」

「できるけど。俺の仕事が膨大になる」

「できる範囲で少しずつやっていけばいいのではないですか。やらないという選択肢は絶対にありません!!」


 凄い食いつきっぷりの香川かがわさん。

 エネルギー事業か。

 ガスは別にいいと思う。

 プロパンなら小さい業者もある。

 ただ区は都市ガスなんだよな。

 地中を配管が通っている。


 合弁会社だな。

 まあ、香川かがわさんが上手くやるだろう。

 彼女は有能だ。


 水道も区でやってて赤字だと言われている。

 赤字なら構うことはないか。

 範囲は徐々に広げていこう。


 尻手しって健康食品の業績はガタ落ちだ。

 なんで分かるかと言えば企業の業績の情報を集めている会社がある。

 なので分かってしまうのだ。


 頼みの綱はキノコチップスだけになったらしい。

 キノコの取引契約が切れるのはあと一ヶ月。

 その時全てが決まる。

 刑務所にぶち込みたかったが、会社を乗っ取るだけでよしとしよう。

 その前に何かやらかしそうではあるけど。


「まずは俺の家からやって貰おう」

「分かりました、手早くやりましょう」


 まずは水道だ。

 水道管をダンジョンに繋ぐ。

 ダンジョンの方はぼどぼどの圧力で水を出した。


 蛇口をひねると水が出た。

 飲むとカルキ臭くない。


「あれっ、カルキがないと不味いのでは」

「基準に到達してれば大丈夫です。地下水とか汲み上げて供給している所もありますから」

「そうか、そうだよね。しかし、カルキ臭くない水は良いかもね。評判になりそうだ」

「ガスは悪臭をつけて下さい。ガス漏れが分からないと大変なことになりますから」

「ガスのトラップは悪臭付きと」


 ガスの工事も行われて、大丈夫なのを確認。

 電気の工事は少し大掛かりだった。

 直流を交流に直さないといけないらしい。

 そのための機械を設置した。


「これで夢の光熱費ゼロ円生活だ」

「お小遣い程度の金額ではなかったのですか」

「日々の小遣いは月に1万円ときめているから。光熱費は1万5千円も取られるんだよ。小遣いの1.5倍だ。高いよね」

「なんと言ったら良いか。安いのでは、エアコンを付けると月に電気代で2、3万はいくと思うのですが」

「節約してたんだよ。何となくそうしないと、浪費癖が大きくなっていくような気がして」

「月に1億ぐらい使いましょうよ。経済を回さないといけませんね」

「じゃあ匿名で寄付する」

「税金対策にはなりませんが」

「良いんだよ」


「銀行を通したら証拠が残ります。宅急便で札束を送れというのではないでしょうね。宅急便も証拠が残りますよ。まさか、郵便ポストに入れたりしないですよね」

「匿名の寄付も大変だな。物で送ったらいいじゃないか。ランドセルを送ったタイ○ーマスクというのが昔流行っただろう」

「それよりもっと良い手があります。冒険者登録されてますから、リフォーマーの名前で寄付しましょう。犯罪捜査でもない限り、ハンター協会は情報を漏らしません」

「リフォーマーのハンター口座ね。了解、それでいこう」


 孤児院とかその手の施設に、リフォーマーが寄付した。

 手続きをしたのは香川かがわさんなんでどこに送ったかは、見なかった。

 振込用紙の束を渡されたので印鑑を押しただけだ。


 世の中が良くなると良いな。

 ハンター協会はこの際だから、宅急便もやってほしい。

 そうすれば匿名で品物を贈れるのに。


 ああ、そうだね。

 無ければ作るんだ。

 電気充填スタンドも作れる。

 車のガソリン代が減れば、コストカットできる。


香川かがわさん、宅急便の会社を作りましょ。電気代が無料だから」

「いつも通り会社を吸収していくのですね」

「ブラックはだめだよ。コストカットの分は人件費に充てて」

「かしこまりました」


 仕事がどんどん増えて行くような気がするが、社会のためにはなっている気がする。


「ああ、ポータル使えば、車要らないじゃん」

「そちらは併用ですね。車の利点もありますし」

「例えば?」

「ポータルですと車より長く歩くことになります」


 ああ、ポータルってバス停の間隔ぐらいだから。

 運搬専用ポータルを作れば車要らないな。

 でも100メートルおきぐらいにポータルを設置するのは骨だ。

 全国なんかになったら死ねる。

 確実に過労死する。


 でも魔力が上がって荒業も出来るようになった。

 真っ直ぐな道だと、200メートルはリフォームできる。

 魔力が1万もあれば1キロメートルはいっぺんにリフォームできる。

 やっぱりレベル上げしかない。

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