第12話 傘下企業
親会社を作ることになった。
ダンジョン分譲コーポレーション、略してダブコー。
株主は俺だが、社長は
いまのところ傘下の企業は
魔力スパリゾート。
ダンジョン不動産。
この3社だ。
魔力スパリゾートとダンジョン不動産には雇われ社長がいる。
俺は1株主なのでその人達とは会わない。
朝テレビを点ける。
「今日も元気にパリポリ、キノコチップス好評発売中。ダンジョンキノコ100%」
もしかしてうちのキノコを使っている。
何?
許せん。
「こんなの取引中止だ」
「坊主、そこと何があったか知らないが、いまこちらから契約破棄すると違約金をたくさん取られるぞ」
「でも」
「いいか違約金を払った場合。うちは違約金で損。取引先は先がなくなるが、年間で得る利益ぐらいは違約金で埋まる」
「破棄すると相手が得をするんだね」
「破棄しない場合。うちはキノコを売ったお金で儲かる。取引先が儲かる金額は違約金の値段ぐらいだ」
「どっちにしても違約金の値段は儲けさせちゃうってこと」
「だな」
「契約が切れるのは何時?」
「1年契約だから、約8ヶ月後だな」
「なるほど、じゃあ契約の延長はしない。
「増産してくれと声があったが、契約の数量しか卸せないと言ったら良いんだな」
「うん」
「まあ、少し安値で買われるが、ポーションの製造会社に卸すとしよう」
「いけね。学校に行かないと」
学校に行って教室の扉を開けて、おはようと言うと何人かが返してくれた。
不良も登校して来たが俺と目を合わせない。
「バイトしてみないか」
俺は不良に声を掛けた。
「俺に構うな」
「お前、カツアゲしているところをみると金がないんだろ」
「いいから構うな」
「率の良いバイトなんだけどな」
「違法な奴か。まさかハンターじゃないだろうな。ハンターならやってもいい」
「ダンジョンの中の仕事だよ。キノコ採りだ」
「糞っキノコ採りかよ」
「まあ騙されたと思って」
「騙されるか。とにかく構うな」
「力ずくで連れて行くよ」
「それって虐めじゃないのか」
「更生だよ。虐めじゃない」
「くっ、屁理屈を」
「でも、魔法契約って信じてれば、引っ掛からないから」
「分かった。俺の負けだ。行ってやるよ」
放課後になった。
不良を伴いポータルのある倉庫に入る。
カードを扉脇の機械に差し込むとカチャっと音がしてロックが解除された。
「何でポータルが地上にあるんだ?」
「地下マイナス1階だよ」
「地下マイナス1階って結局地上だろ」
「さあ、入った入った」
ダンジョンの一階に転移する。
「かび臭いな」
「おお、坊主共、来たな」
「
「おう任せとけ」
「坊主じゃない。
不良の名前は
入学してすぐに色々あったからクラスメートの名前は覚えてない。
特に話さない人は。
ああ、ぼっちだから全員か。
自虐ネタを脳内で展開しても面白くない。
俺はセーフゾーンの拡張だ。
魔力使いきったら、ひとっ風呂浴びて、魔力回復して、また拡張工事。
まあ2時間の労働だから文句は言うまい。
拡張工事を終えて、
「見ろよ、でかいのが採れた。俺のが一番だ。なあクマ耳共」
「きゅい」
やっぱりこいつはストレスが溜まってたんだな。
「
「親の仲が悪くて離婚寸前なんだとよ。昔の俺を思い出して居た堪れなくなるぜ」
「親が原因か。いるだけましだよ。俺なんか夫婦喧嘩しても良いから生き返ってほしい。たまにお墓に行って骨壺にスキルを掛けたい衝動に襲われる。もう時間的にも状態的にも無理だと分かっているのにね」
「そうだな。いっそのこと俺の養子になるか」
「ありがたいけど名字は変えたくない。親が残してくれた物だから」
「そうだな」
第2階層の探索に出発。
この日は新しい発見はなかった。
いいや草を何種類か採取してきた。
きっと薬草もあるに違いない。
それにしても
ぎゃふんと言わせたい。
ホームページで
主な商品はキノコチップス、薬草青汁、ポーショングミの3つだ。
3つともダンジョン素材を使っている。
となれば、ライバル商品をうちで出すと面白いかもな。
キノコチップスは材料が1年後、うちから安く入らなくなるから、自然と潰れるな。
薬草青汁、ポーショングミは、うちのダンジョンの素材でも作れるだろう。
うちが良いのはハンターに依頼しなくても大量に素材が手に入ることだ。
スーパーで売っている野菜並みの値段で採取できるだろう。
「お呼びですか?」
「健康食品会社を作れ」
「かしこまりました」
「手始めに薬草を使った青汁だな」
「それでしたら。水もダンジョンで湧き出る物を使ったら、さらに効果倍増です」
「ポーションを練り込んだグミは作れるか?」
「現在キノコから、ポーションを作ってますから、作れると思います」
「
「できると思います。材料費がただみたいな物ですから。製造するなら化粧品も良いですね」
「好きにやれ」
「はい」
いまのところダブコー傘下の企業は、
会社を親会社を含めて6つも持つ身になるとは思わなかった。
でも虚しさもある。
両親が生きていたら喜んでくれただろうな。
笑顔が頭に浮かんだ。
なぜか涙が溢れて止まらない。
この心の穴はどうやったら埋まるのだろう。
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