第29話 鬼っ子

 第2階層の高級別荘は売り出されている。

 モデルルームに入ると、良い木の香りがした。


「総ヒノキです」

「何もダンジョンの中に別荘を持たなくても良いと思うけど」

「PM2.5、杉花粉そのようなものはこの空間には存在しません」

「花粉症の人は良いかもね。でも杉花粉が少ない海外に行けば」

「緊急事態が起こった時に都内にいるのは利点です。転移罠で地方都市まで飛べることですし」

「そうなんだけど、なんか釈然としないっていうか。すっきりしないんだよな」


「一番の利点は、スタンピードゲートが現れないことです。今までダンジョン内に現れた記録はありません」

「それは重要かもね」

「一般人にモンスターはきついよね」

「お金持ちはパワーレベリングする傾向がありますけど。そういう施設をこのダンジョンに作れたら」

「駄目だ。モンスターと言えども死は許容できない」

「そうおっしゃると思いました」

「2度と言うなよ」

「はい肝に銘じます」


「ところで、ガス水道電気がダンジョン内に通って良かった」

「はい、普通なら無理ですね。リフォームスキルならではです」

「キャットラビットは受け入れられているようで良かった」

「はい。スパリゾートの客や別荘地の住人に可愛がられてます。草食なのもよろしいかと」


「ゴブリン妖精とオーク妖精も放してみようかな」

「人型は忌避感があるかも知れません」


 うーん、2足歩行だとどうやっても人型になる。

 ゴリラスタイルとかできるけど、あれも威圧感があるよな。

 短足にしてゆるキャラぽくしてみようか。

 でも肌が作り物の布には見えない。

 となるとかなり気持ち悪くなりそうな。

 ゴーレムのロボットの方が受け入れられるかな。


「試してないのがあるんだ。人間の子供に近づけるなんだけど」

「それはそれで別の問題を生みそうですね。勘違いした人が彼らに人間と同じ待遇をとか言いだすかも知れません」

「モンスターだと言っても。姿形が人間の子供だとそうなるかも」


 難しいね。

 人間の子供の姿でペット扱いはさすがに不味い。

 押して駄目なら引いてみな。

 ホーンラビットは角を取ってモンスターから、ペット枠になった。

 人間の子供に角を付けたら、モンスター枠にならないだろうか。

 そしてモンスター枠になったとしても子供の姿なら、威圧感もない。


 鬼っ子ゴブリンと鬼っ子オーク。

 さっそくやってみた。

 緑の肌に可愛い子供の姿で二本の角。

 肌色の肌にぽっちゃりした子供の姿に二本の角。


「どうかな」

「角があるので人間だとは認識されなそうです。かと言って狂暴だと見られることもないでしょう」


 こういうのが歩いているとダンジョン感があるよね。

 女子高生が鬼っ子ゴブリンと鬼っ子オークを見て寄って来た。


「可愛い。写メ撮って良いですか」

「うんいいよ」

「可愛い。はいチーズ」

「ぐきゃ」

「ぷひっ」


「動画も撮っちゃおう」


 見物人が寄って来た。

 みんな喜んでいる。

 可愛い子供の姿だからね。


 ゴブリンとオークが余ったら、鬼っ子にしよう。

 鬼っ子ゴブリンと鬼っ子オークは見物人から菓子を貰って食べている。

 モンスターだから腹は壊さないと思うけど、病気になったりしないよね。

 ああ、魔法静物だった。

 動く物なんだよね。

 もし病気になってもリフォームしてしまえば済む話だ。


 きっとスパリゾートの客とかに一杯食べ物を貰うんだろうね。

 さて、今日は香川かがわさんがミスリルゴーレムと対戦だ。


 ミスリルゴーレムを探して第5階層を探索する。

 出てきたクレイゴーレムとアイアンゴーレムはミスリルロボットゴーレムが蹴散らした。


 ミスリルゴーレム発見。


「では行きます。【カリキュレイト】【ブリット】」


 ミスリルゴーレムは魔法で盾を作る。


「計算してました」


 魔法の盾は魔弾に当たって砕け散った。


「【カリキュレイト】【ブリット】チェックメイト」


 魔弾がミスリルゴーレムのコアを撃ち抜く。


「こんなところですね」


 強い、強すぎる。


「普段、カリキュレイトを使ってないけど、何か弱点があるの?」

「少し疲れるんです。疲労は判断を鈍らせます。多用はできません」

「なるほどね」


 隙を少なくか。

 勉強になる。

 俺も上にいくなら隙を作らないことだな。

 普段の討伐はミスリルロボットゴーレムにやらせるぐらいが良いのか。


 腕を出してデスサークルを嵌めてたけど、ミスリルロボットゴーレムにやらせた方が良いな。

 自分でコントロールできないと少し不安だけど、ミスリルロボットゴーレムがやられたところでそれほど痛くない。

 復活できないと心にくるけど。

 前よりも強くなったから。


 クレイロボットゴーレムを第2階層に放つ。

 クレイロボットゴーレムは、泥で作ったロボットみたいに見える。

 うん、雪祭りみたいな感動がないね。

 色か、色が不味いのか。

 リフォームで染料を混ぜれば着色は可能だ。

 ただ元の泥の色が消えないから汚い色になるけど。

 赤なんかだと結構良い感じかも。

 メタリックも良いな。


 クレイロボットゴーレムは大人気とはいかなかったが、一部の子供には受けた。

 実写のロボットアニメだからね。

 そう思ったら、大人も動画を撮っている。

 好きな人には刺さるんだろうな。


 アイアンロボットゴーレムは放さない。

 腕が当たったりしたら大惨事だからだ。

 クレイだと鉄の塊よりは良い。

 ゴーレムの方が凹んだりするからね。


 名物ができたようで、香川かがわさんが喜んだ。

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