第63話 立てこもり事件

 ブラックフェンリル所属のハンターが大挙して俺のダンジョンに侵入した。

 だが、リフォームしたモンスターに敵わず、撤退というか立てこもった。

 リフォームしたモンスターのレベルは上がり続けているから、最古参のクマ耳モンスターはかなり強い。


 さて、第2階層の別荘に立てこもったこいつらをどうするかな。

 警察がきて銃撃したが、レベルが上がったハンターはしぶとい。

 またひとりと警官が死んで、俺はその人達をリフォームした。

 そして下がらせた。

 警官は全員死んで、リフォームして生き返った。


香川かがわさん、狙撃して。嫌な任務を押し付けて悪いね」

「構いませんよ。私はもう人ではないのですから。【カリキュレイト】【バレット】」


「ぐっ」


 ブラックフェンリルのハンターが一人死んだ。

 警官が死体を運んで来る。


「【リフォーム】生き返り。お前は元仲間を油断させて捕獲して」


 ブラックフェンリルのハンターは元仲間に捕らえられて俺達の下に連れて来られた。

 香川かがわさんが容赦なく心臓を撃ち抜く。

 俺は吐き気を堪えて、リフォームした。

 やがてブラックフェンリルのハンターは全員がリフォームされた。

 そして大人しく逮捕されて行った。

 リフォームされた人は多数出たが。

 死んだ人はいなかった。


 リフォームした警官が、元ブラックフェンリルハンターの供述を報せてくれた。

 ええと、尻手しってがダブコーに恨みがあるからここを武力で奪ってやれと計画を立てたらしい。

 まあ俺とは不倶戴天だからな。


 債権者集会に俺は行ったが、俺がダブコーのオーナーだとは思ってないらしい。

 尻手しっての会社のあくまでも一株主だと思っている。


 俺がダブコーのオーナーだと判るのも時間の問題だな。

 藤沢ふじさわに危害が及ばないのなら良いけど。


 ブラックフェンリルは配下のハンターが勝手にやった。

 知らないと言っているようだ。

 裁判でも何でもどうぞらしい。


 第2階層に警察ができた。

 それと警備会社を作った。

 ダブコー警備という名前。


 高ランクハンターを高い金で雇っている。


「また襲撃があるかな」

「あるでしょうね。ここを占領できれば、スパリゾートのお金だけでブラックフェンリルが食っていけますから」

「クマ耳モンスターが強くなっているなんて知らなかった」

「どうやら、体が大きくなるとレベルも上がるらしいです。削ってますが、レベルダウンはしないようです」

「ドラゴンとかも強いんだろうな」

「ええ。ふわふわドラゴンは、良い番犬になりそうです」


「警備会社は必要なかったかな」

「いいえ、モンスターだけでは世間が納得しません」

「だろうね」


 久しぶりにキノコ農園に行ってみたくなった。

 元不良の本郷ほんごうとキノコ採りに精を出す。


「【リフォーム】キノコ切り離し。籠入れ」


 培地からキノコが切り離され、培地が変形して、キノコを籠に入れる。


「便利なスキルがあって羨ましいぜ」

「ダンジョンでモンスターは倒さないのか。倒せばスキルを手に入れることができるかもな」

「自分の分はわきまえている。俺なんかちょっと強い不良止まりだ。人外になれるほどの才能はないのは分かってる」


 本郷ほんごうは落ち着いたな。

 荒れていた昔が嘘のようだ。


「アトラクションの券をやろう」

「野郎と行くのはちょっとな」

「女の子、誘えよ。不良っぽいのはもてる。陰キャの俺みたいなじゃないからな」

「お前、自覚ないのか。最近、女子で話題になっているぞ」

「えっ」


「頭の良い奴もモテるんだ。お前、筋肉凄いだろ。体育の着替えを女子に撮られているぞ」

「そうなのか」

「おまけに頭がいいだろ。モテないわけがない」

「でも、交際の申し込みはないな」

「まあ陰キャスタイルが嫌いって子が大半だ。前髪を切る気はないのか」

「ないね」

「勿体ないな」


 大船おおぶねさんとキノコ尽くしで夕飯をとろうと誘いに行ったら、大船おおぶねさんは若い女性達に囲まれていた。

「悪いな。今のところ誰とも付き合うつもりはない。俺はバツイチだからな。子供もいる」

「それでも別に良い」

「そうそう。我慢できる」

「バツイチぐらいの方がいい」


「悪い。サインぐらいはするけどもな。じゃな」


 大船おおぶねさんも人外の美を纏っている。


「再婚する気はないの?」

「ないな。坊主と一緒に暮らしている今の生活で満足だ」


「酒とギャンブルの誘惑からは抜けられた?」

「それとは今も戦っている。リフォームされてもこれだけは治らないらしい。ただ以前よりはましになった。酒を見ても手が震えないし、吸い込まれるような誘惑も感じない。ギャンブルもだ」

「じゃあ、元の奥さんと縒りを戻したら」


「芸能人になってから連絡があったよ。テレビを見たってな。だが、そういう話は出なかったな。息子には恨まられずに死ねそうだ。それなりの大金を送ったからな」

「そうなの」

「悲しそうな顔するなよ。大人には色々とあるんだ。一度壊れた物はなかなか直らない。一生治らない傷もある」


「うん、俺も死への嫌悪感は完全には治らないような気がする」

「ましになっただけでも喜ぶべきだな。俺もお前もな」


 心の傷は簡単には治らない。

 大船おおぶねさんは今も依存症と戦っているらしい。

 リフォームにも限界があるってことを強く思った。

 心までリフォームしたら、もはや別人なのだから仕方ない。

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