第65話 砂の瓶詰

 第9階層は砂漠だ。

 ここのモンスターは砂の中に隠れている。

 最初に出会ったのは、メタルスコーピオン。

 金属の甲殻を持つ蠍だ。


 まあ、オリハルコンロボットゴーレムに毒は効かないので、サクッと倒した。

 毒持ちと接近戦するほど馬鹿じゃない。


 問題は索敵だな。

 リフォームスキルでの代用も出来るけど、他に手段が欲しいところだ。

 ちなみに香川かがわさんのマジックビジョンは、砂全体がダンジョンなので魔力を帯びていて、隠れているモンスターは分からないそうだ。

 最初の方の階層では、ダンジョンの床下のトラップも分かったのに。

 まあ、それだけ魔力濃度が濃くなっているということだ。


 拝島はいじまさんの予見スキルでも何とかなるが、こちらも何分も後を予測すると魔力が空になる。

 進むには魔力補充しながらとなる。

 実に面倒だ。


 リフォームスキルで地中を把握するのは、広い面積は流石に無理だ。

 こちらも魔力補充しながらになる。


 さあ、どうする。

 奇襲を受けたい訳じゃないから、少し考えることにした。

 ダンジョンは逃げない。


 まず、魔力を含んだ砂だ。

 これで何か作れないか考える。


 クレイロボットゴーレムに砂を食わせてみた。

 サンドロボットゴーレムになった。

 それだけだ。

 失敗もあるさ。


 魔力を含んだ砂ならダンジョン植物の栽培だな。

 砂地で育つダンジョン植物もある。

 ダンジョンの外でダンジョン植物が育てられれば、供給量が上がって商売になる。

 こっちは追々だな。

 あまり期待しないでおこう。


 水槽にこの砂を入れると、ダンジョンの魚が飼える。

 こっちはまあまあかな。

 一部のマニア向けだけど。


 ダンジョンの魚の大規模養殖も考えないではないけど、それほど旨味はないだろう。

 小規模にやらせることにする。


 砂ならガラスが作れるんじゃないかとやってみた。

 魔力がこもった黒いガラスができた。

 魔力がこもっているからって別に特別な用途はない。

 しかも1ヶ月ぐらい経つと魔力が抜ける。

 魔力が抜けるのは砂も同様だけど。


「魔力がこもった砂があるんだけど」


 藤沢ふじさわに経緯を説明、アイデアを求めてみた。


「ふーん、第2階層のスパリゾートに砂風呂でも作ったら」

「ありだね。簡単だから、明日にでもやらせるよ」


「ガラスは綺麗な色でも出たら、アクセサリーとかありだけど、黒だとちょっと」

「ああ、色は変えられるかな。魔力物質の波長を変えれば良いかも知れない」


 魔力と違って魔力物質は砂から抜けたりしない。

 でも、使い道は限られる。


「それならアクセサリーはありだね」


 ガラスは色を変えてありと、メモメモ。


「砂って工業製品向け、それも製作過程に使うみたいだから、美容とか家庭への応用が利かない」

「砂ね。猫のトイレぐらいしか思いつかない」

「消臭効果か。魔力物質次第では可能かも」


 猫のトイレね。

 メモメモと。


「今調べてみたけど、化粧品にも使われているみたい」

「知ってる。開発させているよ」


「コンクリートとアスファルトはどうかな?」

「うん、それも考えた。でも安い。ありと言えばありだけどね。リフォームしたモンスターに採取させればいいから、人件費は掛からない。傘下企業の人員が余ったら、砂採取とコンクリート製造と砂売買会社を始めるかな」


「ダンジョンの砂って名前で瓶詰めして売り出す。お土産に良いかも」

「うん、魔力物質の波長を変えて色を変えたら、ありかもね。簡単だし、それなりの値段で売れる。スパリゾートの売店で売ってみよう」


 考えたら色々とアイデアが出るものなんだね。

 ダンジョンの砂の瓶詰はちょっと盲点だったな。

 そんなの欲しがる人がいるとは思わなかった。

 一般人は入れないものな。


 ああ、良いこと考えた。


 ダンジョンの中で、砂を前にして、リフォーム。

 砂の形をハート形に変えた。


 次は星形。

 三日月形と。

 雪だるま形と。

 五芒星形もいっちゃえ。

 六芒星も。

 十字架も。


 こんな所で良いかな。

 目が良い人が辛うじて見える大きさにした。


 土産物に良いな。

 きっと人気商品になるだろう。


 色は魔力物質の波長を変えることで何とかなった。

 色ガラス製品はそれなりだな。

 既存の色ガラスとの違いがあまりない。


 色々な形の砂が一番高く売れそうだ。

 数は出ないかもだけど。

 数を売るならコンクリートとアスファルで良い。


 別段優れた消臭効果はなかった。

 魔力波長を変えたけど、消臭効果は実現できなかった。

 そんなことだと思ってたけど。


 索敵だけど、機械を使う事にした。

 地中の振動を捉えるのと地中の異物を捉える機械だ。

 こういう技術は既にあるから、作ってもらうのは簡単だ。


 アイアンロボットゴーレムが斥候として、この機械を持って進む。

 そして探知させるわけだ。

 試験したところ、アイアンロボットゴーレムが行っただけで、大半は姿を現すけど、上手くいった。


 科学万歳だ。

 第9階層は制覇したら何にするかな。

 住居は無理そうだし、観光スポットはありだけど、砂を見ててもすぐに飽きるだろう。

 ラクダとかに乗せるとかもありだけど、それだけじゃね。


 ああ、なけりゃ作れば良いんだ。

 蜃気楼を人工的に作ろう。

 蜃気楼を観光の目玉にする。

 見たい人はきっと多いはずだ。

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