第48話 1年経って

 第6階層のボス戦だ。

 クラーケンを上回る敵だ。

 気を引き締めていきたい。


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名前:戸塚とつかつくる

レベル:345/65536

魔力:3653/3653

スキル:1/1

  リフォーム

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名前:大船おおぶねいさむ

レベル:279/65536

魔力:2534/2534

スキル:5/8

  採取

  洗浄

  魔法静物

  鉄皮

  乱舞

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名前:香川かがわ輝美てるみ

レベル:282/282

魔力:3397/3397

スキル:4/4

  マジックビジョン レベル33/85

  ブレット レベル72/116

  リフレクション レベル29/43

  カリキュレート レベル97/97

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名前:番田ばんだ明彦あきひこ

レベル:256/256

魔力:2646/2646

スキル:3/3

  パリィ レベル54/54

  サンダーフィスト レベル41/56

  キングブロウ レベル32/49

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 全員のステータスはこんなだ。

 香川かがわさんと番田ばんださんのレベルがカンストだ。

 ここのボスを倒したら、これより下の階層は二人にはきつくなるんだろうか。

 香川かがわさんはブリットがノーダメージでもけん制にはなる。

 それにマジックビジョンは鑑定並みに役に立つ。


 でも番田ばんださんは駄目だ。

 死ぬ未来しか見えてこない。


 本人にこれを告げるのは残酷だろうか。

 俺はどうするべきか迷った。


番田ばんださん、ここのボスをやったら、どうする?」

「どうするってなんだ」

「分かっているよね。たぶんハントについて来れない」

「ああ、その通りだ。壁をぶち破ってレベル限界まで上げたが、俺はここまでか。引き際はわきまえているよ。自分の実力を見誤るハンターは早死にする。ああ、俺はこのボスで終りのようだ。だけど、セーフゾーンの拡張の仕事をくれないか」

「別にいいけど。ハンターは廃業するの?」

「ああ、限界がみえちまったからな」

「じゃあ、みんな。気を引き締めて行こう」


 ボス部屋の扉を開ける。

 その中にいたのは、魚のひれが付いたようなフォルムのドラゴン。

 ウォータードラゴンだろう。

 やっぱりね。

 そんな気がしてた。


「最後にひと花咲かせるぜ」

「残念だけど、番田ばんださんの出番はない。【リフォーム】岩盤、押しつぶし」


 轟音と共に天井だった岩が崩れ落ちる。


「やったか」


 番田ばんださん、やったかはフラグだよ。

 崩落した岩が動く。

 ウォータードラゴンは生きているようだ。

 さすがドラゴン。

 何十トンもの下敷きになっても生きている。


「でも、やっぱり番田ばんださんの出番はない。【リフォーム】腕、そしてデスサークル」


 出てきたウォータードラゴンの首に魔石製の輪が嵌められ締まる。


「クォォン……」


 ウォータードラゴンの鳴き声が次第に細くなっていく。


「酷い奴だ。最後の大活躍の場を奪うなんて」

「引退は死亡フラグだからね。それで潰させてもらったよ」


 ウォータードラゴンをリフォームして頭を龍に変えた。

 あんまり変わった気もしないが、ボスはもう湧かないから、別のボスと間違えることはない。


 ポータルに登録して、第7階層を覗く。

 第7階層は、赤茶けた大地。

 吹きすさぶ風。

 生えているサボテン。


 荒野だね。

 空を飛んでるドラゴンがみえる。

 ドラゴンがザコだから、難度は第6階層とは比べ物にならないらしい。

 やっぱり番田ばんださんが抜けて正解だったかも。

 悲しいけどね。


番田ばんださんの新しい門出を祝って乾杯」

「「「乾杯!」」」


 打ち上げで、俺だけジュースの乾杯だ。


戸塚とつか様、第6階層までを大至急制覇お願いします」

「もう次の仕事かぁ」

「区の6倍の面積が掌中に入るのですよ。こんなのはもうやらない道理がありません。失礼」


 香川かがわさんのスマホが鳴る。


「何ですって!」


 香川かがわさんの慌てた声を初めて聞いたな。


「なら、ちょうど良い人材がいます」

戸塚とつか様、お願いです、CMを一本撮らせて下さい」

「ええっ」


 俺は急きょCMに出ることになった。


「これが魔力3000オーバー」


 CMの監督が俺を見て驚いている。

 最近は前髪をかき分けると、自然と魔力隠蔽が解けるようにしてる。

 スイッチみたいなものだ。


「あの馬鹿モデルは、一生芸能界で働けなくしてやりましょう」


 香川かがわさんが怖い。

 まあCMの撮影は簡単だった。

 傘下企業のCMだったから、できが悪くても鶴の一声で何でもなる。


 CM撮影を見学にきた関係者がうるさいこと。

 どこの芸能事務所から始まって、映画に出てみないかとか、何なら歌を一本作るよとか。

 リフォーマーの名前がついに世に出てしまった。


 芸能活動はほどほどにしたい。

 そうでなくてもスケジュールがぎっしりだ。

 睡眠時間は絶対に削らないからな。


「そんなこと言わずに出て下さい」

「このオーラ、テレビに出たら人気間違いなし」

「頼みますよ。お願いします。この通り」

香川かがわさんからも言って下さい。俺達、友達でしょう」


「仕事上の付き合いを友達とは言いません」

「気が向いたら少しだけ出てやる。香川かがわさん、俺のスケジュールの空きは?」

「1年後までびっしりです」


「ええ、そんな」

「なんの仕事なんだよ」

「そうですよ。芸能活動より儲かるのか」


「何千億の仕事だと言っておきます」

「嘘言ってますよね」

「もう香川かがわさんには敵わないな。ジョークでしょう」

「君も黙ってないで、芸能人やりたいでしょう。出ると言わないと離さないから」


 服を掴まれて、俺はもみくちゃにされた。

 力任せに振りほどくわけにもいかない。

 誰か助けて。


 香川かがわさんが魔力を放出。

 俺以外は固まった。


「逃げます」

「オッケー」


「あああ……」

「待って……」

「くっ動けない……」


 酷い目にあったよ。

 形ばかりでいいから芸能事務所に入っておくべきかな。

 魔力の放出はああいう場合に使うんだな覚えておこう。


 お父さん、お母さんが亡くなってから1年とちょっと、俺は元気でやっています。

 だから天国で見守ってて下さい。

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