第47話 債権者集会

 債権者集会。

 怒号が飛び交う。


「皆さん!!」


 香川かがわさんが声を張り上げる。

 みんなの注目が集まる。


「皆さんの債権はダブコーが全て買わせて頂きます。額面の1割でどうですか。株主の皆さんには株を譲渡してほしいですが、こちらも額面の1割ということで」


 うわっ、叩いて買っているね。

 株なんか額面の1割だよ。

 ちょっと株のことは勉強した。

 株の値段は時価で決まる。

 人気がでれば凄い上がる。

 元が100円の株が何万にもなったりする。

 額面の1割ってことは、何万の株が10円ってことだよ。

 ぼったくりだね。


 まあ倒産すれば紙屑だけど。


 香川かがわさんと部下の社員が、交渉に入った。

 概ね1割で買い取れたみたいだ。


「お前ら!」


 尻手しって叔父さんが債権者集会に出てきた。

 債権者から鋭い目つきを向けられる。

 それはもう殺気がこもっている。


「あら、救世主に向かってお前らとは頭が高いですわ」

「くそっ、覚えてろよ」

「誘拐の黒幕が何を言っているんですか」


 刑事さんと思われしひとがやってきて逮捕状を読み上げる。

 尻手しって叔父さんは逮捕された。


 どこで嗅ぎ付けたのかマスコミがシャッターを切る。

 ああ、やっと終わったよ。


 帰ってから香川かがわさんから報告を受ける。


尻手しって健康食品はエリクサー健康食品に無事吸収されました。尻手しって背任横領でも追起訴されます。尻手しっての財産は1銭も残りません。離婚届けも出されたようです」

「じゃあ、もう親戚じゃないね。このことはもう忘れよう。ところで、ダンジョンの魔力濃度が下がったって」

「ええ、ほんの少しですが」

「ゴミ事業を始められるね」

「これも大事業になりそうです。転移罠を使えば全国からゴミを回収できます。この事業だけで、上場して上位ランキングに入れます」

「上場はしなくていい。金を集めるのは良いけど、株主のご機嫌を窺うのは腹が立つ」

「ではそのように」


 ゴミ収拾はどこに設置しようか。

 第1階層はキノコ家庭菜園があるから、ゴミを持ってくるとイメージが悪い。

 ああ、地表でいいのか。

 ゴミ収拾場をダンジョン化させてゴミを吸収する。

 死体とか置かれると厄介だね。

 人間の死体はゴミ吸収から外しておこう。


 区とのゴミ収拾事業は交渉中だ。

 いまやっているのは各家庭のゴミを集めている。

 ゴミ収拾の許可を持っている業者を買収したらしい。


 もう生ごみから始まって電化製品、事業ゴミ、色々と集めている。

 俺の所に上がって来る報告書はゴミの内訳ではなくていくら儲かったかだけだ。

 いまのところ何千万の利益だが、こんなのすぐに何億、何十億、何百億、何千億と膨れ上がるだろうね。


 ていうか、俺の資産は既に2000億円近いんだけど。

 これ以上儲ける必要はないけど、金があれば出来ることはたくさんある。

 そのうち社会福祉をてこ入れしよう。

 行政がもっと協力的ならいいんだけど、交渉が難しいらしい。


 分かるよ。

 ダンジョン化技術は新技術だものね。

 それにダブコーは新興企業だ。

 信用がない。


 うちの区の道路は上手くやれたけど、これは建築業者の会社を買収したからだ。

 うん、難しい。

 中学生が考える内容ではないよね。

 いくらレベルが上がって頭が良くなったからと言って。


 魔力充填スタンドの使用料はキルポイントによって一回の金額が変わることになった。

 まあ、そうなるよね。

 ポトカカード払いだから、端数が出ても問題はない。


 魔力銀行はぼちぼちだね。

 本店ができたばかり。


 さっそく視察してみた。

 うわっ学生だらけだ。

 小学生の姿もある。

 分るよ。

 使えない魔力を持っていても仕方ないからね。


「魔力売ります」

「はい、ではこちらにの魔貨まかに魔力を注いで下さい」

「はい」

「8MPで79円ですね。ポトカカードに入金するなら、端数も入金されますが」

「カードでお願いします」


 レベル1なんだね。

 8MPだとそういうことだ。

 でも毎日79円貰えれば、月に2370円になる。

 大体、3千円ぐらいお小遣いをもらっているだろうから、それに近い金額だ。


 そりゃ来るよね。

 一番小さい魔貨まかの容量は約100MPだ。

 次のが、500MP。

 最大なのが1000MP。

 要望があれば1万MPも作るけど。

 手の平の何倍もあるコインは貨幣とは言えない。


「千を5個」


 こっちはハンターが魔貨を買っている。

 マナポーションより便利と言えば便利だ。

 たくさん飲むと腹がタプンタプンになるからね。

 あれは悪夢だ。


 ジュラルミンの大きいケースを台車に載せて、警備員1人がそれを押しながら、2人は周りを見ながら、入ってきた。

 あれに魔貨まかを入れて発電所に運ぶのだろうね。


 電子ロックをカードで開けて銀行内に入る。

 その間も同僚の警備員、不審者がいないか見張る。

 物々しいね。


 しばらくしてからジュラルミンケースが運び出された。

 うん、まあ大金だからね。

 魔貨まかの弱点を思いついた。

 強奪すると使った場合に証拠が残らないことがある。

 発電所とかには持ち込めないが、例えば大規模クランのハンターが使う場合などだ。

 お札とかだと番号が振ってある。

 これで使用した場合に分かることがある。

 魔貨まかに番号を振るのは大変だ。


 うん、香川かがわさんも妙案は浮かばなかったんだろうね。

 魔石の加工が何とかなれば番号も入れられるけど。

 魔石の加工って難しいんだよね。

 リフォーム以外では見たことがない。

 変形スキル持ちとかなら行けそうだけど。


 変形スキル持ちも番号をひとつずつ変えるのは大変だろうね。

 それに、変形スキル持ちなら番号を変えられる。

 無意味だな。

 ああ、リフォームするとき、紙片を中に入れれば良いのか。

 紙片でなくて磁気テープの類でもいい。

 CDとかのキラキラしている奴でも良いな。


 メモメモと。

 メールしたら、面倒でなければ是非にお願いしますとあった。

 レーザーで読み取れる物が魔貨まかに封入された。


 偽造防止の仕組みもされているらしい。

 詳しくは聞かなかったけどね。

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