第46話 魔道具製造

 うー、魔道具作れたら、大金持ちだ。

 今日は晴れで屋上はぽかぽか陽気。

 考え事するには何だかなごみ過ぎて、でも考えずにはいられない。


「ご飯食べる時に考え事は消化に良くないよ」

「魔道具を作りたい」

「ドロップ品のコピーとかできたらそれは凄いね」


「魔石が使われているのは知ってる」

「私も知ってるよ」

「魔石からエネルギー、熱なんだけど、取り出す技術はある」

「魔石発電の仕組みね」

「熱だけでない。スキルでできるような力を発したいんだ」

「難しいね」


「魔力回路を構築すれば良いのは分かっているけど、エネルギーで回路を作るんだよ。炎で絵を描けと言っている感じだ。火魔法スキルだってそんなのは無理だ。魔力操作スキルでも無理」

「あのね。難しい問題があるといっぺんに解決しようとするでしょ」

「うんうん」

「そうでなくてパーツに切り離して考えるの」

「ふんふん」

「切り離せばその一部分は簡単にできたりするでしょ。一歩前進ってわけ」

「なるなる」


 押して駄目なら引いてみなと同じぐらい良い考え方だ。

 バラバラに切り離して考える。


 まず思いつく切り離せる機能は、魔力を溜める機能だな。

 ここは切り離せる。

 魔力を魔石に溜めたり引き出したりする。


 どうやって作るかな。

 学校から帰ってから、実験だ。


 ダンジョンの一階層の地面に魔石を置く。


「【リフォーム】、魔力充填スタンド改」


 魔力充填スタンドはダンジョンの魔力を使っている。

 それを魔石からの魔力に変更してみた。


 使ってみると機能している。

 魔力を魔石に溜めたり切り離したりできてる。

 ミスリルのナイフを取り出して、リフォームで地面に埋まった魔石を掘り出す。

 これで機能が失われなければ、完成だ。


 うん、大丈夫みたいだ。

 やったぞ第一段階クリア。

 魔道具開発の偉大な一歩を踏み出した。


「実験ですか。スケジュールが押してます。急いで下さい」


 香川かがわさんに急かされた。


「いや、偉大な一歩なんだよ。人類の歴史に足跡を残すような偉業なんだ」

「その魔石がですか」

「魔力を出し入れしてみてよ」


 香川かがわさんは魔力電池になった魔石を握るとマジックビジョンを発動させた。


「ふむ、凄いですね。魔力回路は生成されていませんが、魔力を出し入れできます。たしかに歴史が変わります」

「だろ」

「これ単体で凄い発明です」

「えっ」


 単体でどう使うんだ。

 たしかに魔力充填スタンドが持ち運びできれば便利だけど。

 マナポーションもあるし。

 そんなに凄いかな。


「魔力銀行を作りましょう。となると魔力充填スタンドの料金システムは見直さないと」


 ええと、魔力がお金になるってこと。

 スキルが生えてない子供とかも毎日、魔力を溜めるだけでお金になる?

 消費する人は生産系かな。

 新たな経済システムができ上がるってこと。


 仮想通貨みたいに相場とかができるのかな。

 これは凄い。

 魔力の消費を推奨すべきだね。

 スキルでしか生産できない物を増やしていけば良いんだね。

 ああ、ゴーレム自動車はこの魔力電池で動かせる。

 発電所も動かせるかも。

 エネルギーの色々な経済活動なんかが変わるね。


 現在の魔石発電はモンスターから魔石を採って、魔石の魔力を熱に変える。

 魔力を全て使うと魔石は捨てることになる。

 これが人間の魔力でできるようになる。

 ハンター業が衰退するかも。

 いいや魔力電池を新たに作るには魔石が要る。

 繰り返し使えるといっても、どれぐらい持つか分からない。

 生物の一部だった物だからね。

 この辺も調べないと。

 システムの穴は香川かがわさんが埋めるだろう。


「うん、魔力銀行ありだね」

「今日のスケジュールは変更です。これの実験をしましょう。まず名前を考えますか」

魔貨まかかな」

「マカ、短いですけどシンプルで良いですね。次は形ですね。コイン型にしてもらわないと」

「簡単だよ」


 コイン型の魔貨まかができ上がった。


「次は魔力を測る機械ですね。キルポイントは魔力の総量ではありませんし」

「ダンジョンの機能で、光らせるのはできる。これを置いた魔貨まかから漏れ出る魔力でやったら良いんだよね」

「光らせるより電流の方がいいですね」

「電撃トラップね。できるよ。これを使えば人間もキルポイントじゃなくて、魔力の計測にできるけど」

「漏れ出る魔力は任意で変えられます」

「そうだった。キルポイントの利点はあるんだよね」


 キルポイントは人間から漏れ出る魔力というか、殺したモンスターの魂から出る魔力の最大値を測っているんだろうな。

 殺すと魂がとりつくのか。

 俺はリフォームして生き返らしているからゼロなのかな。


 ダンジョンの魔力濃度は生きているモンスターの魂から漏れ出る魔力を測っているのだな。

 これの最大値はいうまでもないダンジョンコアだ。

 そういう仕組みなのだろうね。


錦上添花きんじょうてんかですね」


 スマホをチェックしてた香川かがわさんがそう言った。


「きんじょうてんか?」

「良いことが重なったということです。尻手しって健康食品が2度目の不渡りを出しました」

「倒産ってこと?」

「実質そうですね。あらあら、裁判中のあの尻手しっての部下が証言を翻しました。どうやら約束してたポストがなくなったからのようです」

「そうだよね。ただで罪を被るやつはいない。有罪後に骨を拾ってもらわないと、やってられないからね」


 錦上添花きんじょうてんかね。

 まさにその通りだ。

 一挙にことが進み始めた。

 魔力銀行は凄いことになるに違いない。

 魔力充填スタンドから俺達は魔力を吸い出し放題だ。

 金が湧いて出ることになる。

 ええと魔貨まかはハンターの必需品になるな。

 ダンジョン開拓も進むに違いない。

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