第50話 ミスリルゴーレムガン

「いやぁ、参りました」


 いつになく弱気な拝島はいじまさん。


「どうしたの」

「聞いてくれ。予見スキルだとインサイダー取引なんだと言われな。国外に逃亡して、海外で株の取引きをやってたが、そこでも有罪判決を食らった」

「前科者になっちゃったってこと」

「それは別に構わない。いまさら就職する必要もないし、罰金を払ってもまだ金はある」

「何が問題なの」

「愛しの香川かがわさんに愛想を尽かされてしまう」


「誰が愛しのですか。勝手に愛しい人認定しないで下さい。前科がなくても愛想を尽かしてます」


 香川かがわさんが口を挟んだ。


拝島はいじまさんは上得意なんだけどね。スパリゾートのゴールド会員だし」

「あんな、はした金で感謝してもらう謂れはない」

「ですね。感謝する必要はありません」


拝島はいじまさん、耳よりな話があるんだけど。なんとハントのパーティに加わると香川かがわさんと一緒に行動できる。恰好良いところも見せられるかもね」

「やる。いまやらないでいつやるのか」


「じゃあ、武器だけど【リフォーム】」


 ミスリルロボットゴーレムが変形して拳銃になった。

 うん恰好よくできた。

 名付けてミスリルゴーレムガン。


 ミスリルゴーレムは魔法を使えるから爆発で弾を発射するのも容易い。

 そして風魔法で見えないレールを作り、弾を更に加速する。

 レールガンとも言えるだろう。


「重いな。両手でないと扱えない」

「そこはレベルを上げれば、解決するから。とりあえず、番田ばんださんと組んでセーフゾーン拡大の仕事をしてもらう。別行動だね」

「モンスターを殺せば良いのか」

「いいや、殺すなんてもってのほか。彼らは金の卵を生むガチョウみたいな資源だし、殺さないで」

「無力化か。手足を狙えば良いだけか。いい練習だ」

「頑張って。すぐに慣れると思うから、そしたら一緒にハントしよう」


「ああ、待ってろ。香川かがわさん、近いうちに私の雄姿をご覧に入れて差し上げます」

「待ってません」


 第7階層の本日の敵は鳥。

 ロックバード。

 ドラゴンぐらい大きい鳥だ。


 うちのパーティに不足しているのは航空戦力。

 さてやるぞ。


「オリハルコンロボットゴーレム、やるよ。構えて」


 オリハルコンロボットゴーレムが膝を少し曲げる。


「【カリキュレイト】今です」

「【リフォーム】人間大砲」


 地面が物凄い勢いで、盛り上がり、オリハルコンロボットゴーレムを大空高く打ち上げる。

 ロックバードはここまで届かないと高をくくっていたのか、オリハルコンロボットゴーレムの直撃を受けて墜落した。


「【リフォーム】拘束」


 大きい鳥は飛び上がるのに大変だ。

 魔法の力を借りているとしても拘束されたらどうにもならない。


「キェェェ」

「出番だな【乱舞】」


 大船おおぶねさんが大槌でガンガン、ロックバードの頭を殴る。


 ロックバードは炎のブレスを吐いた。

 大船おおぶねさんは盾でブレスを防いだ。


「【カリキュレイト】【バレット】」


 香川かがわさんの魔弾で、ロックバードの片方の翼は動かなくなった。

 弱点を的確に狙うのは本当に恐ろしいな。

 香川かがわさんは1流の殺し屋にもなれるに違いない。


「【カリキュレイト】【バレット】」


 ロックバードの翼は両方とも動かなくなった。

 ブレスも止まった。


「援護ありがとよ。【乱舞】2回目」


 頭をぐちゃぐちゃに潰され、ロックバードは動かなくなった。


「【リフォーム】鷹。君は今日から、ビッグホークだ」


 ロックバードがビッグホークに生まれ変わった。

 今日はここまでだな。

 ドラゴンクラスの敵とやると神経を使う。


 第2階層の別荘ではなくて、新設のバンガローを訪れる。

 スパリゾートにきた客が泊まる場所だ。

 もっとも料金が安い。


 中に入ると床しかない。

 テントとほとんど同じだ。


 寝転がってみる。

 天窓があるが空は雲一つない晴天で面白みがない。


 満天の星空とか映せたら、ロマンチックだろうな。

 ダンジョンの天井をリフォームするのは大事業だ。

 そのうち挑戦してみたい。


 トイレと風呂がないのが不便だな。

 でもこれがあったらバンガローとは言えない。

 値段も高くなる。


 共用のトイレと風呂は、バンガロー場の中にあるけど、やっぱり不便だよね。

 それと、第2階層に樹が欲しいな。

 樹があるとキャンプ感が出る。

 小川でも良いので川も欲しい。


 改善点をスマホでメモしてメールした。

 散歩に出るか。


 別荘地では家庭菜園で、別荘主達が畑仕事に精を出している。

 別荘もだいぶ売れたな。

 高いのだと1億を超える。

 ただ、ここのお湯は治癒効果があるので、持病持ちの人が多いようだ。


「あなたもどこか悪いの。私は膝が痛くってねぇ」


 老婦人がそう言って声を掛けてきた。


「バンガローに遊びに来てたんだ」

「バスで気軽に来れるここは良いわよね。私なんか転移ポータルだから一瞬で。膝が痛いと歩く距離が短いのは助かるからねぇ」

「運動不足になる人が出てきそう。メモメモっと」

「あなたレポートでも書いているの。立派よねぇ。うちの孫なんかサッカー三昧で勉強なんかしやしない」

「うん、まあね。レポートのノルマがあるんだ」

「それでも感心よお」


「別荘地に不満は?」

「昼夜がないのがねえ。排気ガスがないのはいいのだけれど。あと犬のウンもね。うちの前なんか、わんちゃんのウンを放置していく人がいて」


 犬の糞は道路をダンジョン化してゴミ収拾すれば解決するな、メモメモっと。

 昼夜は俺もそう思う。


 まだ別荘地の大半は残っている。

 天井のリフォームが明暗を分けるかも。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る