第34話 事件解決

 子豚さんオークは短い脚をちょこちょこと目まぐるしく動かして走る。

 俺のレベルが上がってなければ見失うところだ。

 リフォームしてあるがさすが元モンスター。

 野生動物並みだね。


 そして辿り着いたのは廃工場。

 中を覗くと100人はいた。

 まあ、人数なんかいくらいても関係ない。


 問題は高ランクハンターがいるかいないかだ。

 まあ、一当てしてから考えよう。

 逃げ道は確保してある。

 ここは幸いにして、道路がダンジョン化してある区域だ。

 ポータルを設置する。

 このポータルまで逃げれば逃げ切れる。


「【リフォーム】」


 工場の配管が動いて、中にいる男達を拘束する。

 みたところ配管を振りほどく人はいないな。


「こいつは何だ?」

「何でパイプが」

「どうにかして振りほどけ」

「警察のスキル持ちの仕業か」

「ムショ暮らしは嫌だ」


 俺はゆっくりと廃工場の中に入った。

 中央に縛られた藤沢ふじさわがいる。


 猿ぐつわをされている。

 俺はそれを振りほどいてやった。


「助けにきてくれてありがとう」

「酷いことされなかった」


 見ると藤沢ふじさわの顔には大きな痣がある。

 くそっ、女の子の顔を殴りやがって。

 こいつら許さん。


「【リフォーム】」

「ぐっ、締まる。助けてくれ」

「何でもする」

「金ならある」

「助けて、お母さん」


 男達は全員死んだ。

 吐き気が盛大にこみ上げる。


「【リフォーム】」


 死んだ男達がリフォームされた。


「おい、バンで誘拐した奴と、藤沢ふじさわさんを殴った奴は自首しろ」

「はい」


「他の奴らは、今日からキノコ農園で働け」

「はい」


「ボスは誰だ」

「俺です」

「この仕事は誰に依頼された?」

尻手しってという男です」


 やっぱりな。

 あとは警察に任せよう。

 藤沢ふじさわの顔の痣はポーションで治るだろうか。


藤沢ふじさわさん、ポーションだよ」

「頂くわ」


 藤沢ふじさわがポーションを呷る。

 良かった、痣が消えて行く。


「痣消えているよ」

「このポーション高いんでしょ」

「ただの300万円ぽっちさ。エリクサーとは比べ物にならない」

「必ず返すわ」

「別に良いよ。それより殴られた他には酷いことされなかった?」


 聞きづらいけど聞いておかないと。

 酷いことしてたら、絶え間ない苦しみを罰として与えるつもりだ。


「何もなかったわ」

「ごめん、黒幕の男は俺の親戚だ」

「ううん、良いのよ。こういうことにならないために、レベル上げ頑張っているのに。まだ隣に立つ資格がないのね」

「レベル上げ、無理するなよ」

「うん」


 誘拐犯と殴った奴をロープで縛って、警察を呼んだ。

 ほどなくしてパトカーが到着した。

 誘拐犯と殴った奴は大人しく逮捕されてった。


「話いいかな。君が助けたんだよね」

「ええ、ハンターですから」

「だめじゃないか危険だぞ。現に逮捕された奴はナイフを所持していたぞ。こういう時は警察を呼びなさい」

「はい」


 大人しく怒られておく。

 危険なことをしたのは事実だから。


 俺のスキルが分からないように、誘拐犯達とは口裏を合わせてある。

 殴る蹴るで制圧したことになっている。


 俺は無我夢中で殴ったり蹴ったりしましたとだけ答えた。

 どのようにやったかは覚えてませんというとそうだろうねと納得してくれた。


 これから、藤沢ふじさわには護衛を付けないと。

 それも陰ながらね。

 姿を消せるモンスターとかいないかな。

 いなければ作る。


 リフォームは作るスキルだから。

 ダンジョンに帰り、クマ耳スライム一体を呼び出した。


「【リフォーム】霧化。うん、ほとんど見えないけど。戦闘力はどうなのか」


 第4階層に連れてってオークと対峙させる。


「やれ」


 霧が動いてオークの口の中に入っていく。

 オークは首を掻きむしった。

 窒息攻撃か。

 えぐいな。

 でもこれぐらいしても良いような気がする。

 霧スライムをあと10匹作ってみるか。

 霧スライムは外の勤務だから、魔力を補充しないといけない。

 定期的に交代で魔力補充スタンドに立ち寄るように教えた。


 家でテレビを点けると誘拐事件のことをやっていた。

 主犯と思われる人物からは任意で事情を聴くと報じている。

 尻手しって叔父さんの逮捕も間近かな。

 いいや惚けるに違いない。

 どんな言い訳をするのやら。


 2階層の温泉で今日の疲れを癒す。

 あー、生き返るぅ。

 おっさん臭い声が出た。


「お前もご苦労様」

「ぶひっ」


 追跡をしてくれた子豚さんオークが手を上げて応えてくれた。


「アイス、好きなだけ食って良いぞ」

「ぶひぶひっ」


 藤沢ふじさわが助かった記念に、客に何かサービスするか。

 アイスはやったから、ジュースってのも芸がないな。

 子豚オークさんのマッサージとか良いかもな。

 子豚オークさんにはアイスを奢ればいい。


 子豚オークさんのマッサージ無料の看板が掲げられた。

 寝台に横たわる客の背中に子豚オークさん達が登り踏み踏みする。


「可愛い」


 その様子を女子高生達が動画に撮っている。


「良い宣伝ですね」


 香川かがわさんが書類を持って現れてそう言った。


「この際だから、子豚オークさんのマッサージは料金設定してメニューに加えるか」

「ええ。マスコットというだけじゃ勿体ないですものね」


 一仕事終えた子豚さんオークが寄って来て、期待のこもった目で見ている。


「はいはい、アイスね」


 子豚さんオークの仕事は何か他にも考えよう。

 きっと何か見つかるはずだ。

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