第35話 ポータル・トランスファー・カード

 ポータルステーションのダブコー発行の交通カードができた。

 ポータル・トランスファー・カード、略してポトカ。

 ダブコー傘下の企業ならどこでも使える。


 魔力スパリゾートの飲み物や食べ物もこれで買える。

 キノコ農園の出入りもだ。

 今までのカードを統合した感じだ。


 ダブコー傘下の企業の各サービスが2割引き。

 これだけでお得だ。

 今後、活躍の場は広がっていくに違いない。


 ポータルステーションの設置は100箇所を超えた。

 今、俺が住んでる区の重要施設の近くはほとんど網羅。

 俺は今、学校にもポータルで通っている。

 藤沢ふじさわもだ。


 藤沢ふじさわが通っているダンジョン前にもポータルが設置してある。

 藤沢ふじさわの住んでいるマンション前にも設置済みだ。

 これなら、襲われる危険性が減るな。


 学割の制度と無制限パスも作った。

 ポータルを何度使っても定額になる。

 学割と合わせると3000円。


 学割でない金額は1万円だ。

 まだ、区の中だけだから、高いと感じる人も多いだろうけど。

 そのうち割安感が出るようになるはず。


「ポータルステーションのレポートを書きたいんだって」

「うん、まあね」


 そういう口実での抜き打ち視察だ。


「私達の仕事は、ポータル前にいる人を捌くことと、ポスカの発行業務かな」

「人員の誘導は大変そうだね」

「ああ、夕方は魔力スパリゾートに行く人達で混雑する。それと通勤時間帯かな」

「ポスカの発行業務は?」

「こっちは自販機があるから。学割とかの特殊な発行は手作業だけどね。紛失した場合の再発行とか色々と仕事はあるよ」

「何か困ったこととかは?」

「人を捌く時に酔っ払いとかは困るね。意識がない時は病院までポータルで連れてって、入院させちまうけどね。絡まれると厄介なんだよ。警察を呼ぶ事もしばしばだ。だけど警察からポータルで転移してくるから、到着が早いので助かっている」


 酔っ払いかぁ。

 警備員を雇うべきだな。

 バス会社を吸収してるから、余剰人員を警備員の研修を受けさせて、回すようにするか。

 メールと。


「ポスカの業務では何もない?」

「あれは魔力波長を記録してるから、本人以外まず無理だし。紛失しても、魔力波長を読み取って、コンピューターに任せれば良いからね」


 そんなシステムなんだな。

 意外と最近のテクノロジーを使っている。

 ポスカ無くても魔力だけで良いんじゃないか。

 そう思うけどどうなんだろう。


 これもメールと。

 ポスカがないと困る場面か。

 何だろう。


「ポスカないと何故駄目なんですか」

「それね。良く聞かれるよ。あのね魔力漏れは大きい小さいがあるんだ。小さい人だと、手で触れるぐらい近づけないと駄目なんだよ。大きい人だと何十メートル先から機械が反応しちまう。だからポスカを読み取った時だけ、魔力を判別する。だから厳密には周りの人、全部の魔力を判別してる」

「ポスカに登録した人が周りにいればオッケーっということなんだ」

「そういうことだね」


 うん、これは確かにカードが必要だね。


「ありがとう。レポート書けそう」

「どういたしまして」


 家に帰ってニュースを見る。

 誘拐の黒幕として、全然知らない男がテレビに映ってた。

 尻手しって叔父さんの部下らしい。

 尻手しって叔父さんが心を痛めていたから、犯行を計画したと報じられた。

 事実、依頼して金を受け渡す場面にはこの男しかいなかった。

 それに連絡に使ったスマホもこの男の物らしい。


 くそう、最初から逃げ道を用意してたな。

 部下は言い含められたんだろう。

 尻手しって叔父さんが指示したに違いない。

 政治家が秘書がやりましたと言うのを何回も見たけど、あれと同じ構図だ。

 汚い手を使いやがって。


 でもどうしようもないな。

 警察の捜査に期待しよう。

 今日は第5階層のセーフゾーン建設だな。

 アイアンロボットゴーレムが魔鉄の建材を担ぐ。

 そして第5階層に運ばれた。


 警備に当たっているのはミスリルロボットゴーレム。

 10体ほどいるから、ミスリルゴーレムが襲ってきても余裕だ。


 設計図を見る。

 ええと、魔鉄で壁を作るのだな。

 そして天井を塞ぐ。


 扉も魔鉄製だ。

 鍵もだ。


 簡単な構造なので手早く建設できた。

 これもリフォームスキルのおかげ。

 建材同士はリフォームスキルで溶接されたみたいになる。


 そして銀が運び込まれた。


「ミスリルロボットゴーレムは銀を食ってよし」


 ミスリルロボットゴーレムが銀の10キロインゴットひとつを口に入れる。

 意外に小食だな。

 大量にミスリルは作れないようだ。


 アイアンロボットゴーレムが少し寂しそうだ。


「よし鉄材も仕入れてやる」


 アイアンロボットゴーレムが嬉しそうになったのは言うまでもない。

 鉄は安いから、これぐらい何ともない。


 クレイゴーレムには赤土を持ってきてやるか。

 でもあいつら働いてない。

 2階層に何体かマスコットとしているだけだ。


 あいつらにうってつけの仕事ね。

 建材を運ばせても良いが土が付くんだよな。

 洗うのもめんどくさい。


 フォルムを変えるか。

 ゆるキャラはな。

 子供が抱きついたら泥だらけになる。


 畑を耕させるのに良いかもな。

 第2階層で、耕す仕事を請け負ってみるか。


 それと牧場を作ったら、牧童犬の代わりに使うか。

 モンスターの牛とか豚は大きいからな。

 そういうのに対処するに都合が良い。

 それはそのうちだな。


 とりあえずは第2階層で、別荘の家庭菜園の手伝い。

 そんなことをしてれば、そのうち良い仕事が見つかると思う。

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