第7話 大船さん死す

 いま、スケジュールは午後4時から6時までの2時間がリフォームタイム。

 この時間でセーフゾーンを拡大していく。

 大船おおぶねさんと一緒に夕飯を食べて7時から8時までの1時間が2階層の冒険タイム。

 ダンジョンの昼とか夜とかの切り替えはない。

 第1階層の灯りは光る苔だ。

 第2階層は天井が光っている。

 暗闇のフィールドとかもあるんだろうね。


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名前:戸塚とつかつくる

レベル:12/65536

魔力:65/123

スキル:1/1

  リフォーム

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 現在のステータスはこんな感じ。


 冒険には大船おおぶねさんも付き合ってくれている。

 大船おおぶねさんは近頃少し辛そうだ。

 一緒に食べる夕飯の量も減っている。


大船おおぶねさん、大丈夫」

「平気だよ。医者の言うことには動けなくなったら入院だとよ。いまは薬で誤魔化している。ほとんど痛み止めだがな」

「そう」


 大船おおぶねさんの最後を考えると吐きそうになる。

 あれっ、赤いウサギがいる。


 クマ耳スライム達とキャットラビット達が戦闘態勢をとる。

 そして、赤いウサギがぶれて、気づいた時にはクマ耳スライム達とキャットラビット達は全部やられてた。

 吐き気が、盛大訪れる。

 ゲエゲエ吐いて、胃液しか出なくなった。


「坊主、俺が守ってやる。落ち着いてスライムと猫兎を復活させろ」


 吐く物がなくなって少し楽になった。

 赤いウサギが再びぶれて、大船おおぶねさんが持っているスコップの柄が両断されて、スコップの金属部分がカランと転がった。

 大船おおぶねさんの胴のプロテクターは切り裂かれて、お腹は真っ赤に染まってた。


「死んじゃ嫌だ。死なないで。僕を置いて行かないで」


 大船おおぶねさんがポーションを呷る。


「どうやら、年貢の納め時だな。最上級ポーションでも傷が塞がらない。ベッドの上で死ねないのは、悪行の報いかな……あとのことを……」


 大船おおぶねさんが崩れるように倒れる。


大船おおぶねさん、お願いだ。目を開けて」


 大船おおぶねさんを揺さぶったが駄目だ。

 吐けないのに吐き気がきて、頭がぐちゃぐちゃになる。

 く、苦しい。


「【リ、リ、フォーム】」


 何とか言葉を絞り出した。

 大船おおぶねさんが再構築されて生き返って立ち上がった。


「坊主、心配を掛けたな。生き返った気分だ。死んでいるが、生きている。妙な気分だ。おらよっと」


 大船おおぶねさん、赤いウサギの耳を掴んでいた。

 そして空いている方の手で、赤いウサギの顔面を握りつぶした。

 死を前にしたけど前より吐き気が襲ってこない。

 慣れたのかな。

 いや、強くなった。

 大船おおぶねさんの死でトラウマを少し乗り越えられた。


 ステータスを確認してみる。


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名前:戸塚とつかつくる

レベル:17/65536

魔力:32/179

スキル:1/1

  リフォーム

――――――――――――――――――――――――


 一挙に5もレベルが上がっている。

 それだけ赤いウサギが強敵だったんだな。


 クマ耳スライム達とキャットラビット達を復活させたが、何匹かは駄目だった。

 死骸状態と蘇生時間の関係なのだろう。

 蘇生時間があるんだな気を付けよう。

 吐き気が来るが、吐き気は前ほどは襲ってこない。


 赤いウサギをリフォームする。

 赤いキャットラビットができあがった。

 こいつはたぶん中ボスだな。

 ダンジョンはこういうことがあるから侮れない。


 赤いウサギはドロップ品を出した。

 波紋の美しいナイフだ。

 これは売らないで記念にとっておこう。


 生き返らなかったクマ耳スライムとキャットラビットの死骸を土に埋めた。

 来世があれば友達になろう、そう祈った。


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名前:大船おおぶねいさむ

レベル:16/16

魔力:165/165

スキル:2/2

  採取

  洗浄

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 これが大船おおぶねさんの死ぬ前のステータス。

 レベルの最大値が低い。

 だが、そんなのは人間の魅力には何も関係ない。

 レベルとか魔力とかで人間を判断する人にはなりたくない。


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名前:大船おおぶねいさむ

レベル:19/65536

魔力:185/196

スキル:3/8

  採取

  洗浄

  魔法静物

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 生き返った後はこんな感じだ。

 物凄く強化されている。

 魔法静物っていうスキルは大船おおぶねさんを動かしているスキルなんだろうな。


 でも静物っていうと動かない物だ。

 魔法動物ではない。

 やっぱり生きているが死んでいる。

 吐き気はさほど来ない。

 死んでいても動いて話をしてる。


大船おおぶねさん、何か変な所がないですか?」

「おう、坊主が神様みたいに感じられる。造物主ってこういうことを言うんだな。他は別にないな」

「あの変なことを聞きますが、生きているのですか、それとも死んでいる」

「生き死にをなんで判断するかっていうことだな。魂の有無なら、魂はあるような気がする。だが、生き物かと言われると疑問だな。魂が宿った物体。それが一番近いな」

「確かに物にも魂が宿るって言いますね。付喪神でしたっけ」

「まあなそんな感じだ」


 赤いウサギをスマホにダウンロードしてあるモンスター辞典で調べる。

 キラーラビットだった。

 討伐にはDランク推奨とある。


 僕はなんちゃってDランクだからね。

 でもレベル20の壁もすぐに乗り越えられそうだ。

 赤いキャットラビットがいれば。

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