第22話 お昼ご飯

 学校の昼休み。

 屋上で藤沢ふじさわと昼ごはん食べている。


「ええとね、うちのお父さんは銀行の支店長なんだけど、魔力と金が全てって考えているみたい」

「ありがちな価値観だけど」

「私がレベル10を超えたって言ったら10万円お小遣いくれたわ。レベルが10上がる毎にくれるみたい」

「ハントは誰と?」

「ダンジョン探索研究会のメンバーとよ。卓球部辞めてそこに移ったの」

「部活かぁ。顧問の先生は上位ハンターなのかな」

「まさかぁ。Dランクよ。Dランクで挫折して学校の先生になったって言ってた。レベル55なんだって」


 ええと。


 大まかなレベルとランクの関係は。


 Fがレベル20未満

 Eが20以上。

 Dが50以上。

 Cがレベル100以上。

 Bがレベル200以上。

 Aがレベル500以上。

 Sがレベル1000以上。


 たしかにDぐらいだな。


「ああ、忘れないうちに」


 俺はスパのフリーパスカードを渡した。


「やったぁ」

「振り込まれる100万円はなんのお金?」

「大学へ入るための資金よ。でもお父さんは金は運用してこそだから、回収の見込みのある投資はしなさいって」

「フリーパスの定価は100万円だけど、上がっているみたいだね」

「ええ、うなぎ上りよ。差額の200万円も必ず払うから」

「別に100万円でもいいけど」

「良くない。友達でも恋人でもお金のことはきちっとしとかないと、破局の元よ」

「まあいいけど」


 お金のことにはきちっとしているな。


「来年にはフリーパスはきっと500万円ね」

「追加で発売したりしないの」

「しないってアナウンスされているわ。混雑解消のためよ。一般客のチケット数も制限されているわ。フリーパスだとこの制限がないのよ。必ず温泉に入れる」

「そんな仕組みなんだ」

「社長の香川かがわ様は私の憧れなんだ」

「彼女美人だから」

「なんで知ってるの?」


 ちょっと不味い。


「青汁の試飲会で会ったんだ」

「試飲会の招待状はよく手に入ったわね」

「俺ってキノコ農園やっているだろ。だからその伝手で」

「いいなぁ」


「今度手に入ったらあげるよ」

「本当、ますます好きになりそう」


「俺のどこが良かったの?」

「頭の良い所よ。頭が悪いひとは行き詰る。貧乏でも頭の良い人は幸せに暮らせるわ。自給自足生活とか頭が悪い人にはできない」


 その持論には穴がありそうだけど、論破するほど俺も子供じゃない。

 他人の意見も尊重しないと。


「分かるよ。もてる奴は、頭の良い奴か、スポーツの出来る奴だから」

「そういう人はレベルが高いわね」

「高校生だとそうかな。中学でレベル上げしている奴は少ない。不良が上げるケースが多いのかな」

「みたいね。喧嘩に強くなって、お金も稼げるから。うっぷん晴らしに、不良がダンジョンに潜っている話は、部活のメンバーから聞いた」


 本郷ほんごうもそのくちかな。

 今はやってないみたいだけど。

 スライム、ゴブリンクラスまでは良いんだ。

 少し腕に自信があれば対処できる。


 ゴブリンの魔法使いとかになると一挙に難易度が上がる。

 ここで間違えると死ぬ。

 中学生がダンジョンで死ぬのはよくニュースでやっていた。

 ダンジョンの入場を高校生の年齢からにするという議論もあるらしい。

 でもハンター協会が反対してる。

 中学生でもメキメキレベルを上げる奴はいるからだ。

 そしてそういう奴は大抵上位に行く。

 その芽を摘むなというわけだが。


 俺的には分からない。

 俺自身はいまダンジョンに入れなくなると困る。

 でも中学生が死んでいくのは嫌だな。

 想像すると吐きたくなる。


 いまのところ傘下の企業は大船おおぶねキノコ農園。

 魔力スパリゾート。

 ダンジョン不動産。

 エリクサー化粧品。

 エリクサー健康食品。

 オークミート食品。

 ポータル道路整備。


 これにポータルステーションとポータル観光開発が加わった。

 ポータルステーションはポータルを使って移動する転移運搬事業だ。

 ポータル観光開発はダンジョン観光を目的にしてる。

 いまのところ第1階層のキノコ農園と第2階層のスパしかないけど、今後は増えていくだろう。

 下の階層が観光に適した所だといいけどね。


「バス会社から苦情が来てます」


 学校を終えて、セーフゾーンの拡張、探索、道路のダンジョン化を終えてから、香川かがわさんから報告を受けた。

 あー、近隣のバス停がありそうな所にはポータルを設置してしまったからな。

 ポータルは24時間使えるし、バスを待つ必要はない、それに移動は一瞬だ。

 料金も安い。

 こんな便利だとバスなんか使わない。


 客がゼロになったんだろな。

 将来的にはバス鉄道、島を除く旅客機の国内線は全て客がなくなるだろう。

 大勢の人が路頭に迷うことになりそうだ。


「ポータルパスの発売業務を高値で委託しろ」

「儲けが減りますが」

「公共交通機関の会社を潰すわけにはいかない。それとポータルの周辺の人の誘導だな。人が多いと圧死する危険がある。その警備員みたいなのを公共交通機関に委託しろ」

「はい、仰せのままに」

「バスの運転から、人との誘導は全然違う仕事だけど、そこは勘弁してほしい」

「そこまで慈悲は必要ありませんね」


 また資産が増えるな。

 設備投資も多いけど、それは会社の問題だ。

 俺はただの株主。

 事業計画とかの承認を求められるけど、これは香川かがわさんの善意みたいなもの。

 本来は必要ない。

 いまもほとんどチラッと読んで、やってくれと俺が言うだけだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る