第18話 ゴブリンキング

 今のステータスはこんな感じ。


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名前:戸塚とつかつくる

レベル:41/65536

魔力:452/452

スキル:1/1

  リフォーム

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 レベルが41で頭打ちになった。

 それなので、第3階層のボスを討伐して、第4階層に行こうと思う。


「俺の出番だな。猫成分を吸収した俺は無敵だ」


 番田ばんださんがやる気になっている。

 猫顔オークが10体もいれば出番はないように思うけど。


 ボス部屋の扉は軋みなく開いた。

 中にいたのは王冠を被ったゴブリン。

 たぶんキングだろう。

 調べなくても分かる。


「ぐきゃ、ぐぎゃー、ぐぎゃ、ぐぎゃっ」


 ゴブリンキングが何か唱える。

 ボス部屋は光で満たされた。

 この光には見覚えがある。

 リスポーンの光だ。


 ゴブリンが100体近く召喚された。

 猫顔オークが前線を形成する。


「【サンダーフィスト】、おらぁぁぁ」


 番田ばんださんの大技も数の前には効果が薄い。

 ゴブリンが10匹ほど倒されただけだ。


「【鉄皮】」


 大船おおぶねさんは防御力を上げて、じっくり行くようだ。

 ゴブリンキングがまた召喚を発動。

 ゴブリンの数は一向に減らない。


「【ブレット】【ブレット】【ブレット】【ブレット】」


 香川かがわさんが魔法の弾丸を乱れ打ちだ。

 俺は大技行きますか。


「【リフォーム】。落とし穴、剣山付き」


 大きな落とし穴が開いて、下には槍が。

 30匹ぐらいのゴブリンが串刺しにされた。

 吐き気がこみ上げる。


 ここからはゴブリンを生き返らせよう。

 その前にマナポーションを飲む。

 ぐぇ、吐き気が増した。


「【リフォーム】生き返り」


 今まで倒した50匹ほどのゴブリンが生き返って味方になる。

 だがすっかり乱戦になった。

 こうなると香川かがわさんの出番はない。

 フレンドリーファイアが怖いからね。


 大船おおぶねさんと番田ばんださんは乱戦に加わった。


「【リフォーム】生き返り」


 味方ゴブリンが次々に増えるから楽勝だな。

 ただマナポーションでお腹がタプンタプンになるけど。


 ゴブリンキングの魔力は尽きたようだ。

 召喚が止まる。


「【キングブロウ】」


 番田ばんださんが両手を組んで振りかぶり、ゴブリンキングを叩いた。

 番田ばんださんの両手は魔力光に包まれている。

 ゴブリンキングは一撃で潰れた。


 番田ばんださんはCランクだから、大技が決まればゴブリンキングぐらい容易いのだろう。

 今回のボス討伐でレベルは1しか上がらなかった。

 ボスに止めを刺さなかったからかな。

 一緒にハントしていると経験値のおすそ分けがあると聞いたんだけどね。


 学説ではモンスターが死ぬと魔力を放出する。

 その魔力を浴びるとレベルが上がるらしい。

 ただそれだと敵を倒して敵も強くなるはずなんだけど。

 共食いはしないということか。


 人間は魔力を放出してるし体内に蓄えているから、浴びる魔力と反発して弱い魔力は浴びても意味がない。

 だから、頭打ち現象が生じる。

 今の俺はゴブリンをいくら倒してもレベルは上がらないと思われる。


 ボスのドロップ品は杖だった。

 杖は魔法系スキルの威力を上げる。


香川かがわさん、使う?」

「自前のもっと良いのがたくさんありますが、普段使いにもらっておきます。ただ、この辺りの階層ですと必要なさそうですね」


 第4階層を覗きますか。

 第4階層は森だった。

 歩いているザコはオーク。

 この辺りだと俺は厳しくなるかも。


 これがレベル限界までレベルが上がらない理由だ。

 敵わない敵って言うのが出てくる。

 おそらく、俺一人だとオークの集団は厳しい。

 ここの中ボスはもっと厳しいのだろうね。


 だけど、焦っても仕方ない。

 ゆっくり1歩ずつだ。


「ひとつ助言を」


 険しい表情の俺を見たのだろう、香川かがわさんがそう言った。


「うん、ヒントならいくらでも」

「槍がありますよね。回転してみたらどうです。私のブリットスキルも回転させるようになって、命中率威力共に上がりました」

「それ、採用。ドリル槍ね。確かにねじり込んだら威力が上がる。ナイスアイデア」

「まだ他にも改善点は思い浮かびますが、少しずつやっていきましょう。まずはドリル槍を物にしてからです」


 魔力2千オーバーだと頭も良くなると実感させられる。

 俺もその高みに登るぞ。

 既に5分の1まできた。

 5ヶ月余りでだ。


 まだ、諦めるには早い。


 いまのところ傘下の企業は大船おおぶねキノコ農園。

 魔力スパリゾート。

 ダンジョン不動産。

 エリクサー化粧品。

 エリクサー健康食品。


 香川かがわさんはエリクサーの名前が好きらしい。

 化粧品会社と健康食品にその名前を付けた。


 事業は順調だ。

 毎日、億を超える売り上げを出している。

 問題はセーフゾーンの拡張が追い付いてないということ。

 区の面積だもの。

 仕方ないとは言える。

 ただ、なんとなく嵐がくるような気がした


 災害といえばスタンピードだ。

 これはダンジョンからモンスターが湧き出る現象だ。

 これの厄介なのはスタンピードゲートという転移門が出来て、そこから溢れてくるのだ。

 スタンピードゲートはどこにできるか分からない。

 安全な場所などない。


 幸いなのは魔力の薄い地上ではモンスターは長い間生きられないってことだ。

 でも、人間を食うことでモンスターは魔力を補充する。

 厄介なことだね。

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