第56話 地竜

 第7階層、ボス戦だ。

 気を引き締めよう。


 ボス部屋に入ると中にいたのはトリケラトプスみたいな地竜。

 地竜はいきなり石礫のブレスを吐き始めた。


「【リフォーム】壁」

「【リフレクション】」

「【鉄皮】」


 防御する。

 だが一向にブレスは止まない。


「【フォァサイト】。くっ、死ぬ未来が見えた」


 拝島はいじまさんが構えてた銃を下ろす。

 そして汗を拭った。


「私が【カリキュレイト】。そこっ、【バレット】」


 拝島はいじまさんが香川かがわさんの前に飛び出した。

 何か予見したのだろう。

 拝島はいじまさんの胸には穴が開いていた。


 即死だった。

 吐き気がこみ上げる。


「【リフォーム】」


 拝島はいじまさんがリフォームされ生き返る。


「泣かないで。愛しの香川かがわ女史が守れて満足です」

「泣いてなんていません。馬鹿ですかあなたは」

「この未来が一番良かった」


「盛り上がっている所を悪いが、お二人さん、いちゃつくならボスを倒してからだ」


「【リフォーム】壁」

「【リフレクション】」


 さて、とりあえずは大丈夫だ。

 拝島はいじまさんを襲った一撃は切り札だったようだ。

 連発はできないのだろう。

 リフォームの壁と香川かがわさんの反射魔法を破ったのだから、そうであってほしい。


「坊主、どうする?」

「押して駄目なら引いてみな。トンネルを作って接近しよう。【リフォーム】ダミー人形。【リフォーム】トンネル」


 これで背後に出れるはずだ。

 トンネルの中ではいつ生き埋めになるかという恐怖が襲ってくる。

 やっと背後に出られた。


 よし、ダミー人形を俺達だと思っている。


番田ばんださん、頼む」

「任せとけ。【サンダーフィスト】全開」


 目が眩むほどの光が出て辺りは静寂に包まれた。

 ブレスが止まったということは、痺れたのだろう。


「【フォァサイト】。番田ばんださんのキングブロウでないと倒せないようだ」

「【リフォーム】。魔力充填スタンド」

「よっし、充填完了。任せとけ。おらー、【キングブロウ】浸透撃」


 番田ばんださんは地竜の背に飛び乗ると、頭の上に駆けていき、拳を振り下ろした。

 地竜の足が折れ曲がって地響きを立てた。


「あなたに命を懸けろなんていつ言いましたか」

「男ならああするだろ」

「私は死んでも再度リフォームして貰えばいいだけです。はっきり言って無駄死にです。有難迷惑です」

「そう言ってやるなよ。それが男ってもんだ」


 大船おおぶねさんが口を出した。


「外野は黙っててろ」下さい」


 息がぴったりだ。

 両手を上げて駄目だこりゃポーズを見せる大船おおぶねさん。


「金輪際やらないで下さい」

「いいや何度でもやる。愛しい人の死のイメージが見えて黙っていられるか」


「坊主なんとかしろ」


 俺が事態を収拾しないといけないのか。

 まずは地竜をリフォームと。

 その作業をして、考える。


「ええと、俺が言うのもなんだけど。見込みのない作戦は駄目だ。拝島はいじまさんは防御系のスキルを覚えるまで香川かがわさんを庇うのを禁止」

「ええ、それなら文句ありません勝算があれば文句など言いません」

「言質取った。【ステータス】。おう、スキルが生えた」


――――――――――――――――――――――――

名前:拝島はいじま智明ともあき

レベル:134/65536

魔力:647/2594

スキル:3/8

  フォァサイト レベル53/261

  マジックオブジェクト

  アブソリュートディフェンス レベル1/1174

――――――――――――――――――――――――


 自己申告だけどステータスはこんな感じ。

 絶対防御か。


「このステータス間違ってないでしょうね。スキルのレベル限界値が高くて盛っているとしか思えません」

「愛しい人に嘘はつかないさ」


 わかるよ。

 きっと守るという思いが強かったんだ。

 それでそうなった。

 命を懸けて守るって意志はそれぐらい強いんだろう。


 第8階層を見るか。

 ちょっと覗いたけど、ジャングルだった。

 これは苦戦しそうだ。

 でも制覇したら、南国リゾートが作れるし、南国フルーツの果樹園も作れる。


 芸能関係の仕事は、ブラックフェンリルの締め出しに成功した。

 傘下企業が色々な番組のスポンサーになったからね。

 スポンサーの意向にはスタッフは逆らえない。


 今日で9月も終わり。

 文化祭が始まった。

 ちなみに去年は欠席。

 忙しかったからね。

 藤沢ふじさわさんが寂しそうだったのを覚えている。

 俺は前髪を上げて藤沢ふじさわさんと腕を組んで歩いた。


「ちょっと、リフォーマー様じゃない。なんで藤沢ふじさわと一緒なのよ」


 女生徒が騒いでる。

 藤沢ふじさわさん後で大丈夫だろうか。


「平気よ。黙らせるから」

「どうやって?」

「この日のために色々と溜めておいたの」

「えっ、何を」

「あなたから貰った試供品よ。化粧品が多いけど」

「物で釣るとそれが当たり前になって何度もせびられるぞ」

「平気よ。それだけじゃないから。私、リフォーマーファンクラブのオーナーなの」

「えっ」

「あなたが、芸能活動を始めた時に速攻で作ったわ。じゃん、ファンクラブ第1号会員。香川かがわ様にも許可取って、公認してもらったわ」

「そんなことしてたのか」


「だから、腕を組んで歩く権利はあるの」

「そういうことなら、色々と融通が利くだろうね」

「ええ、コンサートのチケットも安くおさえられるわ」


 なるほどね。

 しかし、模擬店の食べ物ってなんで美味しいんだろう。

 採算度外視だからかな。

 それとも、俺だけが特別なのか。

 確かに量が藤沢ふじさわより断然多い。


 まあ、特別だということにしておこう。

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