第3話 キノコ家庭菜園分譲

 僕はせっせとクマ耳スライムを増やした。

 クマ耳スライムは100匹を超えた。


「【ステータス】」


――――――――――――――――――――――――

名前:戸塚とつかつくる

レベル:4/65536

魔力:47/47

スキル:1/1

  リフォーム

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 生き返らせたのでも経験値は貰えるらしい。

 クマ耳スライムが殺したスライムも僕の経験値にカウントされているらしいと分かった。

 今、僕はほとんど生き返らせることしかしてない。


 そして、ダンジョンのリフォームに着手した。

 モンスターのリスポーン機能を止めるのだ。

 だけど、第1階層は広い。

 歩いて端まで1時間。

 区ひとつ分ぐらいはありそうだ。

 ゆっくりやるさ。


 キノコ売れないかな。


 食べられるかどうか分からないので、適当に採取して橋本はしもとさんへのお土産にする。


「このキノコどうしたんですか」

「ええと、山で」

「嘘を吐いたら分かります。さあ正直に言いなさい」

「スキルが生えたので、魔力を増やそうと、うちの庭のダンジョンに。スライムが出たので殺してスキルでリフォームした」

「ダンジョンには入らない約束でしたよね。なんて無茶をするんですか」


 叱ってくれる態度が何となく嬉しい。


「ごめん」


「モンスターをリフォームするとどうなるのですか?」

「味方になるみたい」

「リフォームでテイムですか」

「たぶんだけど、作り直しているから、別の生き物になっていると思う」

「キルポイントはどうなりましたか。計ってみましょう」


 ステータスなんだが、他の人には見えない。

 鑑定スキルなどというものは存在しない。


 それでなんで判断するかというとキルポイントだ。

 キルポイントはモンスターを殺すと入る。

 ただし、より強いモンスターを倒さなければいけない。

 今までで倒したモンスターの最大値だと思ってくれたらいい。

 学者によればカルマを計っているとのこと。

 カルマは漏れ出る魔力から判別できるらしい。


 機械に手を置く。

 キルポイントはゼロだった。

 ええと殺したけど殺してない。

 どうやらそういうことらしい。


「ええと殺した判定にはなってないみたい。レベルは上がっているのだけど」

「キルポイントは絶対ではないのは分かってます。過去に倒したモンスターの最大値ですから。ドラゴンを1匹倒しても、100匹倒しても同じ数値になります」

「僕、モンスターでも殺したくはない」

「いい心がけですね」

「でも味方は増やしたい」


「とりあえずキノコから片付けましょう。ダンジョン産のキノコですから、毒でないのは高値で売れます。専門家を紹介しましょう」

「お願いします」


 やって来たのは、初老のいかつい男だった。

 でも目が優しい。

 良い人だと思った。

 尻手しって叔父さんの目つきとは違う。


大船おおぶねだ」

戸塚とつかです」


「聞いた話では、ダンジョンをリフォームして、キノコの栽培場に変えたんだって」

「はい」

「頑張ったな」


 頭をぐしゃぐしゃと撫でられた。

 そしてダンジョンに入る。


「こりゃあ、宝の山だな。ダンジョンを秘匿したいんだってな」

「はい」

「夜中に運び出しても、早晩ばれるな」

「いい方法があるんです。ダンジョンのトラップで転移がありますよね。あれで採ったキノコを外に運び出します」

「坊主、頭良いな。さっきから気になってたんだがあのクマ耳のスライムは味方か。クマ耳がないのは敵だな」

「はい。クマ耳がない奴は気を付けてください」

「クマ耳にキノコの収穫を手伝わせる事が出来ないかな」

「やってみます。キノコを収穫してくれ」

「ぴきゅう」


「やってくれるみたいです」

「売るのは俺に任せとけ。高値で売りさばいてやる。税金が心配になるな。税理士も紹介してやろう。なに申告なんて簡単だ。税理士に領収書や伝票を出せば、あとはお任せで書類を作ってくれる。その書類をもって税務署に出しにいくだけだ」

「はい」


 採ったキノコは僕が借りた倉庫に転移させた。

 倉庫にキノコを運び込んだ形跡はないが、倉庫を見張っている暇な人もいないだろう。

 最初の一日の収入が100万円を超えた。


 でもクマ耳スライムが足りない。

 クマ耳スライムは動きが遅い。

 ジャンプして飛び跳ねることはできる。

 でも採取するのにずりずりと移動したり、キノコをもぎ取るのは遅い。

 ジャンプしての移動もそんなに続けてできない。


「坊主、もったいないな。採取する人が足りてない」

「ええ。でもクマ耳スライム増やすのは僕にしか出来ない」

「人を雇うべきだな」

「ダンジョンが秘密にできなくなります」

「ポータルがあっただろう。出入りはあれですれば良いんじゃないか」

「ええと離れた場所にポータル設置ですね」

「おお、そうだ」


「【リフォーム】。駄目だ。ああ、ダンジョン外だからか。ダンジョンの中なら、ええと」


 隣の家を買い取るのも難しいし、それだけ近いと秘密がばれそうだ。

 ダンジョンを伸ばせないかな。


「【リフォーム】。うん、建物なら内部だけでなくて外観もリフォームできるんだな。ダンジョンの入口が変形して伸びた」


 道路とダンジョンを同化させる。

 時間は掛ったが、倉庫までなんとかダンジョンを引っ張れた。

 倉庫内にポータルを設置する。

 これで第1階層と繋がった。

 あとはダンジョン入口の扉を開かずの扉にすればいい。

 お金がもっと入ったら頑丈な扉にしよう。


「坊主、人を俺が管理するのも限界がある。だからダンジョンを切り売りしたらどうだ。区が丸ごと一つ分だろ。1坪ぐらいで、キノコ栽培場を売り出したらどうだ。貸すのでも良いが、売る方が手間が掛からない」

「でも僕だとばれたら」

「農業法人を作れ。心配するな俺が社長をやって厄介事を引き受けてやる。坊主とダンジョンの場所は誰にも明かさない」

「お願いします」


 キノコ家庭菜園を売り出した。

 ダンジョンのキノコ栽培は手間が掛からない。

 湿度とかはダンジョンが管理するからだ。

 収穫だけすれば良い。

 そして、敵スライムだが、鉄網を設置すれば大丈夫だと分かった。

 攻撃が体当たりだけだからね。


 鉄網でセーフゾーンを作っていく。

 当然セーフゾーン内のリスポーン機能はリフォームで殺してある。

 ゴミ収拾機能も金網は無効とするようにリフォームした。

 それどころか鉄網をダンジョンと同化させた。

 リフォームスキルはただの生活スキルじゃない。

 まだレベルは1桁だけど、Sランクに相応しいスキルだ。


 1階層は1千万坪ぐらいある。

 1坪1万で売り出したら、1000億円だ。

 まあそんなには売れないけどね。

 でも、キノコ家庭菜園はそこそこ売れ、農業法人の収入は始めてから10日で1億円を超えた。

 そうそう、レベルアップが10で止まった。


――――――――――――――――――――――――

名前:戸塚とつかつくる

レベル:10/65536

魔力:105/105

スキル:1/1

  リフォーム

――――――――――――――――――――――――


 ステータスはこんな感じ。

 クマ耳スライムを増やすのはやめない。

 1階層をクマ耳スライムの楽園にするんだ。

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