第38話 魔力物質

 今日の視察は魔力スパリゾート。

 普通の温水プールと波の出るのと流れる温水プールが完成した。

 客の入りも上々だ。


戸塚とつか君、チケットありがとう」


 そうなんだ、藤沢ふじさわと来ている。

 藤沢ふじさわに対する俺の感情がよく分からない。

 一緒に遊ぶと楽しいのはあるんだけど。

 それが恋愛感情かと問われれば疑問符だ。


 会いたくてどうしようもなくなったり、声を聞きたくなったりしない。

 なんとなく知り合い以上、恋人未満っていう感じかな。

 友達が一番ぴったりくる。

 でも、よく男女の友情は成立しないとか聞くけど、どうなんだろう。

 高校生ぐらいになると解決するのかな。

 時間が答えを出してくれそうな気もする。


「チケットぐらい良いよ。楽しんで。俺はそろそろ行かないと。仕事なんだ」

「残念だけどキノコ農園の仕事頑張って」

「うん」


 なんとなく罪悪感。

 藤沢ふじさわにダブコーの実質経営者だという秘密は話せない。

 これも高校に入ったら話せるようになるんだろうか。

 隠し事は嫌いだ。

 嘘をついているみたいだから。


 セーフゾーン拡張作業の合間にエリクサー食品の会議だ。


「グリーンエリクサー、アースエリクサーとも売り上げは伸びています。尻手しって健康食品のシェアの8割ほど奪いました」

「そっちは問題ないね。グミも抽出スキルで問題がないんだって?」

「ええ、ただ。魔力物質が草から採れるのでうっすらと緑色になってしまいます。これに色を混ぜると食欲が湧かない感じになるんですが、どうにも困ってます」

「グミの色が汚いのは嫌だな。尻手しって健康食品のはどうなっているの?」

尻手しって健康食品のグミは開き直って緑色しかありません」


 うーん、色を抜いたりするスキルがあれば。

 魔力物質が緑なんだよね。

 緑を抜いたらこれが損なわれるに違いない。


「なぜに緑色が付いているか調べないと」

「現在、分かっておりません」

「そうだよね。分かっていたら、できてるよね」


 試作品のくすんだ赤のグミを手に取った。

 色よ変われと念じてみる。

 魔力って想いに応える物質だろ。


 でも色は変わらない。

 だよね、こんなので上手くいくわけはない。


 ふと、思った。


「【リフォーム】グミの色よ、変われ」


 駄目か。

 イメージができないからね。

 いま魔力で判明しているのは波長があるってことだ。

 魔力物質にも波長があるかも。


「【リフォーム】グミの魔力物質の波長よ、変われ」


 おっ、グミが紫になった。

 緑が、青になったってこと。

 でも俺にしか出来ないんじゃ、大量生産できない。


「魔力波長が問題のようですね。魔力スタンドの応用で魔力波長を変えられたらいいですのに」

「ええと、できるかも。魔力を吸い取って、別の波長の魔力を入れる。これなら」


 試行錯誤して七色の魔力物質ができあがった。


「【マジックビジョン】。素晴らしいですね。色によって効用が違います。青は知性がアップするポーションの魔力と同じです。他の色もそれぞれ別の効果があります」

「ダンジョン内に工場を作らないといけないね」

「ええ、第2階層は駄目ですよ。第1階層にして下さい」

「ここは中間をとって第3階層にしよう」

「仕方ありませんね」


 瞬く間に7色グミの試作品ができ上がった。

 色によって効果が違う。

 もっとも使っている魔力物質が雑草のだから、大した効果はないと思われる。


 モンスターの肉とかから魔力物質を取り出したらいいのかも知れないが、オーク肉は肉として売りたい。

 ゴブリンは小さいからあれ以上削りたくないし、スライムの体液から作ったのを口にいれるのもどうかと思う。

 第6階層のマグロから肉は取れるけど、魚の肉は普通に食べられる。

 肉は肉として食べたいな。

 ゴーレムから作るのはちょっと。


 鉄とか毒性はないんだけど、アイアンゴーレムからいきますか。

 これはレシピを公開できないな。

 アイアンゴーレムの鉄から抽出して使ってますとか言えない。

 毒性はないんだけどね。


 アイアンゴーレムから採った魔力物質は強力だった。

 薄めないと使えないが、返っていいみたい。

 ここに、七色エリクサーグミが完成。


「ミスリルロボットゴーレムはビッグピラニアを噛みつかせてから殺せ」


 現在、第6階層で奮闘中。

 大きな水しぶきが上がり、3メートルの巨体がリフォームで作った陸地に上がってきた。

 サハギンという奴だな。


 大船おおぶねさんが魔槌で殴るとツルっと滑った。

 番田ばんださんのパンチも滑る。

 香川かがわさんの魔弾もツルっと滑った。

 くそっ、ウナギかよ。

 ここの適正レベルはおそらく300。

 俺達の誰も足りてない。


 サハギンが水球を吐いた。

 大船おおぶねさんと番田ばんださんが食らって血を吐いた。

 ミスリルロボットゴーレムの何体かもコアを壊された。


 あの水球には魔力が込められていて、鉄より硬いのだろうな。

 大船おおぶねさんは鉄皮のスキルを使っててあのダメージだからね。


 二人はポーションを呷る。


 強敵だ。

 ここの中ボスに違いない。


 ミスリルロボットゴーレムの拘束は駄目だろうな。

 おそらく滑る。


 大船おおぶねさんと番田ばんださんが攻撃しているが、ダメージになっているようには見えない。


「【カリキュレイト】【バレット】。滑らないように当てたつもりですが、滑りますね」


 香川かがわさんのコンボも駄目か。

 口の中はどうなんだ。

 内側から攻撃すれば。


「ミスリルロボットゴーレム、腕をサハギンの口に突っ込め」


 ゴーレムの腕が口の中に吸い込まれる。


「【リフォーム】ハリセンボン」


 ゴーレムの腕が針の玉になった。

 サハギンの頭が内側から破壊された。


 ふぅ、強敵だった。

 みんなはステータスを確認してる。


「物凄い上がったぜ」

「俺もだ」

「私もです」


 強敵なだけあって、レベルの上りも早いんだな。


――――――――――――――――――――――――

名前:戸塚とつかつくる

レベル:185/65536

魔力:814/1959

スキル:1/1

  リフォーム

――――――――――――――――――――――――


 魔力が2000近い。

 サハギンをリフォームしてマグロ半魚人に変える。

 とりあえずこれで楽になった。

 ミスリルロボットゴーレムとマグロ半魚人は徐々に入れ替えていこう。

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