第9話 温泉
その前に家を一軒建ててみようと思う。
幸い、家を建てる動画なんてのが、ネットには転がっている。
8ヶ月ぐらいを早回しにして家が出来上がるのが1時間ぐらいの動画になっている。
家の建て方のイメージはできた。
建材の山を前にしてリフォームスキル。
一瞬で家が出来上がった。
ちなみに建材は、クマ耳スライムとキャットラビットが運んだ。
意外に力持ちというより、クマ耳スライムの集団活動が凄い。
柱とかを100匹ぐらいで運ぶ。
それが一糸乱れない。
つまずく奴とか出ないのだ。
まあ足はないんだけど。
クマ耳スライムは単純作業に向いているな。
キャットラビットは少し注意散漫な所がある。
「坊主のスキルは実は最強なんじゃないか。土で閉じ込めて圧死する奴から抜け出せるモンスターに心当たりがないんだかな」
「そうかな。最強だったら嬉しい。仲間を助けられるってことだからね。さあ家に入ってよ」
「おう。邪魔するぜ」
扉の建付けも問題ない。
軋みなく扉は開いた。
木の香りがする。
新品の家だ。
各部屋を点検したが不味いところはない。
後は電気水道ガスだ。
電気は簡単だ。
ケーブルを引っ張ってくるだけだから、リフォームスキルを使ってダンジョンと一体化すればなお良い。
ガスはプロパンなら運ぶのがめんどくさいだけだ。
まあ、クマ耳スライム達がいるから別に良い。
ちょっと問題なのは水道だな。
でも水道管はホームセンターに売ってる。
リフォームスキルを使えば簡単だ。
あとで水道電気ガスは業者に頼もう。
法律的にはダンジョン内に適用される建築基準法はないらしい。
そもそも、ダンジョン内に建物とか建てるとダンジョンに吸収されてなくなってしまう。
俺のスキルはダンジョンの構造を変えたりできるから、一体化してダンジョン化できる。
そんな人間が現れるなんて想定外だろう。
もっとも、ダンジョン内に地震はない。
別次元に存在するらしいから。
だよね、こんな規模の地下空間があったら大事だ。
都内は地下に地下鉄網がある。
区の面積の地下空間があったらかち合うこと必死だ。
「坊主、ダンジョンは快適だな。温度が一定だから」
「ただ、一日中明るいのが、問題かな。眠れない人とか出てきそう」
「リフォームで何とかならないのか」
「レベルが上がれば、天井全てを昼夜切り換えするように出来るかもね」
「発電とかに便利だな」
「曇りもないし雨もないから確かに太陽光発電は良いかも」
「だが俺は家庭菜園がいいな。野菜は良いぞ。野菜と語らっていると時間を忘れる」
「基本は家庭菜園の切り売りで、オプションで家とかそういう感じかな」
「かもな。花粉症の人とかがその季節だけ訪れるのはありだな」
「他に利点はない?」
「環境を変えれるのなら、高地トレーニングとか良いかもな。外国に行くのは大変だ。都内でできるのなら、引っ張りだこだよ」
「一部分の環境を変えるのって出来るのかな。後でやってみないと」
「環境を一部変えれるのなら、天然氷製造とか。温泉とか出来ないか」
「温泉は簡単かも。ただ鉱物とか溶けないからなんだったけ」
「単純泉だな。だが、ここには魔力がある。魔力泉になるな。おそらく体に凄く良いぞ」
「作ってみようか。【リフォーム】」
温泉が噴き出した。
湯船も一緒にリフォームで作ってある。
「坊主、交代で入るぞ」
「うんダンジョンで二人とも無防備になるわけにはいかないからね」
毛玉が浮いていると思ったらキャットラビットだった。
クマ耳スライムは温泉は好きではないようだ。
スライムだと体が溶けだしたりするのかな。
俺の所有してる温泉に入りに行かないか。
そんなことを女の子に言えたらなぁ。
たぶん無理だな。
そんなことを面と向かって冗談でなく言えるのは、イケメンの陽キャぐらいだ。
あとで
それにはもう少しセーフゾーンを広げないと。
まだまだ先の話だ。
「ふぅ、良い風呂だったぜ。命の洗濯だな。坊主も入ってこい」
しかし、女の子と温泉の組み合わせはぐっとくるが、男の温泉はぐっとこない。
まあ入るのは好きだけど。
両親が温泉好きだったなぁ。
「はふぅ、生き返る」
確かに普通の温泉にはないヒーリング効果みたいな物を感じる。
魔力がこもっているのだろうね。
おい、キャットラビット。
モンスターの野生はどうした。
腹を上に浮いてて、眠ってるじゃないか。
当分の間、ここの風呂はキャットラビット専用だね。
ダンジョンて水を生み出したりできるんだな。
熱もだ。
考えてみたら1階層も湿気がないとキノコは育たない。
それに気温を維持するには熱を発する機能が必要だ。
何かいいアイデアもそのうち思い浮かぶだろう。
さて、そろそろ上がるか。
両親をここの風呂にいれてあげたかったな。
心がチクリと痛んだ。
今度はシャンプーとボディソープを持ってこよう。
「キャットラビット共、のぼせるぞ。いい加減で上がれ」
「きゅい」
片手を上げて、軽く振っただけ。
仕方ない奴らだな。
まあいいか。
こいつらもストレス溜まっているのかもな。
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