第41話 魔味《まみ》の素

「製パン会社との提携の話が持ち上がってます。魔力物質を混ぜるそうですが、機能パンは一時的に話題にはなるのですがロングヒットとはならないようです」

「そういうパンは大抵あまり美味しくないからね」

「はい、栄養はありますが、味は二の次となっています」


 モンスターの肉が美味しいのは魔力が染み込んでいるからだ。

 となると、第6の味覚、魔力味が成立するのではないかな。

 魔力物質の魔力波長を変えすぎると色がなくなる。

 だけど、効力は色々とあるんじゃないか。


「美味しいと感じる波長の魔力物質もあるはずだ」

「あるでしょうね」

「魔力味の魔法調味料を作れ。それをパンに練り込め」

「では実験ですね」


 結果として、色々できたが、美味くなる魔力物質を突き止めた。


「魔味の素として売り出そう」

「ええ、これは流行りますね」

「ただ、魔力物質の材料が大量生産に向かないな」

「そうですね。水からでも魔力物質は抽出できますが、濃度が高い方が良いのは間違いありません」

「将来的にはもっと下の階層から採取するとして、暫定的に第6階層の水を使いたいな。ええとポンプで汲みだして転移罠で他の階層に送る」

「いいですね。とすると抽出スキルの人員を集めないといけません」

「第6階層にセーフゾーンとポンプ小屋を作らないといけないね。クラーケンの直撃に耐えるのは、ミスリル辺りかな。ミスリルロボットゴーレムは可哀想だけど、小さくなってもらおうか」

「それしかないですね」


 第6階層での工事は割合と簡単に済んだ。

 電撃トラップで電源が確保できるからね。

 ポンプもこの電力で動かしている。


 でき上がった魔味の素を舐めてみた。

 形容し難い味だ。

 美味いが、どういう旨味か説明できない。

 コクがあるという表現しか出て来ない。

 でも、服が破れて、全裸になりそうな味だ。


 パンは色付きの魔力物質も混ぜられて完成した。

 赤は筋力でイチゴ味。

 橙は防御力で蜜柑味。

 黄は魔力回復力でレモン味。

 緑は治癒力でミント味。

 青は思考力でブルーベリー味。

 藍は瞬発力でブルーベリー味。

 紫は魅力でラズベリー味。


 ブルーベリーが被っているが、青い果物がなくて苦労したんだろう。

 黄色は密かにカレー味でも良いと思っている。

 果物で統一したかったんだろう。

 赤はワイン味でも良いかもね。


 きっと、この中の色で紫が爆売れするに違いない。

 チャームパンを朝ごはんにして、魅力ある一日を始めようというキャッチが浮かんだ。

 どのパンも美味しいけどね。


 案の定、紫はどこのスーパーでも品切れになった。

 あとは青。

 学生だけではなくて老人も青を買っている。

 思考力が鈍るのでその防止らしい。

 痴呆を治癒するような効果はないらしいが、物忘れが少なくなったというモニターからの報告があった。

 あと頭がすっきりしたような感じがすると。

 物事のアイデアが出なくてイライラした時とか良いらしい。

 他の色もそれなりに売れた。


 魔味の素を食パンに練り込んだ物もかなり売れた。

 ただ値段が高いので高級品だけど。


 魔味の素の売り上げは凄いとしか言いようがない。

 魔力の旨味はどの味ともほとんど喧嘩しない。

 最初に飛びついたのはインスタントラーメンだ。


 合弁会社を作って、エリクサー健康食品の傘下にした。

 製パンもだ。


 他からも引き合いが来ている。

 コンビニとかからも。

 コンビニの商品の全てに魔味の素を使いたいと言ってきた。


 ちょうど良いので、第2階層にコンビニを作る。

 オーナーは俺だ。

 店長は高給で雇った。


 副店長を何人か雇ったので、ブラックではない。

 儲からなくていい。

 あったら便利だからそれだけ。

 スパリゾートの客がひっきりなしに訪れるので、大黒字だ。

 ただ、スパリゾートの売店の売り上げは下がった。

 香川かがわさんは、ライバルができると違いますね。

 改革案が色々と上がって良いことですと言っていた。


 売店の店長には苦労を掛けるよ。

 でも高給取りだと聞いているので、罪悪感はない。

 コンビニとの魔味の素の提携は追々だ。

 それだけの量を生産できない。

 抽出スキル持ちをもっと雇わないと。


 雇うのにはポータルを設置しないといけない。

 設置すれば県外からも就職にくる。

 まあ、じわじわ行く。


 昼休み藤沢ふじさわのお弁当を見るとサンドイッチだった。


「この食パン、魔味の素が入っているんだって高いのよ。どう食べる」

「じゃあ、せっかくだから頂くよ。うん、うまい」

「でしょ。料理ができる女の子って素敵だと思わない」

「うん、結婚するならいいかもね」

「それ前髪あげて言ってみて。屋上は誰も来ないから」


 前髪を上げて台詞を繰り返す。


「うん、結婚するならいいかもね」

「きゅー」


 藤沢ふじさわが真っ赤になって倒れ込む。

 頭から湯気が出そうな真っ赤度だ。


「ちょっと、しっかり」


 前髪を元に戻したら藤沢ふじさわが復活した。


「はうっ、なんという破壊力。てか、破壊力が前より増したよね」

「レベル上げ頑張っているから」

「そうなの私も頑張らないと」


 第6階層の探索は進んでる。

 進んでいるが陸地を作りながらだから、進みは遅い。


 でも、4分の1ぐらいは来た。

 イカクラーケンに偵察させたから、確かだろう。


 陸地はボス部屋一直線に作っている。

 イカクラーケンも2体になった。


 マグロ半魚人は20体を超えた。

 マグロは数えきれないほどいる。


 明日は藤沢ふじさわにマグロの肉を料理して持っていってあげようかな。

 ちなみにピラニアからマグロにしたので白身だ。

 刺身は美味いけど、形がマグロだと違和感がバリバリだ。


 マグロの形が不味いのか。

 フグにしたらよかったのかな。

 そうだマグロの肉はから揚げにしよう。


 これを、魔味の素の食パンに挟んだらきっと美味しいぞ。


「ごめん、マグロ君、肉を少し貰うね。【リフォーム】」


 探索から帰って、唐揚げを作った。

 うん、元ピラニアのマグロはフグにしよう。

 毒はないけどね。

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