第40話 インフラ整備

 エリクサー化粧品。

 リップクリームができた。

 銀倉庫の中に井戸を作って、ダンジョンの第5階層で水を取って使っている。

 ダンジョンは深くなればなるほど含有する魔力が高い。

 ただの水でもだ。


 魔力物質を練り込んだ口紅も開発された。

 食べるわけではないので、各種効果はない。

 ないけど口紅の発色が良いらしい。

 透き通るような透明感が出るらしい。

 どこかで聞いたキャッチフレーズだな。


 いや僅かに光を発してないかこれ。

 発しているよね。

 放射性物質とかではなくて安全な材料だけど。


 リップクリームは学校に提供された。

 春に近い冬だからね。


「ああ、リップクリーム貰えなかったぁ!」


 教室で女生徒が嘆いている。


「2本取っていった奴を見つけ出して囲むわよ」


 おいおい、虐めはするなよ。

 撲滅にかなり色々と苦労したんだから。


 藤沢の教室に行ってこっそりとリップクリームを渡した。


「ありがと。こんなヤバいブツの取引を見られたらハブられちゃうね」

「口紅もあるんだな」

「きゃー」


 藤沢ふじさわに視線が集中する。


「あれ、あそこにゴキブリが。ああ、画びょうと紙の千切れた端っこか」


 俺はわざとらしく指差した。


「何だ、そんな事かよ」

「芸能人でいるかと思った」

「なんか声がゴキブリのきゃーとは違うような」


 疑っている奴もいるが、騙されてくれたみたいだ。

 分からないように、藤沢ふじさわに口紅を握らす。

 むっ、手を放してくれない。


「手を握っちゃった。初めてだね。ああん、もう少し」


 俺は優しく手を振りほどいた。


「噂が立つとややこしくなるから」

「ごめん、自分勝手だった」

「分かれば良いんだ」


 第6階層から水を取るようになるのも近いかな。

 その第6階層の探索は進んでいると言えば進んでる。

 リフォームで道を作りながらだけど。

 サハギンを5体、マグロ半魚人に変えた。

 もうミスリルロボットゴーレムの護衛は必要ない。


「あれは蛸か」


 見ると、頭だけで10メートルはある蛸がいる。


「うん蛸だね。クラーケンかな。でかいね。こっちが本当の中ボスかな」


 マグロ半魚人とは相性がちょっと悪い。

 水球は大してダメージにならないだろう。

 ミスリルロボットゴーレムを帰して、失敗だったようだ。


「来るぞ」


 番田さんが警告を発する。

 ええと、ここで有効な手は。


「【リフォーム】電撃トラップ」


 クラーケンは電撃で痺れた。


「【カリキュレート】【ブリット】」


 香川かがわさんの魔弾が、クラーケンの眉間に突き刺さる。

 どうやら仕留めたようだ。


「意外に弱かったね」

「止まっていれば外しません」


 クラーケンのリフォームはどうしよう。

 少なくとも敵味方の区別はつくようにしたい。

 烏賊にするか。

 クラーケンは烏賊って小説もあったからな。


 色が蛸だが頭の形が違うので間違えることはない。

 しかし、仕事のネタは役に立つね。

 電気のトラップがあることを知らなければとっさにはできなかった。


 ガストラップの爆発とかもいけるね。

 こちらは近いと味方に被害がでる。

 みんなレベルが高いから巻き込んでも即死はしないと思うけど、試したいとは思わない。

 遠くにいてガス爆発だと使う場面が限られる。

 でも心の片隅には置いておこう。

 もしもの場合とかに玉砕覚悟戦法も良いと思う。


 1時間の探索の時間が終わると、道路での作業だ。

 犬を連れてやってたけど今は車の中でやっている。

 範囲がだいぶ広がったからね。

 道路のダンジョンの一体化は変わったところがないから、目立たない。


 魔力充填スタンドとポータルも室内だから目立たない。

 俺が作っていると知っている人は少ない。

 知っているのは会社の幹部だけだ。

 水道管と電気とガスは少し面倒だ。


 既存の水道管を使うと工事が要る。

 手っ取り早いのは水道メーターがあったところにダンジョンを伸ばす方法だが、こっちも少しの工事は要る。

 なるべく俺の存在を表に出したくない。


 水道管の太い所と繋ぎたいので、香川かがわさんが交渉を頑張っている。

 太いとところにダンジョンを繋げば一か所で済む。

 ただカルキの問題があるんだよな。

 水道管の中は汚いから。

 難しいところだね。


 でもカルキの問題は実は解決してる。

 ダンジョンの機能として吸収もあるけど放出もあるんだ。

 カルキの薬剤を吸収して水と一緒に放出すればいい。

 できるんだけど、濃度調整とかがややこしい。

 俺がしょっちゅう呼び出されたりしなきゃ良いけど。

 やっぱり、各家庭の水道メーターの所までダンジョンを引っ張っていくのがいいかな。


 ガスも太い配管に繋げばいい。

 こっちも交渉待ちだ。

 相手は都市ガスで大手なんだよね。


 コストが減るんだけど、なかなか相手はウンと言わない。

 なのでこちらも家の所でダンジョンと繋ぐようにするのが一番かな。


 電気も同様だ。

 結局、個人個人でダンジョンと繋ぐ形になるのかな。

 仕事が増えるし、仕事の現場は見せたくない。

 うーんどうしよう。

 変装かな。

 身長とかは変えられないけど、全身鎧とかは作れる。

 それを着て仕事は激務になるね。


 服は普通のにして、バイクのヘルメットのスモークシールドにしよう。

 ただ仕事の件数は確実に増える。

 工事は業者がやってくれると思うから意外に楽かな。

 スキルを使うのは一言で済む。

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