43【リリィの夢②】


 ……


 ……ここは、何処だろうか?


 確か僕はリリィを捜して……あ、リリィがいた。

 そう思って近付こうとしたけれど、どうも身体が動いてくれない。

 というか、よく見ると僕の身体……


 透けてますよね?


 え、死んだ?

 リリィに色々吸い尽くされて遂に死んだのか僕は?

 いや、落ち着くんだ。確かリリィは僕に夢を見せると言って……

 あ、リリィが向こうに。


「おーい、リリィ?」


 ……駄目だ。聞こえてないみたいだ。ここはリリィの部屋だろうか。だとすると思ったより女の子らしいな。


 そんな思考を巡らせていると瞬時に場面が変わって、公園の砂場のような場所に移動した。空は薄暗く、変な雲が渦巻いている。それ以外は僕達の世界と大差なさそうだけど。


 相変わらず僕の身体は少し上の方で動かない。監視カメラにでもなった気分だ。


 しかしリリィはやっぱり小さいな。

 ……ん、あれは……ココか。ココも小さいなぁ。いや、違う。 ——違うな。


 確かにリリィもココも小さいけれど、これは小さ過ぎる。それにあの服。あれは幼稚園児がよく着ているスモック的なやつだな。色は紫だけど。


 つまり、これはリリィの過去。リリィは僕に過去を見せているのだろうか?


 あ、二人が喧嘩をはじめたみたいだ。小さい頃からこんな感じだったんだな。

 小さな夢魔達はまだ短い尻尾をこれでもかと伸ばしては砂をかけ合う。


「アンタのせいでおしろがくずれたじゃない!」

『おう、リリィやっちまえ、ヒャッハァー!』


 あ、ゼムロスさんもいた。


「あぶべっ、やったらね〜、ゆるさらいんらからっ!」

『落ち着くにゃ、噛み過ぎにゃ』


 真黒まぐろは昔から苦労してたんだな。ツッコミ方面で。あれ、誰か来たな。

 ……あれは……男の子?


 背中に漆黒の翼を持つ男の子がリリィとココのいる砂場に歩いていく。黒くサラッとしたミディアムヘアに右だけ生えたツノは緩やかに曲線を描く。

 まだあどけないけれど、所謂王子様的イケメン悪魔といったところかな。



「あ、——じゃない。ねぇいっしょにおしろつくらない? いまならわたしのおよめさんにしてあげてもいいわよ?」


 リリィはとてつもなく上から目線でイケメン悪魔に言っては尻尾を左右に振る。あの振り方は完全にデレている時の振りだ。だって、殆ど見た事ないし。


 それよりも……


「あぁ〜! リリィだけズルい! ココもココもらの〜! ココも——のおよめさんになるお〜!」

「だめよ、——はわたしのおよめさんなんだから。ココは、そうね〜メイドとしてつかってあげるわ」

「なによ! リリィのおうちはメイドさんもやとえないおちぶれきぞくのくせに!」

「お、おちぶれとかいうな〜っ!」



 あー、また喧嘩が。

 そう、それより何より、彼の名前の部分だけがノイズで上手く聞き取れない。


 頬っぺをつねり合いながら喧嘩する二人を宥めるように諭す彼。二人はそんなイケメンの笑顔で渋々仲直りした様子だ。

 声は聞こえないけれど、動作と雰囲気で分かる。リリィやココの声は聞こえるのに、彼の声、名前は僕には聞き取れないみたいだ。


 すると、視界が暗転。次の場面に移動した。



 ……ここは、学校みたいだな。

 ゼムロスさんの言ってたサキュバスの通う学校だろうか。少しばかりリリィは成長して、まだ大きい制服で登校中みたいだけれど……制服が既にサキュバス仕様で、これはロリに着せていいのか?


 いったいこの夢に何の意味があるんだろうか。


 リリィは僕に何を伝えようとしてるんだろうか。


 この先を見れば分かるのだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る