54【文化祭当日】


 週末、そう、遂に文化祭当日がやって来た。

 二年A組の出し物は劇。今日は昼から四公演を予定している訳だ。

 流石に緊張してきたな。


 劇の内容はともあれ、何とか形にはなったし、後はなるようになるだろう。

 最後の決闘で二人の闘いに割って入って仲介、仲直りさせてハーレムエンド。何ともマリアらしい脚本だ。でも、劇の中とは言え二人が仲直りする機会になるなら悪くないかも。


 せっかく少しだけど距離が縮まったのだし、この文化祭で本当の和解が出来れば……


「……かんじ?」


 リリィと間宮さんの衣装も、何というか良く出来ている。皆んな気合い入れて頑張ってるんだ。今年は僕も頑張らないとな。


「ちょっとかんじ?」


 午前中は自由時間を貰ったし、田中と太田を誘って一年生の売店でも見に行くかな。


「無視するなぁっ!」


 ————玉砕!!


「ぬぐふぁっ!?」


 どうやらリリィに話しかけられていたみたいだ……久々の玉砕はこたえるな……


「何するんだよリリィ……」

「う、うるさいわね、かんじのくせにっ……アンタがボッチだから、わ、私が一緒に文化祭を回ってあげるって言ってるのよ、バカ!」

「ボッチとか言うな、間違ってないけど。田中と太田を誘うつもりだったんだけど」

「田中は小野さんと、肉の太田は食べ歩きの旅に出たわ。つまり、アンタはボッチよ!」


 この上ないドヤ顔で僕を見ては尻尾をゆっくり左右に振るリリィだけれど、つまりはリリィもボッチという事か。


「なら、一緒に回るか」

「えっ……あ、うん。仕方ないわね?」

「何処から回るかな〜?」


 考えていると、パァッと表情を明るくしたリリィが人差し指をピンと立てる。


「確かB組の出し物にお化け屋敷があるみたいよ?」


 と、何故かドヤ顔。


「お化け屋敷か。んじゃ、行く?」

「ふふふ、悪魔の私にお化け屋敷なんて。逆に全お化けを玉砕してやるんだからね?」

「いや、普通に楽しもうよ」



 こうして僕とリリィは二人で文化祭を見て回る事になった。まずはお化け屋敷に行く事に。

 リリィの機嫌も良さそうだし何よりだな。もしかしたらリリィは向こう側、そう、魔界で出来なかった事をこっち側で楽しんでいるのかも知れない。

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