53【クラス一丸となって】
「あー愛しのおーじ様ー、悪魔の私にはー、高嶺のはなー……むぅ」
うわ〜、めちゃくちゃ棒読みだ〜。
「あら、悪魔じゃない。貴女みたいな下劣な生き物が王子様に近づけるわけないわ!」
間宮さんの天使が全く天使じゃねぇ!?
どちらかと言えば、こっちが悪魔だよ!
と、そこで暁月が手を叩き演技を止める。
「へいへい間宮マングローブさん、もう少し天使らしく出来ないのかね?」
「なんでわたしだけ……リリィの方が酷いじゃない!」
全く、仲の悪いこと。
いったい何が原因なんだ。
「漢路〜、君が原因に決まってんじゃん〜」
「出たなマリア」
「人をGちゃんみたいに言わないでおくれよ。モテモテで何よりじゃないか〜漢路〜?」
「茶化すな変態。それよりマリアは何かやるのか?」
「ボクはチケット配りだね」
普通に裏方かよ!
そして、一週間経過。
日曜日の夜、僕とリリィはいつものルーティーンに励んでいた。海の一件からリリィのサービスは格段に上がっている。
しかし、その事に触れると何故か怒られてしまうから触れないようにしている。
「かんじ、アンタは私のモノよ?」
「どったの突然?」
「……な、何でもないわよ。い、いいからさっさと逝きなさいよ!」
「漢字表記で言うなっての」
そして文化祭三日前、
二人の演技も中々様になっている。衣装もクラスの女子が協力して自作したようだ。今回の出し物、かなり力が入っているな。
けれど、この劇の内容……
人間の王子に悪魔と天使が恋をする。
ある日王子の婚約者の募集が始まる。ん? 募集?
王子の好みの女性は強い女性ときた。
悪魔と天使はチャンスとばかりに王子を狙う人間の
最後に残ったのは言うまでもなく二人の人外女子。
王子の前で最終決戦が繰り広げられて……
……と、まぁカオスな展開だ。
結末は後ほど。
練習を終え、暁月が教室の皆んなに言う。
「何とか形にはなったみたいだね。皆んな協力ありがとね。後は小道具の調整とか宣伝ポスターだけど」
「そ、そ、それなら出来上がったよ!?」
小野礼奈か。そういえば小野と田中、肉の太田がペアで小道具とポスターを担当していたな。
確か太田のやつがポスターを作るとか。
「ぶふぉ、これなんだけど、どうかなぁ?」
太田のポスターのクオリティが死ぬほど高くて思わず吹き出しそうになった僕の隣でリリィが尻尾をピンと立てる。
教室の中がざわつき始め、皆んなが太田のポスターを絶賛した。正直、あの間宮さんの谷間とか……無駄にエロい。大丈夫か?
何はともあれ、準備はほぼ完了か。
後は本番で四公演こなせば解放されるな。
お、チャイムが鳴ったか。今日の練習はお終いだな。皆んなが帰り支度を始めたのを見て、僕はリリィに声をかけようとした。
しかしリリィが教室内に見当たらない。
「あれ……なぁ暁月、リリィは?」
「ん、鈴木ング閣下。いや王子か。リリィならさっき間宮マングローブと出て行ったけれど」
「おう、そうか。ありがとな。えっと……文化祭、頑張ろうな暁月!」
「……えっ、あ、うんっ。勿論だよ!」
僕は廊下に出てリリィのいそうな場所を少し捜す事にした。一階に降り下駄箱の近くまで来た時、呆気なく見つかったのはリリィだ。
「おう、こんな所にいたのか。ほら、カバン持ってきてやったから帰ろう?」
リリィはビクンと身体を震わせると振り返る。そして尻尾をぎこちなく振り、
「ご、ご苦労。さ、グズグズしてないで帰るわよ」
「へいへい」
こうして僕達は帰り道、いつもの駄菓子屋の前を通り過ぎ、帰路についた。
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