38【夏の海の悪魔】



 煌めく水しぶきに濡れた美少女。張りのある肌を弾ませ戯れ合う彼女達を密かに堪能しつつ一頻り遊んだ。

 こんなザ・青春が出来るとは夢にも思ってなかった。心なしか口元が緩んでしまう。


 あ、マリアが間宮さんを連行して沖へ流れてく。


「おーい、あまり無茶するなよ〜?」


 田中の言葉にマリアはグッと指を立てると僕に怪しい笑みを見せる。……何だよ、その顔は。


「ちょ、ちょっとマリア!?」

「いーじゃん、いーじゃん、は、る、か。向こうでイチャコラチュッチュパラダイスしようぜぇ〜?」

「ちょちょ、ちょっと、わたしは漢路君と絡まり合ってハプニングを装って水着の中に手を突っ込むっていう極秘ミッションが、い、いーーやーー!?」


 極秘ミッションって、全部言っちまってますからね!?

 間宮さん、髪切ってコンタクトにしてもネジ外れ過ぎだぜ!?


「ほぅほぅ、これは興味深い」

「う、うわっ……暁月、いきなり背後から近寄るのは勘弁してくれる?」


 暁月は海に到着してからずっと謎の自分世界に入っている。そんな暁月を少し痛い子を見るように見つめていると田中が少しウザいくらいのテンションで絡んできた。


「鈴木と暁月も向こう岸まで泳ごうぜ?」

「いいね〜、秘技クラゲ泳ぎを披露するときが来たみたいだな。あ、でも鈴木ング閣下はお留守番だね〜?」


 そう言って砂浜の方を見る暁月につられ視線を向けると、お尻だけ海水に浸かりながら貝殻なんか見つめちゃう泳げない系悪魔が視認された。


「と、いう訳で親友のリリィの事は閣下に一任するぜ。田中君、太田君と礼奈っち、あとココちゃんで競争だ、負けたらジュースだぜ全員分のね!」

「おっしゃ負けねぇぞ!」


 僕は彼女に「ちょっと待って」と声をかけたのだけど、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた暁月ングは一言だけ残して去ってしまう。


「ダイジョブダイジョブ、グッジョブよ〜」

「な、何だよそれ……」


 全く、暁月海月のペースに合わせているとこちらまでおかしくなりそうだよ。

 それはそうと、


「な、何よ。泳げない落ちぶれ貴族、それも貧乳の私に何か用? サイズはAA、悪かったわね」


 あれー……何かヘコんでるぞ?

 ゼムロスさんは……あ、使い魔の癖に向こうで一緒に遊んでるし。あの人、いやコウモリ……最初はまともだと思ってたけど結構ポンコツだよね。


「……せっかく水着着たんだからさ、もう少し楽しんだらどうだ?」

「ジ、ジロジロ見ないで……海って……ちょっと苦手なのよ」

「泳げないから?」

「それもあるけど……む、何で私がアンタにこんなこと話さないといけないのよ。すずきのくせに調子に乗らないで。……暑い、かき氷を奢りなさいよ」


 何故そうなる?

 リリィは尻尾をフリフリ。ま、機嫌は直ったみたいだし、かき氷でも食べて身体を冷やすか。

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