37【夏だ!海だ!サキュバスだ!】




 普段はあまり乗る事のない電車。その車窓からの眺めに目を丸くしては時折尻尾を反応させるサキュバス、サキュバス、からのサキュバス。


 ピンクブロンドの髪を二つのお団子にした海仕様のリリィはお気に入りの白ワンピ。

 白シャツ短パンのラフなマリア、これはいつもか。

 金髪ツインテールのやけにフリフリした夏には暑そうな服装のココ。


 その時、すれ違いの電車が!


「きゃんっ!?」ピーーーン!

「ふえっ!!!!」ピピーン!

「ぴやぁっ!?」ピピピーン!


 何なんだ、これは……

 それはそうと凄いメンバーだな。

 今回海に行くメンバーは、


 まず僕、そして田中と太田に暁月、小野。眼鏡なしショートの新生間宮さん。

 そしてサキュバスの三人の九人だ。

 これだけ大所帯になるとは。


 クラスの女子と海に行くなんて一年前では考えた事もなかった訳で、僕も胸の高鳴りを抑えられないでいた。


 小学生の遠足みたいにサキュバス達を牽引しながら電車を乗り継ぎ、隣の県までやって来た僕達は揃って声をあげた。


「いやっほー、海だぜほら!」


 田中は太田の腹の肉を摘みながら興奮気味。そんな二人を見てクスクスと笑う小野。

 サキュバス達は尻尾をフリフリ。そんな中、間宮さんが巨大な胸を震わせながら僕の隣へ。


「楽しもうね、漢路君?」

「う、うん。健全にね」

「もう……そんな事言ってたら人気のない場所に連れ込んじゃうから」

「け、健全な男女交友を……」


 そこに暁月が割り込むように入って来た。


「さてさて今回の海イベント……夏の海と言えば青春、そう、恋ですがなっ!!」


 うわ、変なスイッチ入ってるぞ……


「果たして何組のカッポーが成立する事か……その過程で繰り広げられる女の戦いを制する者とは!」


 暁月海月、誠、意味不明な奴よ。



 ……


 何はともあれ無事に海へ到着。

 僕達は敷物と太田が担いできたパラソルを設置した。するとマリアが尻尾を振りまくりながら、


「皆んな、さっそく泳ごうぜい!」と叫び服を脱ぎ捨てた。中に水着を着て来たみたいだな。だから少しばかりモコモコしてたのか。

 その縄デザイン、色々とヤバいよ。


「ココも泳ぐんらからっ!」

『いやだから落ち着けにゃ』


 すると釣られるようにココも黄色い水着姿に。

 何というか、ザ・幼児体型なサキュバスだね。使い魔の真黒まぐろのツッコミも健在。


「ちょ、アンタ達……そんなに急がなくても」


 リリィは水着になるのを少し戸惑っている様子だ。


『おいリリィ、別に胸のサイズなんか気にする事はねぇぜ。見ろ、ココ嬢のあの幼児体型を!』


 ゼムロスさんは激しくパタつく。そしてココとリリィに捕まってフルボッコにされた。


 ……ゼムロスさんが悪い。

 僕は止めないからね。


 で、マリアの使い魔は間宮さんの下から覗きに徹して出てこない、と。


 色物だらけだな。


 暁月、小野、間宮さんもそれぞれ臨戦態勢に。暁月の小柄でありながらそれなりに意外と女性的な身体に小野の引き締まった健康的な肢体。

 あぁ……眼福です。

 それに反則級の爆乳間宮さんも。破壊力は抜群です。おぉ、揺れてる、揺れ……


「……む」

「お、リリィ。やっと脱いだのか……?」

「な、何よ……ジロジロ見ないで」


 リリィは顔を真っ赤にして小さくなる。しかしあの水着が良く似合っている。


「い、いいんじゃねーの?」

「なっ……す、すずきのくせに生意気よ。あ、皆んな先に行っちゃったわよ?」

「僕達も行くか」

「すずき……えっと……」


 リリィは尻尾を萎びかせ気まずそうな表情を浮かべている。トイレか?


「私、お、おお、泳げないんだよね」

「そうなんだ……なら先に言ってくれたら浮輪も持って来たのに」

「だって……」

「なら沖に流されないように砂浜付近でいればいいよ。無理して合わせなくてもいいんだから。水場はこわいから、言ってくれて良かった」

「わ、わかった。も、もし流されたら……た、助けなさいよね?」

「……はいはい」



 僕達は騒ぎはしゃぐ皆んなに合流した。勿論、すぐに海水が浴びせられる訳だ。僕はお返しとばかりに飛び込み反撃。突っ立っているリリィにも海水を浴びせてやる。


「あぶっ……うぇ……す〜ず〜き〜?」


「うわ、リリィちゃんが怒ったぞ!」


 田中が叫ぶ!

 平和だった海は瞬く間に戦場と化すのだった。

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