49【悪魔×浴衣①】



 夏休み、それもやがて終わる。


 僕は高校二年になり遂に、——遂にリア充の仲間入りを果たしたのかも知れない。

 そう、彼女が出来たのだから。


「ほらかんじ、ボケっとしてないで早く行くわよ?」


 まぁ、悪魔なんですけどね。


 今日は夏休み最後のイベント、隣町の尾姐咲町で行われる夏祭りの日だ。

 三日間の開催なのだけど、今日は僕とリリィ二人で行く事になっている。他のメンバーも誘ったものの、用事があるからとスルーされてしまった。


「リリィ、荷物は影に入れておいていい?」

「む、仕方ないわね。特別に私の影に荷物を入れる許可をあげなくもないわ?」


 リリィは少し頬を染めて小さな身体と尻尾をフリフリ。そしてチラリと何度も僕を見る。


「どうしたんだ、リリィ?」

「どうしたんだじゃないわよっ……もう、この格好を見て何とも思わないの?」

「あー、浴衣か。似合ってるじゃないか」

「……それで?」

「えっと、尻尾の所は母さんに加工してもらったみたいだな。うん」


 ————玉砕!


 突然の事で何がなんだか……と、とにかく僕の大事なモノが今しがた、玉砕された。


「かんじの馬鹿……そこは可愛いとか、可愛いとか、可愛いでしょ?」


 リリィは尻尾をピンと立てて頬を膨らませる。


「か、可愛いです……はい……」

「ど、どこが可愛い?」


 え……どこって……


「すらっとしたボディラインが……」

「ぶっ殺すっ!!」





 朝から二度の玉砕を喰らった僕は足を引きずりながら支度をした。

 確かに良く見ると今日のリリィは可愛いな。

 悪魔に浴衣か、外国人が浴衣似合っちゃうような感じで中々様になってるな。

 というか、柄が気になる。

 黒に羽ばたく真紅のコウモリ柄、母さんはどこでこんなの見つけて来たんだよ。言ってしまえばゼムロス柄じゃないか。あ、ゼムロスさんな。


『ひゃっはぁ〜お祭りだぜ、テンション上がるぜーっ!』


 ゼムロスさんも何時もに増して飛び散らかしている。お祭りがそんなに嬉しいのかな?

 すると母さんがひょっこり顔を出し、飛び回るゼムロスさんを鷲掴み言った。


「あら、ゼムロスちゃん、そんな所にいたのね。今日はお母さんと一緒に買い出しに行く約束でしょ。ほら、お父さんは仕事でいないんだし。荷物持ちお願いねんっ!」

『ノー、マダム!?』

「二人共、楽しんで来なさ〜い?」

『オー、マツリーー!?』


 鷲掴まれたまま、ゼムロスさんは連行されてしまった。


「い、行こうかリリィ」

「そ、そうね」


 支度を済ませた僕達は隣町に向けて出発する事に。

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