5【生命力と書いて精○と読むそうです】



 命令をキャンセルした僕は、とりあえず夕飯を食べる為、一階のリビングに向かう訳だけど、リリィが部屋から出ない保証がない。


「リリィ、部屋からは出ないこと」

「ふん、私に命令しないで!」


 リリィは横を向いた。僕はリリィに言っても仕方ないと認識して、使い魔のゼムロスさんに彼女の事をお願いする事にした。


「ゼムロスさん、リリィが部屋から出ないように見張ってもらえませんか?」

『兄ちゃんよ、んなもんオーダーで何とでもなるだろうがよ?』

「あの……気になってたんですけど、何故リリィは僕の命令に抗えないんですか? オーダーとかキャンセルとか、良く分からないんですけど」


 するとリリィが横から割り込む。


「ちょっと、すずき! なんでゼムロスには敬語なのよっ!」

「ゼムロスさんの方が大人だからだ。リリィじゃ話にならないんだよ、ツンツンするから」

「ツンツンとか言わないで! すずきのくせに!」


 二言目には、すずきのくせに、だもんな。僕とリリィの会話に割り込むように、再びゼムロスさんが話しはじめた。


『リリィは兄ちゃん、つまりは鈴木に忠誠を誓った、それは鈴木に絶対服従するのと同義なんだよ。サキュバスってのは基本的に男を取っ替え引っ替えして自由に性行を謳歌する種族だ。

 しかし、そんなサキュバスでもいつかは誰かと結婚する訳だが、その際、他の男に欲情出来ないように、自らに呪いをかけるのさ』


「……呪い?」


『そう、呪いだ。忠誠を誓った者の精気を分けてもらわねぇと、生きていけねぇっていう呪いをな。相手が死ぬ時は、自分も死ぬ。そうする事で相手に永遠を誓うんだぜ?』

「精気を分ける? どういう意味ですか?」

『簡単に言やぁ鈴木の精気、つまりは生命力バイタリティを毎日摂取しねぇと生きていけない訳だぜ』


 リリィは膨れて小さくなった。僕はそんなリリィを横目に、ゼムロスさんに問いかけた。


「生命力って、どうやって?」


『そりゃぁ、一番手っ取り早い手段は性行だな。セッ○スだ。鈴木の精○を直接リリィに注いでやれば最高の濃度で生命力を摂取出来るだろ?

 良かったな、鈴木! これで童貞卒業じゃねぇか! はっはぁ〜!』


 セッ○スだと!? 無理だ! 女性恐怖症の僕がセッ○スなんて出来る訳ないじゃないか! というか、生命力とか格好付けてるけど、結局精○じゃないか!


 ……僕はそっとリリィを見やる。

 リリィは僕を見て顔を赤くしている。


「……べ、別に無理しなくてもいいわよ……私が勝手に抜き取るから」

「ぬ、抜き取る!?」


 それって、魂の間違いじゃぁない?


「そ、そうよっ……セ、セッ○スに拘らなくても……だ、だ、出してくれたら、それでいい……というか……出せ」

『まぁなんだ、つまりは必要なのは鈴木の精○ってこった! リリィはこの通り処女だから、いきなりセッ○スとはいかねぇわな。

 処女のリリィには、これから鈴木と毎晩ステップアップしてもらう。最終目標は言わずもがな、だぜ』


 いや、何が言わずもがな、だよ!


 何だか、大変な事になってしまった。しかし、この話が本当だとしたら……僕が拒めばリリィが死んでしまうって事だよな。


「ゼムロスさん、……もし、僕がそれを拒み、リリィが、その……」

『リリィが死んじまったら、勿論、主人である鈴木、お前もチーン……だぜ! ひゃっはぁ〜!』


「ゼ、ゼムロス?」

『リリィは黙ってやがれぃこんちくしょん!』


 こんちくしょんって……


 それじゃ選択肢は元から一つって事じゃないか。毎日リリィに生命力を提供するか、

 ——死ぬか。

 生き地獄もいいところだ。普通の男子高校生なら跳んで喜ぶシチュエーションかも知れないけれど、僕としては最悪の日々だ。


『鈴木、お前は女が苦手みたいだな? 見りゃ分かるぜ? だが安心しな。サキュバスの魅了にかかっちまえば嫌でもヤリたくなるからよ! 後はリリィが受け入れりゃいいだけだ』

「え、でもリリィは処女なんですよね? 今まではどうやってきたんですか?」

『基本的には精気を吸う必要はねぇからな。勝手に魅了されて襲いかかってくる悪魔はいたが、見事に全員、ソウルイーターの餌になっちまいやがったぜ! あと、トドメの膝、な。玉砕玉砕、

 物騒な女だぜ、全くよ、はっはぁ〜!』


 僕は恐る恐る、リリィを見やる。リリィはジロリと鋭い目で僕を睨み付け口を尖らせる。


「仕方ないでしょ? なら、すずきは私が複数の悪魔に輪姦されてもいいっ言うの?」

「いや、それは良くないと思うけどさ」

「でしょ? ……と、いうわけだから……毎晩一人で自慰して、出たモノだけを私に寄越しなさい? 不承不承ながら、貰ってあげるわ」

「なんで僕が毎晩しないといけないんだよ。僕は週一と決めてるんだ」

「すずきの射○頻度なんて聞いてないわ。

 私は誇り高き貴族だから、すずきごときにお願いはしない! すずきが精○出さないなら、それはそれで仕方のないことよ」

 と、リリィは膨れてそっぽを向く。


「仕方ないって……」

「すずきに精○下さいってお願いするくらいなら、死んだ方がマシってことよ! 精○出さないなら私の前から消えて! ふんだ、どうせ精○の出し方すら知らないんでしょ? 童貞だから精○も出せないのよ、この精○!」


 精○精○うるさいなぁ。僕は精○じゃない!


「わ、わかった……だから精○精○って女の子が連呼するのはやめろ……で、その……せ、精○を出したらどうすればいいの?」


「そ、そそ、そんなことっ、聞かないでよ! この馬鹿! 死になさい!?」


 その瞬間、顔面にリリィの小さな握り拳がめり込む。そして大事な部分には先程と同じ膝小僧がめり込む!

 ——玉砕!

「ぬがぁっ!?」

 僕は思わず蹲り、汚物を見るような目で僕を見下すリリィを見上げる。このアングルだと、リリィのピンクな下着と、そこから伸びる真っ白な太ももが良く見える。


 僕の視線に気付いたリリィは頬を紅潮させ、躊躇なく僕の頭を踏みつけた。

「痛いいたいっ!」

「すずきがパンツ見るからでしょ!」

「み、見てないって誤解だっ! いだっ」

「うるさい! ……じゃぁ何色よ?」


「……濃いめのピンク」


「見てるじゃない! この、このっ!」

「はめられた!?」

「アンタが勝手に自白したんでしょ!」

「また自爆だ! 痛いっ!」



『こりゃ、先が思いやられるぜ』

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