68【気持ちは一つ】



 街を出ると所謂荒野だった。

 まるでゲーム、いや、北○の拳の世界的なイメージだ。街は西洋辺りの外国の街並みを彷彿させる綺麗な街並みだったけれど、外はたちまち異世界。


 そんな異世界をかれこれ三時間は走った。息もあがり限界は近い。しかし休んでいる時間はないんだ。

 ……って、


「おい、皆んな何飛んでんだよ!?」


 僕以外、全員飛んで付いて来ていた。

 念の為、もう一度。

 僕以外、全員が飛んでいる。


「飛ぶとかズルくないか?」

「漢路〜、ボク達悪魔だよ〜?」

「飛ぶくらい、魔界なら当たり前なんらからね?」


 そうなのか?

 人間界にいる時はそんなの見た事ないぞ。いや、待てよ。マリアが初めて学校に来た時、確か窓から飛び込んで来たな……


『兄弟、弱音吐いてんじゃねぇやい!』

『そうだにゃ。男にゃら黙って走れにゃ』

『グエッヘッ!』


 チクショー、なんかムカつくぞ。こうなったら意地でも走り抜けてやるからな!


「ぬおおおおああっ!!!!」


 ……


 ……



 ……しぬ。



 今何時だよ……


『兄弟、よく走り抜けたぜ。だがよ、休んでる暇はねぇぞ?』

『式はもうすぐ始まるにゃ。とっとと立つにゃ人間』

『グエッヘ〜!?』


 マジですか……


 確かに太陽らしきモノも昇り明るくなっている。日付けが変わって朝が来た訳だ。夢中で走ってたから気付かなかった。

 体中が痛い……でも、立たないと。


「……よし。でも、どうやってリリィを助け出すんだ?」


 僕の言葉にマリアが返事を返してきた。


「そんなの、強行突破しかないだろ〜?」


 マリアは尻尾をフリフリ。

 僕はとりあえず笑顔で返事をする。やっぱり強行突破か。覚悟はしていたけれど、いざ悪魔の中に飛び込むとなると怖い気持ちが込み上げてくる。

 またあの時みたいなおっ○い往復ビンタを喰らわないとも限らない……


「作戦ならあるぞ。ボクとココで派手に暴れてくるよ。その混乱に乗じて漢路〜、君がリリィを連れ出すんだよ」

『兄弟、俺様達も援護するぜ。リリィを連れ出したら月哭きの海を目指せ。場所はリリィに聞いたら分かるぜ。俺様が到着次第、向こう側への扉を開けてやる。後は二人で飛び込めば人間界に帰れるぜ』

「でも、そんな事したら皆んなは……」


 皆んなはただじゃ済まないんじゃないか?


「心配いららいよ、漢路はリリィの事だけ守ってればいいんらからね?」

「……そんな事言われてもな……」


 迷う僕に真黒が言葉を投げつける。


『お前は馬鹿かにゃ。今更迷うにゃ、やると決めたらやるにゃよ。こっちは何とでもしてみせるにゃ。リリィを助けたいのはお前だけじゃにゃい、ここに居るみんにゃがリリィを助け出したいにゃ。わかったにゃら腹を括るにゃ。

 ……で、ココは噛み過ぎにゃ。ちょっと落ち着けにゃ、全く』


 そうだ、皆んな気持ちは同じなんだ。だから僕に協力してくれるんだ。

 それなのに迷ってなんかいられないよな。


「わかった。皆んなありがとう……!」


「今度何か奢れよ〜漢路〜?」フリフリ

「そ、そうね。それでいいよ?」フリフリ



 よし、突撃開始だ!

 何が何でもリリィを助け出す。その為に魔界にまで来たんだろ、僕!


 こうして僕達のリリィ奪還作戦が始まった。

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