extra episode2『サキュバスちゃんはクリスマスに夢をみない』②


 ……ここは、どこ?


 真っ暗……かんじ、かんじは何してるのよ……


「かんじ? かんじ〜? もう、何処行っちゃったのよ、あの馬鹿……」


 とにかく、この暗闇から出ないと。

 私は手探りで闇の中を歩いた。次第に視界が晴れてきたんだけど、そこに広がっていたのは、


「うそ……ここって、魔界……!?」


 私の視界を埋め尽くすのは、魔界の街並みだった。

 そんな筈はないわ、私は人間界でかんじと、デ、デートしてたのに。ち、違うわね、あれはかんじの散歩よ。そう、犬の散歩みたいなものよ……


 そんなことより、何で魔界に……?


「リリィ!」

「はっ! かんじ!」


 声のする方へ振り返る。思わず声も大きくなっちゃったじゃない。けれども、振り返った先に居たのは、彼じゃなく、彼だった。


「○○!? うそ、○○なの!?」

「何をそんなに驚いているんだい?」

「良かった! い、生きていたんだ!」

「何言ってるのさ、俺が死ぬ訳ないだろ?」


 ばか……ばかばかばか、ほんっとに、


「バカァッ! し、心配したんだから! 生きてるなら生きてるって、れ、連絡くらい、し、しなさいよね!」


 私の言葉を笑って受け止めてくれる。優しい眼差し。大好きだった、その瞳。

 優しく頭を撫でられた。身体の力が抜ける。頬が紅潮するのがわかるくらいに、熱くなる。

 手を引かれて、抵抗することもなく、私は彼に身を委ねた。あたたかい。


 二人で魔界を歩いた。

 楽しい、愉しい、ずっと想い描いていた、○○とのデート。こんな形で実現するなんて、思ってもいなかったわ。


 いっぱい遊んだ、ご飯も食べた、小さなストラップも買ってもらった。クマデビルのストラップだ。

 私の好きなクマデビルを憶えてくれていたんだね。




 そして夜、

 私達は二人の秘密の場所にいた。

 彼はずっと、私の手を握ったまま。二人で座って海を眺める。またこうして、○○と海を眺めることが出来るなんて、夢にも思わなかったな。


 胸が、高鳴る。どうしよう、途端に緊張してきちゃった。な、何か話さないと……


「えっと、」


「リリィ、……契約、しよう」


「あ……」


 契約……忠誠の、契り……


 ○○はまっすぐ私を見つめている。その目から視線を逸せない。鼓動がはやくなる、心臓の音が聞こえちゃうんじゃないかと、そんな錯覚まで頭を巡る。


「○○……好き、————」





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