29【ココと猫】※
「シャーッ!」
『にゃんだ、文句あるかにゃ?』
「シャラッ!」(ここは俺の町だぜ!)
『んにゃ事どうでもいいにゃよ』
「シャラップ!」(いいや、そうはいかねー!)
『お前、うざいにゃ〜、しっしっ』
朝の商店街、夢咲町を縄張りとする茶トラ猫と、影のような黒猫が対峙していた。
「
今、一瞬語尾を噛んだ少女は極めて際どい服装で場違いな商店街を練り歩いていた。
茶トラ猫と戯れる相棒の影猫、
『今、噛んだにゃ。ココは舌ったらずだにゃ』
「う、うるら……あ、うるさいっ!」
『にゃはん?』
「もーっ、使い魔のくしぇに……!」
少女はおしりから生えた真っ黒な尻尾をピンと立て、輝くような金色の髪をピョンと弾ませた。
金色の長い髪を二つ括りにした所謂ツインテール少女は黒いホットパンツと黒いスポーツブラみたいな服装で辺りを見渡して、小さくため息をついた。
極めて小さな胸はピンと張ったところで微塵も揺れないが、彼女はそんな事は御構いなし。
「ほんとにリリィがこの町にいるの?」
『間違いにゃいにゃよ。昨日、ご主人に甘えてたにゃ』
「え? ご主人って真黒、貴女は何を言ってるにょ!? あ、言ってるお?」
『落ち着けにゃ、まったくココは寝てばかりだから何も把握してにゃいんだから。リリィ嬢は人間の男に忠誠を誓って、毎日精○をいただいてるみたいだにゃ? ま、不本意にゃ感じも見受けられたがにゃ』
「不本意って……まさか無理矢理? あの処女で劣等生のリリィがそんな事出来るのかしら?
何よりあの玉砕のリリィを無理矢理従者にしたてあげるなんて出来らい、あ、出来ないわ!」
真黒はピョンと跳ねると、道端のゴミ箱の上に着地した。そして後ろ足で首元を掻き終えると口を開く。
『ココも処女だろにゃ。それにこの情報は確かにゃよ。因みにマリア嬢もこの町で遊んでいるようだにゃ。あのエロガラスを見かけたから、ちょっくら拷問にかけてやったらハァハァ言いにゃがら吐いたにゃ。キモいったらありゃしにゃい』
「処女の事は禁句よ! でも、ココは従者を作ることが出来たんらもん……! それにマリアみたいな変態には興味ないお!」
『また噛んだにゃ。落ち着けにゃ。わざわざ従者を作った事を自慢する為に人間界に降りてくるにゃんて、正直馬鹿にゃ?』
「うるさいらぁ! う、もううるさいの! ライバルなんだから当たり前でしょ?
でも、もはやリリィはココの足元にも及ばない存在に成り下がったようね。そぇじゃ、その醜態を拝みに行こうかしら?」
『もはやツッコミを入れるのも面倒だにゃ。リリィは学校に行ったにゃ。ココ、まずは服を用意した方がいいにゃ。その格好は目立つにゃ』
とにかく良く舌を噛むココは自らの服装をショーウィンドウに移して確認する。
そして首を傾げてしまった。
「何かおかしいの? この格好」
『人間達はもう少し肌の露出を抑えた服装をするものにゃ。にゃんでもいいから、その辺で調達するにゃよ』
「ふん、ココの美しい身体を人間なんかに晒すのは不本意らから、仕方なく着替えてあげるだけなんらからね? ふふん、どんな服にしおっかなぁ!」
『仕方にゃくとか言って、楽しそうにしてるにゃ。困ったご主人にゃね。それに、そんなツルペタ誰も見にゃいから、にゃはは』
——
その頃、夢咲高等学園グラウンドでは、体育祭の開会式が始まろうとしていた。
入場した体操服姿の生徒達は綺麗に整列した。
校長の長い挨拶も終わり、遂に戦いの火蓋が切って落とされたのだ。
二年生のクラスは四クラス、A組、B組、C組、D組が、それぞれ特典を争う事になる。
A組のリーダー、田中強彦が気合いを入れる。ロン毛を風になびかせ、
「よっしゃぁ! 気合い入れて行くぜ!」
「「「おおぉー!」」」
とりあえず、気合いだけは充分なようだ。
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