第二十五話 接触の理由は?
「志村正?」
「あぁ、
「第一管理長?」
「分かりやすく言うと、ナンバー3とも言える役職でな。役職に就いてるのは、俺を含めて六人だ」
「六人か……でも、役職もあって忙しいだろう?」
「まぁな、今日がお前らと話せる都合が良くてな、とりあえず、座ってくれ」
四人は、志村の指示に従いカウンターテーブルの席に座る。シュテルは、最初に接触した理由を尋ねる。
「まず、最初に聞くが何故僕らに接触してきた?」
「あんたらの専属執事たちからの依頼だ」
「依頼?」
「あぁ、シュテル。あんたの執事と俺は知り合いでね、数々の犯罪組織を調べたりして、情報を送ってくれてな。そのお陰で多くのボスを逮捕し、組織を壊滅できたのさ」
「でも、どうやって貴方は僕の執事と知り合ったのだ? そもそも、
「それは、奴が俺達の組織の一員だからさ」
「あんたの組織に所属していたの?」
カリーヌの問いに、志村はコーヒーを一口飲んでから答える。
「そうだ。あんたらの家系が裏の世界にしか潜伏出来なかった頃、シュテルの執事が組織のメンバーとして編入してきてね。当時は俺を含め誰も知らなかったが、後で「奴らに近づきたいから入った」と言ってたよ」
「……その奴らって?」
「『聖女の騎士団』さ」
「……」
「彼は、様々な任務を通して奴らの壊滅を目指そうとしていた。だが、なかなか心臓を掴めそうな情報が無く、結局無駄な時間を過ごす羽目になり。これ以上やったら仲間の身に危険が及ぶと判断して退職したよ」
シュテルは、自分の執事がどれほど奴らを倒すために、CSMOに入り、命を懸けて任務をしていたのがよく分かった。
「オマケに、斉藤が奴らの罠によって命を奪われた。事故が起きた後、処理をしようと思ったが、組織の一員である我々が介入すれば、表向きにさらす羽目になる。俺たちは表には出てはいけない存在。だから、落ち着いてから後処理したんだ。あいつは、良い奴なのに」
「斉藤? もしかして、
「勘の良いお嬢さんだな、エリー。そうだ、彼も我々の組織の一員だ。奴らの下請けとして潜入していた」
「下請け?」
「詳しく言うと、シノギ要員若しくはスパイ要員だよ。奴らは、いくつかの企業を傘下にして、社長らがその全体の半分の収益を納めている。これをシノギ要員と言い、スパイ要員とは、敵の組織の情報を渡す人たちだ」
「となると、谷村が言ってた『騎士庁との捜査で毎回シノギを摘発するときのを失敗する』。執拗に尋ねた騎士庁の人がスパイ要員である可能性が高いということでしょうか?」
「俺もそう思っていたマイケル。毎回参加しているのだが、必ず執拗に尋ねてくるのだ。スパイ要員である可能性があると踏んでいた」
「そりゃ、失敗するのも無理は無いわね」
「もしかして、騎士庁全員がスパイ要員じゃないよな?」
「俺もそう考えた。だが仮にそうだと、動きが大きすぎる。でも、スパイ要員がいるのは確かだ」
シュテルは、騎士庁は信頼できる組織ではないと考えた。
「話を戻すけど、斉藤は幹部全員には会えなかったの?」
「いや、会えたさ。話せる機会ができたらしく、これで一気に手が届くと思っていたらしい。奴らは、ある場所を指定してきた。バー『マルクス』さ」
「どこよ? そこ?」
「共通エリアの東側のヨーロッパ街にある、三日月の絵が描かれた看板があるところだよ」
志村は、ポケットから内装の写真を取り出し、シュテルたちに見せる。
「うわー! 綺麗な店!」
「五十年の長い歴史を持つ店さ。どうやら奴らは、ここで不定期に会合するらしい」
「不定期か……」
「そういった連中がアーサーに入っているなんて、セキリュティは、どうなっているんだ」
「おそらく、身分証明書を偽造したんじゃない?」
「話を戻すぞ。実は酒場に彼女たち以外にもう一人いたのさ」
〈これから食事に行こうと思いまして〉
それを聞いたシュテルは、カリーヌとのデートで出会った人物を思い出す。
「森本太郎かい?」
志村の口角が上がっているのを見て、正解だと確信した。
「よく分かったな! まぁ、正確には、その森本家とは五十年間の付き合いだけどな。相当親しくしていたそうだ」
「そんなに古くからとは」
「ねぇ? 志村。その幹部らの資料は無いの?」
「ちょっと待ってろ」
志村が自分のカバンから資料を取り出している間に、マイケルとエリーに森本について尋ねられる。
「シュテルさん。森本とはどういう人なんです?」
「見た表情だと、しかめっ面気味だったけど?」
「あぁ。森本は、僕の家業である銀行とカリーヌの家業であるファッション事業の下請けをやっている
「そういえば、そんな話あったわね」
「待たせたな。これが奴らに関する資料だ」
志村は幹部たちの資料を四人の前に並べた。
「こんな美女揃いなのね」
「あぁ、六枚の写真は尾行する際に隠し撮りしたものだ。彼女らの本名は、未だに分からないが、宝石にちなんだコードネームになっている。言わなくても、髪の色さえ見れば分かるだろ?」
「えぇ」
「お前とマイケルが返り討ちにしたこの女がアメジスト。狂気に満ちた性格で知られている。拉致した人間に言葉では言い表せないほどの危害を加えることがある。全治したら、真っ先に殺しに来るだろうな」
「だろうね」
エリーが、サファイアとルビーの写真に指を指す。
「で? 赤い女と青の女がそれぞれ、ルビーとサファイアでしょ?」
「サファイアはリーダーで、ルビーはサブリーダーを務めていてな。仲は悪いが、任務を完全に遂行する」
「仲は悪い? 何で?」
「そりゃ、任務のやり方での口論だろう? 単純に考えば」
「そうだけど、違うような気がする」
「違うとするなら何だい? エリー」
「例えば、サファイアが他の皆に何か言えない情報を持っていて、それをルビーが察知して疑っている。それで仲が悪いとか?」
エリーの考えに志村はあごを左手の上に置いた。
「言えない情報か……部下にサファイアを重点的に調べさせるか」
(何か言えない情報。だとしたら……駄目だ。思いつかないな)
「とにかく、こいつらの目的は、シュテルの執事から聞かされたことだ。今後とも学園生活を送りながら、奴の調査と壊滅に協力して欲しい。大丈夫だよな?」
「あぁ、もちろんさ」
シュテルと志村は立ち上がり握手する。
「せっかくここに来たんだ。気晴らしにカジノゲームをしたらどうだ? 合宿の訓練ばかりじゃつまんないだろ? 」
「そうね、せっかく何だから遊んでいきましょう。シュテル」
「そうだな、カリーヌ」
「よーし、思いっきりに遊ぶよ!」
「でも負けたら、親から貰った所持金がゼロになりますよ」
「負けた分は直接にあんたらの部屋に送り込む。それを受け取ればいい」
「大丈夫なの? ホテルマンにバレない? 」
「バレないさ。違法賭博がバレることは無い。安心しろ」
四人は、負けた分の支払いについて聞いて納得すると、カジノゲームを楽しむ。
シュテルは、ポーカー。カリーヌは、ブラックジャック。マイケルは、ルーレット。エリーは、ダイスゲームで金を倍以上に増やすべき遊ぶ。
それぞれの所持金三百万円が、どうなるか楽しみだ。
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