第六十二話 同盟

「何ですか? 柴﨑。貴方達は、見回りするように指示したはずですが?」

「あんたが、別仕事で東北地方に行くはずのシトリンと一緒にこの建物に入るのを目撃したからな何やら怪しい予感がして入ってみたら予感が的中したわけや」

 

 サファイアは柴﨑を睨んだ。


「それに、まさかと思いますけどそのガキを逃がすわけではないやろうな?」

「お言葉ですけど、お前こそ余計な企みをしているわけでは無いだろうな?」

「何言うてるんや。そんな訳無いやろうが、それになんでそこのシュテルとマイケルを始末しないんだ?」

「裏切りの交渉しているのです。こちらに入ってくれないかと」


 柴﨑は舌打ちをしてこう言った。

 

「サファイアはん。あんたのボスから命令が来てましてね。と言っても、そこの二人は、自分の担任だと分かっているけども、「裏切者であるサファイア達を始末しろ」とな」

「なんだと、柴﨑! お前は、まだ確定した情報じゃないだろう!」

「シュテル。実はな、監視カメラや盗聴器着けさせてもらったんや。こいつらのスーツに」


 サファイアとシトリンは、さっそくスーツを触ってみると、胸元のポケットに盗聴器が着けられていた。


「あほやな。お前ら二人は、特にサファイアは。あんた程の頭の切れる女がこんな小さな事に気づけないのは恥ずかしいのぉ」

 

 サファイアは、笑う柴﨑を睨んだ。


「それで? 僕達も含めて始末するのかい?」

「当たり前やろ! 中山君」

「! 知ってるのか?」

「知ってるでぇ? 鹿が間違えて色気ムンムンの色男に変身させて、良い思いをしたことな。もちろん、そこのマイケルも、あんたの恋人のカリーヌとエリーもな! あと、妹さんと兄さんもか」

「だから、何だ? 僕達は良い思いしたばかりじゃない。人を見た眼で差別したりする悲しい現実も見て来た!」

「そうです。人は見た目で判断したりしません」

「ホンマにそうか?」


  柴﨑は、嘲笑うかのように話した。


「確かに、あんたの言う通りかもしれへん。けどなぁ? 世の中の人間どもは、そうなるように生きて来たんや。ホームレスや平社員のような価値の無い人間は、ゴミみたいに扱われ、正反対のものは逆に神様のように扱うんや。学歴や実力や血筋もそうや。所詮、そういう生き物や」

「……だとしても、僕達は、平等な扱いをする人間だと信じる」

「柴﨑さん」


 シュテルとマイケルがそう言うと、柴﨑は鼻で笑った。


「そうか。でも、俺はそうじゃないと思うけどなぁ?」

「「……」」

「そうや! シュテルとマイケル。勝負しようや」

「勝負だと? つまり、戦闘かい?」

「当たり前やがな! それ以外に何がありますの? ルールは、こうや。俺と若頭対シュテルとマイケルの勝負。お前らが負ければ、お前らの仲間とサファイアの仲間全員処刑。勝てば、いい情報をくれてやる。どうだ?」

「……シュテルさん」

「やるしかないだろう。いいよ。受けて立つ!」


 柴﨑はシュテルの承諾に喜んだ。


「それは助かるわ。では、お前ら。すまんが、事務所に戻ってくれへんか? 戦闘に集中したんや。大丈夫や。こいつらは卑怯な真似はせえへん」

「分かりました」


 柴﨑組組員達は潔く事務所へと戻った。


「さて、では始める前にハンデをくれや」

「ハンデだと!? どういう事だ?」

「俺ら二人は見ての通り、こんな太った醜い体した男や。ここで薬を使わせてもらう」

「例の薬ですか?」

「違うわ。俺らの薬はな」


 柴﨑は、そう言うと若頭と一緒に白い液体を飲み干した。


「すげぇ! 力が湧いてくるぜぇ!」


 二人が気持ちよさそうに体が変化していく。脂肪が減っていきシュテルとマイケルと同じ体型になり、顔つきを若くてイケメンになっていく。

 そして、その変化した後の姿を見て、シュテル達は驚いた。


「嘘!?」

「僕とシュテルさんに!」

「なっただと!?」


 二人の姿は、シュテルとマイケルと同じ姿だ!二人は上半身裸になり、特に腹筋と胸筋を触りながら興奮していた。


「すごいイケメンになったね。

「そうですね。

「これで、何人ぐらい女を抱ける?」

「無限じゃないですか?」

「無限か」


 二人は気味の悪い笑いをした。


「シュテルさん!」

「やるしか無いようだな」


 シュテルとマイケルは、上半身裸になって戦闘態勢になった。


「シュテル」

「シトリン、安心しろ。必ず、勝つ! コピーした奴らに負けないから!」

「……頑張ってね!」

「マイケル。失敗は許しませんよ」

「はい。サファイアさん!」


 戦闘態勢になったシュテルとマイケルは、二人に変身した気味の悪い笑みを浮かべる柴﨑と若頭を睨む!


「来い! 柴﨑!」



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