第十二話 引っ越しの挨拶と食事

「九十九……百! よし、これぐらいにするか」

 上半身裸での筋トレが終わり、夕食の準備をするとドアからインターホンが鳴る。

(ん? 誰だ?)

シュテルは、シャツを着てモニターを起動して見てみると…

「シュテルさん!」

「マイケルさん!?」


 なんと、共通エリアで絡まれたのを救ってくれた財閥ルイン家の御曹司マイケル・ルインだ。

 シュテルは、ドアを開けてマイケルを中に入れた。

「マイケルさん、どうしてここに?」

「実は、両隣の部屋の住人がほぼ毎日喧嘩していましてね。うるさいので、貴方のお父さんに引っ越しの許可をお願いしたのです。そしたら、ちょうど三〇〇三号室が空部屋になったのでそこに引っ越してきたのです」

「あー! 確か、隣の住んでいた生徒がとある事情でイギリスのロンドン校へ転出するって言っていたな」

「良かったら、夕食どうですか? 僕と貴方は同級生ですから、この機会に関係を深めるきっかけとして」

「そうなのか!? それは驚いた! でも、遠慮しておくよ。中流階級シルバーランク以下の生徒たちに目をつけられているかもしれない」

「そうですね。また、日を改めたほうが良さそうですし」

「すまないね。……はぁー」

 すると、シュテルは頭を抱えた。

「シュテルさん? どうかしたのですか?」

「実は、先生たちが授業をする前に体育館を使っていた平民階級ペーパーランクの生徒たちがばい菌をまき散らしたという理由で、していたんです」

「そんなことがあったのですか? それは、許せないですね」

 たかが利用したぐらいで、そんな扱いをされるというのをされた方はどんな気持ちになるのか? それは、誰だって悲しむだろう。

 シュテルは、マイケルに他のことを話した。食堂での食事の質が違う、売店で豊か者には安く、貧しき者には高く売るなど、差別の光景に腹を立てた。

「マイケルさん」

「はい?」

「どうして、僕の曾祖父は、こんな差別的なシステムを作ったのだろうか? こんなのはアルフォード家の恥」

「……」

 悲しい表情をしているシュテルは、続けて話をする。

「これが社会の仕組みなのか? これがあるべきの姿なのか? 世界中には、こうして楽しそうに、食事したり、遊んだり、学校に行ったり、そんな事が出来ない人達がいるのに僕達は、呑気に過ごしている」

「呑気に……過ごしているですか」

「それに、それをどうでも良いと思っている金持ちがたくさんいる。何でこういう不平等なものが存在するのだろう?」

 シュテルは疑問を投げかけるとマイケルが答える。

「シュテルさん、肯定するつもりはありませんが、社会ていうのは、貧しい者がいれば豊かな者がいる。そういったもので社会が成り立っているのです」

「……」

「しかし、「仕方ない」と思い込むのは、駄目です。大切なのは、出来るだけ良い社会を作り上げること、そうすれば、明るい社会が待っています。そして、それをやるのが我々、若い世代の人ではありませんか?」

「マイケルさん!」

 貧富の差を減らすには、我々若い世代が頑張って作り上げていく。

 今は、出来なくても経験を積んで取り組めば、より明るい未来が待っているはず。

「それじゃ、食事は日を改めてからお願いします」

「はい。それでは、失礼します」

 シュテルが挨拶すると、マイケルは部屋から出ていった。



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