第十三話 密会
その頃、
「森本、今回は楽しかったぜ」
「だけど、私たちのデザートの好みがわかっていたら、完璧だったけど」
「申し訳ありません。お二人は、レアチーズケーキがお好きだけど聞いていたのですが、まさか誤りでしたとは、不快にさせて申し訳ありません」
森本は、頭を下げて謝罪した。
すると、男は彼の髪を掴む。
「あのさ? いい加減、接待上手くやって行かないと、ますます収入源が無くなるよ? あんたらみたいな連中が不自由なく学園生活を続けるには、接待とギャンブルと奉仕活動とバイトするしかないだよ? 分かる?」
「もちろんです」
一ヶ月で乗り切るどうかの金額のため、彼らは遊ぶ金のため、生活の余裕を作るために
彼の髪を離すと、アーサーを渡した。
「じゃ、森本! お疲れ! これ、約束の三万アーサーな」
「ありがとうございます」
「じゃ、森本。次回もよろしくお願いするわね!」
「じゃ、おやすみ!」
「おやすみなさいませ! お二方」
二人は、自分たちが住んでいる生活地域へ向かった。
見えなくなったのを確認して舌打ちした。
「わがままの赤ちゃん野郎が! せっかく、あんたらの為にチーズケーキを用意してやったのに、それが用意してやった者に対する態度か!?」
愚痴をこぼしていると、スマホに着信音が鳴る。
「お? ルビーか?」
森本は、電話に出た。
「もしもし?」
「ちょっと! まだなの? 会議部屋での開始時間まであと二十分よ!」
「悪いな!
「そう、分かったわ。早く来なさいよ」
通話が切ると、すぐさま『会議部屋』へ向かう。
近くにある、トラックが荷物を積むためのコンテナ置き場の中で、とあるコードナンバーが書かれたコンテナが『会議部屋』だった。
森本は、右の扉の端に窪んでいる部分を押した。すると、カードリーダーが現れ上部分で赤いランプが点滅する。
ポケットから三日月の上に聖女マリアの絵が描かれたカードキーを取り出し、スキャンするとランプが緑に変わって扉が開いた。そのままコンテナの中に入り、奥にあるダミーの壁を下から開け『会議部屋』に着いた。
「遅いわよ、森本!」
「すまない」
既に円形で囲んで座布団に座っている九人の代表者とルビーがいた。
森本は、ルビーの左側に座る。
「おい、入口の右側のガスランプ、もっと明るく出来ないのか?」
「すまんな、森本! 今すぐに」
「もう良い! あたしがやる」
「ルビー様、ありがとうございます」
そのガスランプに手をかざし、赤い瞳を光らせて念じ明るくした。
「さて、会議を始めるわよ」
「では、例の薬の試験データについて報告を聞こうか? 倉本」
「はい!」
倉本と呼ばれた男は、
「これが、調査結果です」
倉本は、試験データが書かれた紙を配った。そこには、被験者に投与した結果が書かれていた。
「へぇー」
「三十人に投与した結果、そのうちの二十五人が死亡しました。効果はまだ完璧な状態とはいえません」
「確かに、これじゃ改善点が多そうだな」
「そうね、でも失敗は成功の元だからそれを機にもっと上手くやれるわね」
「けど、残り五人の投与結果がルビーさんの所属しているこのマークがあるということは」
「はい、その通りの結果が来たということでございます」
「森本、とにかく革命を起こす火種になりそうね」
「あぁ、とりあえずな……しかし、これを使うには、まだ準備がいる」
「そうだな。まずこの島のバランスを不安定にする手段が必要だな……ルビー様、
男がそう尋ねると、ルビーは言った。
「『何か、事件……若しくは不信感を募らせることを起こさなければ進まない』とおっしゃっていたわ」
女子生徒がひらめく。
「これなら、どうですか?
「それはいいわね! もし、これが新聞に載って犯人がそのどちらかであったら、世間から悪印象を与えることが出来る!」
「そうなったら、影響力が落ちる引き金になるはずよ!」
「でも、どうするんだ?」
「どうするって? 森本?」
「動機だよ。何か殺意を抱くようなことを起こさないと、話にならん」
「それに、カメラなどがあるわよ。それを上手くごまかす必要があるしね」
すると、森本は立ち上がって言った。
「まぁ、とにかく結論から言って、不信感を募らせる事件を起こしてバランスを悪くし、例の薬を使って革命を引き起こすことだ。そうすれば、あの泉のありかが分かるはずだ」
「泉ですか……そうですね! それを上手く使えば楽園が待ってますからね!」
「でも、あたしらの部下である事は忘れないでね?」
「も、もちろんです!」
倉本は、ルビーの睨みにびびる。
「では! これにて会議を終了する! 皆、お疲れさまだ!」
「あー! 眠い! 明日、しょぼい拳銃の授業があるからな、だるい!」
「私だって、
「明日も、終わったら速攻寝よ!」
森本とルビー以外の代表者九人は、ブツブツ言いながら帰っていった。
気になったことをルビーに聞いてみた。
「そういや、他の連中は?」
「アメジストとシトリン以外は、この島出て任務をしているわ」
「ふーん」
興味なさそうに、両手を頭の後ろに回す。
「ところであんたは、サファイアと姉妹なの?」
ルビーの質問に鼻で笑った。
「はぁ? 何を言ってるの? 俺は、男だし」
「でも、それは仮の姿でしょ?」
「ルビー、バーで見ただろう? サファイアの俺に対する目つきを」
しらを切ると、ルビーは強く睨む。
「そう? でも、構成員の何人かは仲良くしていたり、サファイアがあんたに『いい妹を持ったわ』と発言する姿が目撃されているけど?」
「サファイアがそんなに嫌いなわけ? どんだけ疑り深いんだよ」
「あんたぁぁ! 馬鹿にしてるのかぁあぁ!?」
「そんなに、怒鳴るなよ。別に馬鹿にしてないよ。とにかく、今やるべきことは、さっき俺が言ったことだ。俺はな、あんたらを崇拝しているんだぜ?」
うなり声を上げ睨み続ける彼女を宥める。
「じゃ、俺は帰るぜ? そんな顔をしたら美人が台無しだぜ?」
森本は、別れを告げて出ていく。
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