第十一話 カリーヌと謎のオカマ
「さて、帰って筋トレするか」
自宅に向けて歩いていると、
「なぁ、先月の男の焼死体の件どうなっただろうな?」
「確か、倉庫に車で衝突して炎上したそうだな」
「そうだな、とんだ事故だったな」
「どうしたんだい? こそこそ話しているけど?」
「シュテル様!? いや、先月
真ん中の生徒は、突然現れたシュテルに驚きつつ、落ち着きながら話した。
「事故?」
「覚えてないですか? 先月、男が乗った車が倉庫に衝突して炎上した件ですよ」
「あー! 確かそんな事があったな!」
シュテルは、新聞に載っていた事故の記事を思い出した。
「で? どうしてその事故の件について君たちは話していたのだ?」
「原因が分からないから、なんか気になって話していたのですよ」
「確か、その前の日って雨が降っていたよな?」
「そうだな、警察は最初スリップによる事故だと仮定して捜査したけど猛スピードで走った痕跡がなかっただっけ?」
「そうそう! 結局分からずじまいだな」
「分からずじまいか。ごめんね、話しかけて」
「いえいえ! 学園長の息子であるあなた様に話しかけられて光栄です!」
「それじゃ!」
「「「はい! お気をつけて!」」」
シュテルは、会話を終えた後自宅へ向かった。
シュテルは、自分が住んでいる生活地域にたどり着き、今日も
(さーて、お風呂に入って僕のこの美しい体を撫でながら楽しんで行きますか! ウフフ!)
ナルシスト感満々の考えをしながら自分の部屋があるマンションへ向かうと……
「良いかしら? 彼にチクってもいいのよ?」
「やめて! お願いだがら、彼にチクらないで!」
曲がり角の先からオカマのような声とカリーヌの弱々しい声が聞こえてきた。
(ん? カリーヌか!?)
カリーヌがいじめられている! そう思って走って行こうと思ったが、念のため慎重に忍び足で近づいて隠れるように角から見る。そこには、紫色のジャージを着た典型的なオカマと頭を下げているカリーヌの姿があった。
「それだったら、口止め料として五億払いなさいよ」
「ちょっと、待って! 今は、学校の件で忙しいから無理だよ!」
「『無理』って、アハハ! こんなの容易い金でしょう! そもそも、あたしからの誓いを守っていればこんなことにならないの!」
「は、はい……ごめんなさい」
カリーヌは、さらに涙ぐんだ声で謝罪した。
「まぁ、良いわ! あんたの謝罪に免じて許してやるわ…口止め料は、取り消してやるから感謝しなさい。しかし、次やったら……終わりと思えよ?」
オカマは、ドスのきいた声で言った。
「はぁ……ありがとうございます! ありがとうございます!」
カリーヌは、土下座をした。
「もう二度、恩を仇で返さないでね?」
オカマは、さらに彼女しか聞こえない声で囁く。それを聞いたカリーヌは一時顔がこわばり、泣き始めた。
オカマが立ち去ったのを確認すると、彼女の元へ向かった。
「どうしたんだい? カリーヌ?」
シュテルが分からない演技をして尋ねると、カリーヌは、涙を手で拭いて立ち上がった。
「ちょっとね! 演劇の練習してたの!」
「演劇? あー! そうか! だから、泣く演技の練習したのか! なるほど、安心したよ! でも、やるなら中でやったほうが良いよ? 警備員に勘違いされるから」
「うん! ごめんね! 心配かけて!」
「大丈夫だよ。明日、また会おうね」
「うん! それじゃバイバイ!」
笑顔を見せたカリーヌは、足早に自宅へと帰った。
「あのオカマ、口止めと彼と言ったが……何のことだ? おっと! いけない! いけない! 明日も早いから自宅に戻らないと!」
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